第56章 疑惑

速水ミオは眉間を寄せ、速水カノンの肩に置いた手に力を込めた。自らの懐に抱き寄せるようにして、彼女は優しく囁く。

「怖くないわよ」

二年ほど前、速水カノンは偶然『月菊』に触れ、重篤なアレルギー反応を引き起こしたことがあった。

あの時の緊迫した状況は、今思い出しても背筋が凍るほど恐ろしいものだった。

階下からは、黒崎統夜の怒気を孕んだ重々しい声が響いてくる。

「ユナが月菊アレルギーだと知っているはずだ! 最悪の場合、死に至ることだってあるんだぞ!」

ミオの腕の中で、速水カノンがびくりと震えた。彼女は不安げに顔を上げ、ミオを見つめる。

「お母さん、ここにも月菊アレルギーの人がいるの?...

ログインして続きを読む