忌まわしき娘と呼ばれた私

忌まわしき娘と呼ばれた私

渡り雨 · 完結 · 19.4k 文字

235
トレンド
235
閲覧数
0
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

ヴァイオリンコンクールの前夜、私は男たちに地下室へ引きずり込まれ、三時間にもわたって獣のように蹂躏された。

彼らは代わるがわる私を犯し、玩具のように弄び、私が性的絶頂に達する様を撮影し、無理やりレンズを直視させた。痛みと屈辱に、意識がほとんど遠のいていく。私は叫び、懇願し、そしてついに、声も出なくなった。

次に意識が戻った時、私は病室のベッドにいた。そこで、偶然にも聞いてはならない話の断片を耳にしてしまった。私が誘拐されたことの、本当の理由について。

チャプター 1

 ヴァイオリン・コンクールの前夜、私は数人の男たちによって地下室へと引きずり込まれ、三時間にも及ぶ凄惨な蹂躙を受けた。

 彼らは私を代わる代わる犯し、玩具のように扱い、絶頂に達する無様な姿をカメラに収めながら、レンズを直視しろと強要した。苦痛と屈辱で、意識が飛びそうになる。私は叫び、哀願し、やがて喉が潰れて声も出なくなった。

 誰かが、赤錆の浮いた鉄パイプを引きずって近づいてくる。

 何をしようとしているのかを悟り、私は必死で身を縮めた。

「手だけは駄目! お願い——」

 男は冷ややかに嘲笑う。

「大金を積まれてな。この手が二度とヴァイオリンを弾けねえようにしてくれってよ」

 必死に抵抗したが、男たちに地面へと縫い付けられた。鉄塊が何度も振り下ろされる。執拗に、正確に、私の右手を破壊していく。指の関節、掌の骨、手首——そのすべてが、粉々に砕かれた。

          ◇

 婚約者のボディーガードに発見された時、私は血まみれで、全身傷だらけだった。父は疾風のように駆けつけ、私を一目見るなり号泣し、犯人を見つけ出して必ず報いを受けさせると誓った。婚約者の颯斗も目を真っ赤にして駆けつけ、最高の医療チームを呼んで手術させると約束し、「頑張れ」と私を励ました。

 だが、病室のベッドに横たわっていた時、私は本来聞くべきではない会話を耳にしてしまった。

「宏樹さん、あんたの手の者、やりすぎですよ」

 颯斗の声だった。トーンは低いが、不満が滲んでいる。

「僕はただ、真弓を出場させるために、真澄を欠場させたかっただけだ。足までやるとは聞いてない」

 お父さんは少しの間沈黙し、苛立ったように答えた。

「俺だって、あそこまで凶暴な連中だとは思わなかった」

 一拍置いて、父は続けた。

「だが、これでよかったのかもしれない。今のあいつの状態なら、何もかもショックで忘れちまうだろう」

「よく言いますよ」

 颯斗が冷笑する。

「まあいい。これで真弓の首席は安泰だ」

「だが、真澄も俺の娘だ」

 父の声に、僅かな躊躇いが混じる。

「あんな姿を見ると、やはり俺も……」

「真弓のほうが大事なんでしょう?」

 颯斗が遮った。

「何年か前、あの住職が言ったのを忘れたんですか。『真弓は豊田家の守り神だ』と。それに比べて真澄は……」

 十五年前の夏、父は高名な住職を招いて私たちを占わせた。住職は真弓を指して「この娘には天命があり、家に幸運をもたらす」と言い、私を一瞥して「この娘は凶相だ。家に災いを招く」と吐き捨てた。

