第152章 秘書と結婚しますか?

夜風が吹き込んでくる。

速水ミオの髪がふわりと舞い上がり、洗い立ての毛先が鼻先をくすぐった。その瞬間、清冽なレモンの香りが呼吸器の奥まで染み渡る。

その甘酸っぱさは、まるで巨大な手で心臓を鷲掴みにされたような切なさを伴っていた。

否定しようと唇を動かす。だが言葉は鉛のように重く、喉の奥に張り付いて出てこない。

「速水ミオ」

黒崎統夜が距離を詰める。

頭一つ分高い彼の広い体躯が、ミオの華奢な体をすっぽりと影に覆い隠した。

彼は腕を伸ばしてミオの腰を抱き寄せると、強引に顔を上げさせた。

震える睫毛の隙間から見えたのは、まるで褒め言葉を待つ子供のような、期待に満ちた瞳だった。

「...

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