第150章 彼ではない

気のせいだったのかもしれない。

そう問いかけた瞬間、ミスター・Sの体が微かに震え、右耳に添えられた指が強張ったように見えた。

仮面の下の瞳が彼女を捉え、すぐに逸らされる。

おかしい。

何かがおかしい。

速水ミオは彼に詰め寄った。

「ミスター・S。もしよろしければ、素顔を拝見したいのですが」

相手は顔を隠すように腕を上げ、慌てて身を引いた。

速水ミオの胸に、ある疑念が渦巻く。

彼女は眉をひそめ、探るように尋ねた。

「ミスター・S、どうなさいました?」

ミスター・Sは座席の肘掛けを強く握りしめた。喉仏が上下し、張り詰めた声が返ってくる。

「速水さん、私の素顔を見た者はおり...

ログインして続きを読む