彼女は母の遺灰を身につけて彼を誘惑した

彼女は母の遺灰を身につけて彼を誘惑した

大宮西幸 · 完結 · 17.0k 文字

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紹介

夫は私との時、コンドームを使ったことがなかった。「あれは感覚を台無しにする」と言って。だから私は四年間、避妊薬を飲み続けた。体を壊すまで。

ある日、夫の車のダッシュボードで、半分使われたコンドームの箱を見つけた。後部座席の下には、見覚えのないTバック。

でも、本当に最悪だったのはそこからだった。

母の遺灰で作ったネックレス——一年間、失くしたと悲しんでいたあのネックレスが、夫の二十三歳の部下の胸元で揺れていた。
夫が寝室から持ち出して、彼女に渡したのだ。

彼女は私の視線に気づいた。そして、にっこりと笑った。

夫を問い詰めると、彼は私の頬を叩いた。そして泣いている彼女を助手席に乗せて、車で去っていった。

彼女の友達が病院に来た。スマホでライブ配信しながら、私に「いじめの謝罪」を要求した。

私は彼らを立体駐車場へ案内した。

そこで彼らが見たのは、ストレッチャーの上で私の夫に脚を絡ませている彼女の姿だった。コンドームなしで。

その映像は、ネット中に拡散された。

チャプター 1

 夫の浮気が発覚したのは、一箱のコンドームのせいだった。

 結婚して四年。彼は一度もコンドームを着けてくれたことがなかった。「気持ちよくない」だの「イケなくなる」だのと言い訳をして。それなのに私は毎日、吐き気に耐えながらピルを飲み続けていたというのに。

 だが、それはグローブボックスの中にあった。中身は半分減っていた。

 それは、ほんの始まりに過ぎなかった。

 飛行機を降りた時のことから話そう。

 私は予定を二日切り上げて学会から戻ってきた。明日は母が亡くなって三年目の命日――どうしても、その場にいたかったからだ。

 ターミナルから真司に電話をかけた。「六時に着くの。迎えに来てくれる?」

「分かった」彼の声は温かく、いつも通りだった。「すぐ行くよ」

 いつもと同じ声色。結婚して四年、工藤真司は依然として、一生をかけて私に償うと誓った男のままのように聞こえた。

 到着口を出ると、彼の車がすでにエンジンがかかっていた。

 助手席のドアを開け、動きが止まる。

 座席の位置が低すぎる。

 私の身長は百七十センチ近くある。真司はいつも私のためにシートを調整しておいてくれる――あそこに座るのは私だけだからだ。だが今は、もっと小柄な誰かが乗っていたかのように、後ろに下げられ、低くなっていた。

 私は何も言わずに乗り込んだ。

 次に鼻をついたのは匂いだ。汗の臭い。その奥に潜む甘い香り――香水か、バニラか、それともココナッツか。そして、言葉にできない何かの匂い。

 バックミラー越しに後部座席を見る。いつもなら染み一つない革シートが、しわくちゃになっていた。見覚えのない毛布が隅に丸まっている。

「学会はどうだった?」真司が車を発進させながら尋ねる。

「順調だったわ」

 彼は私の手をそっと握った。「会いたかった」

 私はその手を見つめた。同じ手。同じ結婚指輪。四年間信じ続けてきた、同じ男。

「最近、誰か乗せた?」私は何気ない調子を装った。「車の匂いが違うみたい」

「いや?」彼は躊躇いもしなかった。「消防署との往復だけだよ。どうして?」

「気になっただけ」

 彼は私に微笑みかけた――あの屈託のない、明るい笑顔で。そして話題を夕食の予定へと変えた。

 嘘はあまりにも滑らかに出てきた。まるで呼吸をするかのように。

 グローブボックスから何か取り出すふりをする必要があった。私は手を伸ばし、それを開けた。

 除菌ジェル。車検証。そして、コンドームの箱。

 私はそれを凝視した。

 結婚四年目。私たちは一度もコンドームを使ったことがない。真司は気持ちよくないと言い、それでは果てられないと言った。だから私がピルを飲んだ。四年間、一日も欠かさず。吐き気がしても、医者に長期服用のリスクを警告されても。

 彼が着けようと言ってくれたことは一度もなかった。ただの一度も。

 なのに、ここには箱がある。中身は半分空だ。

 私はグローブボックスを閉じた。

「どうかした?」真司がちらりとこちらを見る。

「ううん。リップクリームが見つからなくて」

 しばらく沈黙が続いた。胸の中にぽっかりと穴が開いたようだった。

 ガレージに車を入れる。私が手にする前に、真司がスーツケースを掴んだ。

「先に入ってくつろいでて。荷物は俺が運ぶから」

「実は――」私は腹部を押さえた。「ちょっと足に力が入らないの。先に行ってて、すぐ戻るから」

 彼は頷き、ドアへと向かった。

 彼の背中が見えなくなった瞬間、私は車の後ろへと回り込んだ。

 内側から曇ったリガラスの窓に、まだ痕跡が残っていた。ガラスに押し付けられた二組の手形。重なり合う指。その位置が何を意味するかは明白だった。

 私は後部ドアを開けた。

 フロアマットの下、隅に押し込まれていたのは――黒いレース。Tバックだ。Sサイズ。

 私はそれを二本の指でつまみ上げた。

 証拠を目の当たりにしても、涙は出なかった。代わりに、全てがカチリと音を立てて繋がった――座席の位置、匂い、コンドーム、そして嘘。

 スマホを取り出し、写真を撮る。

 家に入ると、真司はすでにキッチンで残り物を温めていた。

「うどん食べる? 腹ペコだろ」

「ええ、もらうわ」私はカウンターに座り、何事もなかったかのように振る舞う彼を眺めた。あの車の中で誰かとヤッていたことなど、微塵も感じさせない。

「疲れてる顔だ」彼は私の前にうどんを置きながら言った。「食べてすぐ休みなよ。明日は大事な日だろ」

 覚えていたのだ。

 当然だ。明日という日こそ、彼がそもそも私と結婚した理由なのだから――あの火事から母を救えなかったことへの、彼なりの贖罪のチャンス。

 一口食べる。噛んで、飲み込む。

「早めに寝るわ」

「いい子だ」彼は私の頭にキスをした。「愛してるよ」

 その言葉は、死んだ重りのように私の心にのしかかった。

 寝室の鍵をかけ、従妹の結月の番号を呼び出した。彼女は消防署の事務員をしている――真司と同じ署だ。誰かの悪事を暴くなら、彼女以上の適任者はいない。

 私「 調べてほしい人がいるの」

 結月の返信は三秒で来た。

 結月「 どうしたの?? 誰を殺ればいい??」

 私は写真を送った。真司の車の灰色のマットに落ちた、黒いレースの下着。

 私「 持ち主を特定して。名前が分かったら五百万円あげる」

 結月「 五百万!?!? ちょっと、あの人何したの」

 結月「 まあいいや、任せて。明日までにその尻軽女の人生、丸裸にしてやるから」

 明日、私は母の墓参りに行く。

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