第76章 謎の奥様

ピッ——。

黒崎統夜は通話を切るなり、運転席へ鋭い視線を向けた。

「十分以内だ。サウスピア・エリア46へ向かえ」

その声が落ちるや否や、運転手はアクセルをベタ踏みした。

強烈な加速Gに全員の背中がシートに押し付けられ、髪が逆立つように舞い上がる。

黒崎統夜はとっさに片腕を速水ミオの前に差し出し、シートベルトを引き出して素早くロックした。続いて自身もベルトを締めると、助手席で慌てふためいている氷室ジンに命じる。

「46番の配置図をすぐに寄こせ」

車が疾走する中、氷室ジンはシートに張り付いたまま、整った顔立ちを風圧で歪ませていた。

何かブツブツと文句を言っている。

風の音にかき...

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