編集部の甘い罠

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Elliot Wren · 完結 · 3.2m 文字

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紹介

【社会人一年目の江楓は、職場の先輩たちに押しつぶされるだろうと覚悟していた。だが、新聞社に入ったばかりの彼が配属されたのは、まさかの美人上司の部下というポジションだった……】

チャプター 1

江城の夏の夜。蒸し暑く、空気には甘い雰囲気が漂っていた。

藍月は酔いつぶれていた。部屋に入るなり、ソファに座り込み、目を閉じて額に手を当て、苦しそうな表情を浮かべていた。

私も少々飲み過ぎていたが、何とか意識を保ちながら、水を一杯注いで藍月の前のテーブルに置いた。

「藍主任、水でも飲んで酔いを覚ましてください」

そう言いながら、私は周囲を見渡した。藍月の家はシンプルでありながら上品に整えられていて、壁の隅の花台には緑鮮やかな蘭が置かれ、持ち主の趣味の良さと教養を物語っていた。

甘い夜気の中、手の届かない女神と二人きり。私の心は混乱と戸惑いで一杯だった。

藍月は目を開け、水を手に取りながら、私に妙な視線を一瞥した。

その眼差しに、私の心臓は激しく鼓動し、全身の血流が速まった。

藍月は何も言わず、まぶたを伏せて水を飲み、体が少し震えた。

突然、私は自分が冷たく気高い美しい女上司の前で、なんと卑小な存在かと感じた。

しばらくの沈黙の後、私は内なる動揺と衝動を抑えて言った。

「藍主任、お休みください」

藍月はまだ黙ったまま、床をじっと見つめていた。そして立ち上がると、体を数回揺らし、寝室へ向かった。

私が帰ろうと身を翻したとき、背後で「どさっ」という音がした。振り返ると、藍月が床に倒れていた。

慌てて藍月を抱き起こし、ソファに座らせた。私も自然とその隣に腰を下ろした。

やがて、藍月は両手で顔を覆い、頭を下げ、体を震わせ始め、無言のすすり泣きを漏らした。

藍月が泣いていた。それも心から悲しんでいるように、まるで胸に大きな痛みを抱えているかのように。

私は慌てた。私のヴィーナス、私の美しい女上司が、どうして突然泣き出したのか。見ていて胸が痛んだ。

どう慰めればいいのか分からず、ただ彼女の肩に手を置いた。

藍月はまだ酔いが覚めていないようで、突然私の膝に顔を埋め、押し殺したすすり泣きを続け、肩が激しく震えた。

たちまち、私の全身の血が急速に駆け巡り、思わず体が震えた。藍月の肩を叩いていた手は、自然と撫でるような動きに変わっていた。

藍月の泣き声は、聞いていて胸が引き裂かれるようだった。

抑えきれない衝動に駆られ、私は勇気を振り絞って、突然藍月の体を抱き寄せ、彼女の顔を上げ、そして彼女の情熱的な唇を奪った……

藍月はまだ酔いの眩暈の中にいるようで、目を開けず、私の行動に身を委ねていた。

私の頭は真っ白になり、混沌としていた。キスをしながら両手で彼女の体に触れ、しばらくしてから藍月を抱き上げ、寝室へ向かった。藍月は抵抗も拒絶もせず、片腕で私の首に絡みついてきた。それが私をさらに勇気づけた。

すべては慌ただしい間に起こり、あまりにも唐突でありながら、しかし自然な成り行きのようでもあった。

甘い夜、酔いしれた人々、混乱した心。

藍月の柔らかく広いベッドの上で、本能が私を無謀にさせたが、私はどこか窮屈さも感じていた。

男女の営みについて、私は何も知らなかった。経験したこともなかった。

私が戸惑っているとき、まるですべては運命の神の采配であるかのように、私の初めての相手は幼馴染の萍ではなく、知り合って一週間も経たない美しい女上司、藍月となった。

あの夜、私の人生に新しいページが開かれた。私より10歳年上の成熟した女性によって、私はただの若造から一人の男へと変わった。

あの夜、初めて女性の新鮮さと刺激を味わい、私は極度に興奮した。世の中にこんなにも言葉では表せない素晴らしいことがあるのだと初めて知った。夜明け近くになってようやく、藍月の隣に倒れ込み、深い眠りに落ちた。

私は夢も見ずに熟睡した。

目が覚めると、隣に藍月の姿はなかった。厚く閉じられたカーテンの隙間から光が差し込み、朝が来ていた。

私は慌てて起き上がった。藍月はすでに服を着て、ベッドの横の一人掛けソファに座り、静かな眼差しでベッドヘッドの絵を見つめ、何かに心を奪われているようだった。

藍月の静かな眼差しと、乱れたシーツを見て、昨夜自分と藍月の間に何が起きたのかを理解した。

突然自分の立場を意識し、居心地の悪さと狼狽を感じ、急いで服を着て起き上がった。

その間、藍月はずっと黙ったまま、物思いに沈んだ様子で私を見つめていた。

服を着終え、私は不安げに藍月の前に立った。まるで悪いことをした子供のように。

しばらくして藍月は口を開いた。「あなた、初めてだったの?」

私は恥ずかしさで頷くことしかできなかった。

藍月は再び黙り込んだ。私はこっそり彼女を見た。驚いたことに、藍月の顔には申し訳なさと不安の色が浮かんでいた。

一瞬戸惑い、続いて藍月のため息が聞こえた。「ごめんなさい……」

私は驚いて、藍月を見上げた。彼女の目には、さらに濃い不安と謝罪の色が浮かんでいた。

「江楓、ごめんなさい。あなたが……だとは知らなかった」藍月はしみじみと言った。

私は呆然と藍月を見つめた。この美しい女性を、私の若く無知な人生に鮮やかな一章を書き加えた美しい女上司を見つめながら、昨夜の熱い情景が次々と脳裏に浮かんだ……

思わず感情が高ぶり、胸の内に溢れる感情に突き動かされ、衝動的に叫んだ。「月姉さん!」

その呼びかけと同時に、私の心には万感の思いが込み上げ、藍月への限りない憧れと愛着が満ちあふれた。

この瞬間、彼女が普段の高慢な美しい女上司であることを忘れ、この瞬間、萍のことも思い出さず、この瞬間、自分が一人の男だと感じた。

藍月は眉をわずかに寄せ、物憂げな眼差しで私を見つめ、唇を軽く噛み、静かに言った。「江楓、気にしないで。昨夜は二人とも酔っていたの。帰りなさい」

藍月の言葉と彼女の眼差しを見て、私の胸に突然痛みが走った。

「月姉さん、僕は…」私が口を開こうとしたとき、藍月は人差し指を唇に当て、そっと首を振った。

私は茫然と藍月を見つめ、胸の痛みは増すばかりだった。突然「愛してる」と言いたくなった。

そして自分の思いの浅はかさに気づいた。世の中にこんなに急に生まれる愛などあるだろうか。

しかし、自分の心の声を抑えることもできなかった。萍とこれほど長い時間を過ごしてきたのに、こんなにも強い感情の高ぶりを感じたことはなかった。こんなにも骨身に染みる感覚を味わったこともなかった。

これは本当に愛なのだろうか?

男の愛とはこんなにも早く訪れるものなのか?

私の頭は混乱し、藍月の目に宿る断固とした意志を見て、心に不満を感じながらも、結局何も言えず、未来への無知と迷いを抱えたまま、黙って藍月の家を後にした。

外に出て、ふと一つの疑問が浮かんだ。藍月の家には男性がいないのはなぜだろう?

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