第211章 彼女は世界で一番良いものに値する

タイミングが良いのか悪いのか。

速水ミオがクロサキ・ホールディングスのビルを出た直後、黒崎統夜から折り返しの電話がかかってきた。

受話器の向こうの彼はひどく息を切らしており、その声には濃密な鼻音が混じっている。

「ミオか。どうした、何か用か?」

その口調は普段と変わらず淡々としたものだったが、ミオにはその息遣いが、何とも言えない嘲笑を含んでいるように感じられた。

さらに間の悪いことに、派手なピンヒールを履き、妖艶な装いに身を包んだ二人の女が、ミオとすれ違いざまに囁き合っていたのだ。

「さっき電話もらった時、マジでビビったわ。詐欺かと思ったし」

「それな。まさかあの黒崎社長が、あ...

ログインして続きを読む