第29章 この社員を採用して間違いなし

園田マリが警察に連行された。

朝から騒然としていたオフィスに、ようやく静寂が戻った。

正確には、速水にとっての静寂だが。

実際には他のデスクの影で、社員たちが彼女の背中を見ながらひそひそと噂話を交わしている。

「アンナ」誰かが尋ねた。「氷室社長と親しいアンナなら、あのアリンって女の正体、知ってるんじゃない?」

一斉に視線が集まる先には、オフィスの隅で頬杖をついている女――アンナがいた。

瓜実顔に、潤んだような大きな瞳。脚を組み、体を少し前傾させている。

その言葉にアンナは唇の端を吊り上げ、手首を返して相手を軽く叩く仕草をした。

「やだ、何言ってるの? 誰が社長と親しいって?」...

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