第10章

川島沙也加視点

現代美術館は、メインギャラリーへと人々が流れ込む中、期待感でざわついていた。温かみのあるスポットライトが壁を照らし、葉月の力強い写真に柔らかな影を落としている。

「川島葉月――声なき声」と書かれた優美なプレートが、入り口に掲げられていた。

私は彼女の最も心に残る作品の前に立った。『砕けたレンズ』――葉月が死ぬ数週間前に撮影した自撮りだ。彼女の瞳には、カメラが捉えることはできても、癒すことのできない痛みが宿っていた。

「葉月の作品は、私たちの芸術界に潜む闇を明らかにしています」キュレーターが集まった人々に向けて声を張った。「彼女の死が忘れられることはないでしょう」...

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