第168章 あなたに約束する

速水ミオが駆けつけた時、オフィスには氷室ジンただ一人だった。

グレーのラフなカジュアルウェア。襟元は寛ぎ、鍛え上げられた胸筋が覗く。重厚なマホガニーのデスクに、安っぽい黒のサインペン一本。その取り合わせは、どこか場違いで滑稽ですらあった。

彼は視線を上げてミオを一瞥すると、すぐに手元へ戻した。

「来たか」

その声のトーンは、まるで昼食は済ませたかと尋ねるような、あまりに何気ないものだった。

「氷室社長」

ミオは一歩踏み出し、単刀直入に切り出した。

「投資家との関係解消を宣言するなんて……それはLMジュエリーに道義的な汚点を残すことになります。今後、資金調達をしようにも、あなたと...

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