第8章

 神谷陽輝は信号を無視し続け、別荘へと戻った。

 ドアを開けると、室内は恐ろしいほど静まり返っていた。

 料理の匂いもしなければ、いつも玄関で待っていたあの姿もない。

「雪奈!」

 彼は二階へ駆け上がり、寝室のドアを押し開けた。

 整頓されていた。あまりにも綺麗すぎた。

 化粧台の上は空っぽで、クローゼットの中の彼女の服はすべて消えていた。ベッドサイドにあった、彼女が一番大切にしていたツーショット写真さえも、跡形もなくなっていた。

 その部屋はまるで、川島雪奈という女主人が最初から存在しなかったかのようだった。

 かつてない恐怖が神谷陽輝の心臓を鷲掴みにした。

 彼は震える...

ログインして続きを読む