第216章 熱愛カップル

速水ミオの部屋を辞した時、黒崎進(くろさきすすむ)は両足に鉛でも詰められたかのような重さを感じていた。一歩を踏み出すことさえ、億劫でたまらない。

彼女は極めて平静を装っていた。今日のオークションに出品される競売品の良し悪しについて、笑顔で議論さえ交わしたほどだ。

だが、進には分かっていた。速水ミオは今にも砕け散ろうとしている。

それも、内側から外側へと、音もなく崩れ落ちるように。

これほど長く生きてきて、進は初めて知った。女というものは、傷ついた時に必ずしも泣きわめくわけではないのだと。ただじっと相手を見つめ、笑うことさえあるのだと。

彼の記憶にある母——黒崎夫人は、少しでも気に入...

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