第163章 結婚

書斎。

速水ミオは部屋の中央に立ち尽くしていた。扉を閉めた黒崎統夜が振り返り、彼女を見やる。

彼女は思わず数歩後ずさり、視線を伏せて彼から目を逸らした。

「昨夜は、ありがとう」

黒崎統夜は片眉を上げ、彼女を睨み据える。

「まだ出ていくつもりか?」

速水ミオはすぐに悟った。先ほどの黒崎ユナとの会話を、彼は聞いていたのだ。

それでいい。

隠すつもりなど最初からなかったし、知られたほうが話は早い。

「ええ」

速水ミオはきっぱりと答えた。

「カノンの怪我が良くなり次第、出ていきます」

顔は上げなかったが、黒崎統夜の手が視界に入った。その指先が、微かに震えるのを彼女は見てしまっ...

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