第60章 彼女がユナちゃんの母親

東雲シオの到着は早かった。

一時間もしないうちに、黒崎家の別邸の前に彼女の車が現れた。

執事が来客を告げた時、黒崎統夜は書斎で、先ほどの速水ミオと速水ナナの会話を反芻し、思案に耽っていた。

報告を聞き、彼は片方の眉を跳ね上げた。

「東雲シオ? 彼女が何用だ」

「速水様の娘さんを、少し外へ連れ出したいとのことです」

統夜は眉間を寄せ、指先で万年筆を弄びながら沈黙した。

「黒崎社長」

執事が恐る恐る尋ねる。

「連れて行かせてもよろしいのでしょうか」

その言葉が終わらぬうちに、ドアの外から速水ミオの声が響いた。

「黒崎社長、入ってもよろしいですか?」

統夜が目配せすると、執...

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