第32章 さらば速水の母

「ミオ……?」

五年という歳月は、速水母の髪を半分ほど白く染め上げ、かつて手入れの行き届いていた顔にも多くの皺を刻み込んでいた。

彼女はおぼつかない足取りで歩み寄り、震える手を伸ばした。唇まで小刻みに震えている。

「本当に、お前なのか?」

骨と皮ばかりになった手が触れる直前、速水ミオは顔を背けて避けた。眉間に深い皺が寄る。

「速水奥様」

速水母の震える手が虚空で止まり、しばらくして力なく下ろされた。自嘲気味な笑みが浮かぶ。

「これほどの時が経っても、まだ母さんを許してはくれないのか」

彼女はうなだれ、涙がぽたりと落ちた。

速水ミオは胸が締め付けられるのを感じたが、顔を背けて...

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