第154章 それだと動きにくい

勢いよく顔を背けた速水ミオの視界に、黒崎統夜の破顔した表情が飛び込んできた。

漆黒の瞳がじっと彼女を捉えている。口元は緩み、どこからどう見ても満足げだ。どこかが痛むような様子など微塵もない。

「はいはい、若い二人が恥ずかしがってるのは分かってるよ」

向かいのベッドのおばさんが、冷やかすように言いながら仕切りカーテンを引いた。

「あたしのことはいないものと思って、ゆっくり話しな」

ミオが何か言うより早く、統夜は食い気味に礼を言った。そしてミオの手を握る力を強め、声を潜める。

「弁解するな。言えば言うほど泥沼だぞ」

ミオは眉を寄せ、彼の手から逃れようとする。

だが少し動くだけで、...

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