第147章 氷室ジンまであと百メートル

氷室ジンは眉を跳ね上げ、疑わしげに速水ミオを一瞥した。

彼女は極度の緊張で全身を強張らせ、顔からは血の気が引いている。喉を鳴らしてごくりと唾を飲み込むと、まるで二つの小さな扇のような睫毛を震わせながら顔を背けた。

「私……怖いの」

そう言う彼女の白く柔らかな手が、氷室ジンの胸元を強く握りしめ、シャツに深い皺を寄せている。指先の冷たさが、布越しにジンの心臓へと沁み込んでくるようだった。

元々は黒崎統夜への鬱憤を彼女で晴らそうとしていただけだったが、今の彼女の姿を見て、胸の奥で得体の知れない衝動が渦巻き始めていた。氷室ジンが速水ミオを見る目に、次第に別の意味が混じり始める。

「いいだろ...

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