 あの日以来、父が私を見る目は変わってしまった。

 ベッドの上で、涙が無音でこぼれ落ちる。

 事故じゃなかった。すべては彼らが周到に計画したことだったのだ。真弓のために、あの馬鹿げた予言のために、私の手は、私の人生は壊された。

「あれは迷信だ」

 父は口籠もったが、自身の偏愛を否定しようとはしなかった。

 無理やり話題を変えるように、父が尋ねる。

「手術はどうなってる?」

「焦らないでください」

 颯斗が言った。

「明日は真弓の期末試験だ。万が一、真澄が回復して騒ぎ立てたらどうするんです?」

「まさか……」

「延期しましょう」

 颯斗の声は、鳥肌が立つほど冷静だった。

「真弓のコンクールが終わるまで待つんです」

 そばにいた医師が、思わず口を挟んだ。

「そ、そのような……通常、手術は一刻も早いほうがいいのです。これ以上遅れると……」

「あんたには関係ないだろう」

 颯斗がドスを利かせた声で威圧する。

「金は受け取ったはずだ。どうせ彼女は二度とヴァイオリンには触れない。手術がいつになろうと同じことだ。障害者は障害者なんだからな」

 医師はすぐに口を閉ざした。

「言葉を慎め」

 父が低く唸ったが、反論はしなかった。

「あれでも二十年以上育てた娘なんだぞ」

「なら、一生金を恵んでやればいいでしょう」

 颯斗は吐き捨てるように言った。

「最高級のリハビリセンターを探して、一番高い介護人を雇って、すべてをお膳立てしてやればいい——『不運な事故で引退を余儀なくされた天才と、それを献身的に支える家族と婚約者』。美しい話じゃないですか」

 彼は笑った。

「あなたは慈悲深い父親を演じ続ければいい。真澄は一生障害者として生き、真弓は輝かしい未来を手に入れる。皆が幸せになれる」

 彼らの会話を聞きながら、私の世界は音を立てて崩れ落ちていった。

 病室のドアが開く気配がして、私は慌てて目を閉じた。だが、体の震えまでは止められない。父はすぐに異変に気づいたようだ。

「真澄、目が覚めたか? 気分はどうだ?」

 その声は、気遣いに満ちていた。

 私はこみ上げる嘔吐感を必死に呑み込み、ゆっくりと目を開けた。

「淳一兄さんは……どこ……?」

 喉が張り付き、しわがれた声が出る。

「お兄ちゃんは……知ってるの?」

「あいつは電話に出ないんだ」

 父が即座に答えた。

「私の、手……」

 私は弱々しく訴えた。

「いつ手術できるの?」

 父と颯斗が、一瞬だけ視線を交わすのが見えた。

「医者が言うには、傷が深すぎるそうだ。まずは少し様子を見よう、と」

 父は痛ましそうな表情を作ってみせた。

 私は颯斗をじっと見つめ、問いかけた。

「私たち……本当に、待つの?」

 颯斗は優しく私の髪を撫でた。

「そんなことさせるわけないだろう」

 彼は聖人のように微笑み、身を屈めて、私の額に優しく口づけを落とした。

「君は僕の婚約者だぞ? 僕が君を傷つけるような真似、するわけないじゃないか」

 二人が病室を出て行った後、枕元の携帯電話が短く震えた。

 兄の淳一からのメッセージだった。

『真澄、世界最高の神経外科医、森本博士を見つけた! 今モルディブにいるらしいが、プライベートジェットで迎えに行かせた。待ってろ! 俺が帰るまで待つんだ!』

 だが、たとえ淳一兄さんが名医を連れてきたとしても、颯斗や父が手術を許可するだろうか?

 時間は無慈悲に過ぎていく。一分一秒が、右手の永久的な喪失を意味していた。

 その時だった。病室の外から、慌ただしい足音が響いてきたのは。

「真澄の部屋はどこだッ!!」

 それは、兄の声だった。

最新チャプター

おすすめ 😍

社長、奥様が亡くなりました。ご愁傷様です

社長、奥様が亡くなりました。ご愁傷様です

156.6k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
お金と特権に囲まれて育った私。完璧な人生に疑問を持つことすらなかった。

そんな私の前に彼が現れた―
聡明で、私を守ってくれる、献身的な男性として。

しかし、私は知らなかった。
私たちの出会いは決して偶然ではなかったことを。
彼の笑顔も、仕草も、共に過ごした一瞬一瞬が、
全て父への復讐のために緻密に計画されていたことを。

「こんな結末になるはずじゃなかった。お前が諦めたんだ。
離婚は法的な別れに過ぎない。この先、他の男と生きることは許さない」

あの夜のことを思い出す。
冷水を浴びせられた後、彼は私に去りたいかと尋ねた。
「覚えているか?お前は言ったんだ―『死以外に、私たちを引き離せるものはない』とね」

薄暗い光の中、影を落とした彼の顔を見つめながら、
私は現実感を失いかけていた。
「もし...私が本当に死んでしまったら?」
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

205.6k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

247k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
出所したら、植物状態の大富豪と電撃結婚しました。

出所したら、植物状態の大富豪と電撃結婚しました。

169.4k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
5年前、私は誰かの身代わりとなり、無実の罪で投獄された。
出所すると、母親は私が獄中で産んだ二人の子供を盾に、植物状態にある億万長者との結婚を強いる。
時を同じくして、その悲劇の大富豪もまた、家族内での権力闘争の渦中にいた。

街では植物状態の男が若い花嫁とどう初夜を過ごすのかと噂される中、この元囚人が並外れた医療技術を秘めていることなど、誰も予想だにしなかった。
夜が更け、無数の銀鍼(ぎんしん)が打たれた男の腕が、静かに震え始める…

こうして、元囚人の彼女と植物状態の夫との、予期せぬ愛の物語が幕を開ける。
さようなら、愛してくれない家族たち。地味な専業主婦は研究界の女王へと覚醒する

さようなら、愛してくれない家族たち。地味な専業主婦は研究界の女王へと覚醒する

141.1k 閲覧数 · 連載中 · 86拓海
「君よりも、彼女のほうが母親にふさわしい」
愛する夫と子供たちにそう言われ、私は家庭内での居場所を失った。
六年間、身を粉にして尽くしてきた日々は、何の意味もなかったのだ。

絶望の中で目にしたのは、かつて母が手にした科学界の最高栄誉であるトロフィー。
その輝きが、私に本来の自分を思い出させた。

私はエプロンを脱ぎ捨て、白衣を纏う。
もう誰かの妻でも、母でもない。一人の科学者として、世界を驚かせるために。

数々の賞を総なめにし、頂点に立った私を見て、元夫は顔面蒼白で崩れ落ちた。
震える声で私の名前を呼び、足元に縋り付く彼。

「行かないでくれ……君がいないと、俺は……」

かつて私を見下していたその瞳が、今は絶望と後悔に染まっていた。
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

73.8k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

91.8k 閲覧数 · 連載中 · 七海
人生最良の日になるはずだった、結婚式当日。
新郎の車から出てきたのは、見知らぬ女の派手なレースの下着だった。

しかも、その布切れにはまだ。生々しい情事の痕跡が残されていた。

吐き気がするほどの裏切り。
幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた私。

けれど、泣き寝入りなんてしてやらない。
私はその場でウェディングドレスの裾を翻し、決意した。

「こんな汚らわしい男は捨ててやる」

私が選んだ次の相手は、彼など足元にも及ばない世界的な億万長者で?
跡継ぎゼロの冷酷社長に一夜で双子を授けてしまいました

跡継ぎゼロの冷酷社長に一夜で双子を授けてしまいました

98.7k 閲覧数 · 連載中 · 風見リン
結婚三年目、浅見紗雪は名門の偽令嬢だったことが発覚した。

姑は彼女に離婚を迫り、婚約を真の令嬢に返すよう要求した。

浅見紗雪は不安を抱えながら夫に尋ねた。

しかし彼は冷淡な表情で言った。

「俺が誰と結婚しようと、どうでもいい」

彼女は心が冷え切り、離婚協議書にサインした。

一週間後、十数機のヘリコプターが浅見紗雪の前に着陸し、そこから三人の財閥御曹司が降りてきた。

彼らは興奮した面持ちで言った。

「妹よ、二十年間、ようやく君を見つけることができた!」
逃げる秘書の資産は三千億!?急げ、社長!

逃げる秘書の資産は三千億!?急げ、社長!

73k 閲覧数 · 連載中 · 神楽坂奏
十年前、中林真由の母親が腎臓移植を必要としたが、家には手術費を工面する金がなく、挙句の果てに家まで叔父一家に乗っ取られた。
少しでも多くのお金を稼ぐため、彼女は高級クラブでウェイトレスとして働き始めた。
女があまりに美しく、誰も守ってくれる者がいない時、その美しさは原罪となる。
初出勤の日、彼女は危うく猥褻行為の被害に遭いかけた。
男たちが彼女を取り囲み、卑猥な視線をその身に注ぐ。
クラブの金持ちたちは、彼女のような世間知らずの子羊を見つけ出すのが実にうまかった。
彼女が最も惨めなその時、今野敦史が現れた。
この十年、彼女はずっと今野敦史の傍にいた。
友人たちも、家族も、皆が今野敦史を知っていて、二人が付き合っていると思い込んでいる。
でも、今まで彼の周りには女が絶えなかったじゃない。それが今、「ついに運命の相手を見つけた」なんて言ってるの。
今、ようやく彼から離れる機会を得たというのに、どうして手放せようか。
社長、見て!あの子供たち、あなたにそっくりです!

社長、見て!あの子供たち、あなたにそっくりです!

81.3k 閲覧数 · 連載中 · 風見リン
結婚三周年――
中川希は期待に胸を膨らませて、高原賢治に妊娠の報告をした。
しかし返ってきたのは――十億円の小切手、一言「子供を中絶しろ」、そして離婚契約書だった。
子供を守るため、彼女は逃げた。
――五年後。
双子の愛らしい子供を連れて帰ってきた彼女は、医学界で誰もが憧れる名医となっていた。
追い求める男は数知れず。
その時、高原賢治は後悔し、全世界に向けて謝罪のライブ配信中。
中川希は冷ややかに見下ろす。
「離婚して、子供もいらないって言ったんじゃないの?」
彼は卑屈に頼み込む。
「希、復縁して、子供を――」
「夢でも見てなさい。」
「希、子供たちは父親が必要だ。」
双子は両手を腰に当て、声をそろえて言う。
「私たち、ママをいじめるパパなんていらない!」
部屋から布団も荷物も投げ出され、大人しく立つことすらできない高原賢治に、希は言い放つ。
「目を見開いて、よく見なさい。結局誰が誰をいじめてるのか――!」
天使な双子の恋のキューピッド

天使な双子の恋のキューピッド

87k 閲覧数 · 連載中 · 鯨井
妊娠中の私を裏切った夫。不倫相手の策略に陥れられ、夫からの信頼も失い、耐え難い屈辱を味わった日々...。

しかし、私は決して諦めなかった。離婚を決意し、シングルマザーとして懸命に子育てをしながら、自分の道を切り開いていった。そして今や、誰もが認める成功者となった。

そんな時、かつての夫が後悔の涙とともに現れ、復縁を懇願してきた。

私の答えはただ一言。
「消えなさい」
離婚と妊娠~追憶のシグナル~

離婚と妊娠~追憶のシグナル~

71.2k 閲覧数 · 連載中 · 月見光
離婚して、すべて終わると思った。
伊井瀬奈は新生活を歩み始める决心を固めていた。
しかし、その時、訪れたのは予期せぬ妊娠——それも、最悪のタイミングでの激しいつわり。
瀬奈は必死に吐き気をこらえるが、限界を迎え……。
「お前……まさか……」
冷酷無比な元夫・黒川颯の鋭い目が、瀬奈のお腹へと向けられる。
あの日から、運命は、もう一度動き出していた。