炎に焼かれた私が選んだのは、彼の敵

炎に焼かれた私が選んだのは、彼の敵

大宮西幸 · 完結 · 20.0k 文字

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紹介

私は、あの男の炎の中で死んだ。

ルシアン・クロスは私を「ゴースト」にした――ニューヨークの裏社会で最も恐れられる暗殺者に。
三十七人の命を奪い、十年間、忠誠を捧げた。
それなのに、手錠をかけたのは彼自身で――私が生きるには甘すぎる、と告げた。

だが、死は私に二度目のチャンスを与えた。

目を開けると、私は再びあの倉庫にいた。
今度は泣いていない。
今度は逃げる。
そして今度は、彼が築き上げたすべてを奪い、焼き尽くす。

ただ、一つだけ問題があった。
ルシアンの宿敵、ケイル・ヴォーンが瓦礫から私を引き上げたのだ。
今、私は正体を隠しながら、もし真実を知れば私を殺すはずの男に惹かれている。

だが、秘密が明るみに出ても、ケイルは引き金を引かなかった。
代わりに、私に銃を手渡した。

「君が誰だったかなんてどうでもいい。大事なのは、これから誰になるかだ」

――ルシアンは、自分のものを決して手放さない。

チャプター 1

ノラ視点

 目を開ける。

 生きたまま焼かれる痛みは、まだ鮮明に脳裏に焼き付いている。

 皮膚が溶け落ちる感覚、濃い煙に肺を締め付けられる感覚、爆発が肉を引き裂く感覚――そのすべてが、ほんの数秒前の出来事のように、鮮烈に蘇った。

 だが今、私は冷たいコンクリートの上に横たわり、手は錆びたパイプに繋がれた手錠で拘束されている。

 倉庫。

 ルシアンの廃倉庫だ。

 鉄骨が熱でねじ曲がり、瀕死の獣のような悲鳴を上げている。煙が肺になだれ込み、息を吸うたびに砕けたガラスを飲み込むような感覚がする。

 死んだはずじゃなかったの? ここはどこ?

「お前はいつも甘すぎた、ノラ」炎の轟音を切り裂いて、ルシアンの声が響く。恐ろしいほどに、穏やかな声だった。「だから死んでもらうしかなかった」

 頭をもたげ、煙の向こうに彼のシルエットを捉えようと目を細める。引き金の引き方を、暗闇で生き抜く術を教えてくれた男――その彼が今、私に背を向けている。

 薄明りの中、彼が右手に握っているものが見えた。あの壊れたクラウンのネックレス。私が十八歳になったときに彼がくれたものだ。「お前は俺の女王だ」と言って。今、それはどす黒い血の染みで覆われている。

 この光景。この台詞。

 私……戻って、きた?

 その事実に気づいた瞬間、笑みが唇に浮かんだ。私は煙のせいでかすれた声で叫ぶ。「ルシアン! 後悔させてやる!」

 彼は歩みを止めたが、振り返らない。

「俺が後悔しているのは」彼の声が届く。「もっと早くこうしなかったことだけだ」

 彼の背後で、倉庫の扉が乱暴に閉められた。

 私は周囲を見渡し、脱出口を探し始める。前回は、ルシアンがこんなことをするなんて信じられなかった。貴重な数分間を泣き叫び、手首がずたずたになるまで手錠を引っ張り、そして炎と爆発の中で死んだ。

 でも、今回は違う。復讐してやる。

 天井が崩れ始めている。

 炎が生き物のように、こちらへ這い寄ってくる。

 火の光で、自分の手が揺らめいて見えた。

 無理やり思考を働かせる。

 体勢を変え、壁に両足を突っ張り、ありったけの力で引いた。

 手首に激痛が走る。手錠が肉に食い込み、血が腕を伝う。パイプが軋む音を立てた。

 パキッ。

 パイプの接続部に亀裂が入る。

 やめない。引き続ける。鎖がさらに深く食い込み、血で手首が滑る。だが、その滑りも利用した。

 爆発はもうすぐそこだ。もっと速く動かないと。

「あっ!」

 パイプが完全に折れた。私は後ろに倒れ込み、後頭部を床に強打する。視界に星が散った。

 手錠と壊れたパイプを引きずりながら、窓際まで這っていく。

 二階。下はコンクリート。

 目を閉じる。

 走る。跳ぶ。ガラスを突き破る。

 無重力感。

 そして、地面との残酷な衝突。

 肋骨が折れる感覚。肺からすべての空気が叩き出される。

 這おうとするが、体が言うことを聞かない。

 動け。今すぐ。

 九メートルほど進めただろうか。

 爆発が起きた。

 衝撃波が背後から私を叩きつけ、地面から体を持ち上げた。熱、瓦礫、苦痛――

 激しく叩きつけられ、後頭部を何か硬いものに打ちつけた。

 視界が霞む。ドンッという爆発の轟音と、炎の咆哮が耳を焼く。

 そして、意識は闇に落ちた。

 痛みが私を引き戻す。

 はっと目を覚ますと、目が眩むような白い光に再び目を閉じた。心臓が肋骨に叩きつけられ、肺は空気を求めて喘ぎ、息をするたびに鋭い痛みが走る。

「目が覚めたわ」知らない女の声。

「ボスに知らせて」もう一つの声。男の、荒々しい声だ。

 ゆっくりと再び目を開け、明るさに慣れていく。白い天井、電子音を立てる医療機器、鼻をつく消毒液の匂い。

 私設の病室だ。

 起き上がろうとしたが、全身の筋肉が抗議の悲鳴を上げた。見下ろすと、体は包帯で巻かれ、左腕はギプスで固定され、胸は息をするたびに焼けるように痛む。

 でも、生きている。それが重要だ。

 脳裏にいくつもの光景がよぎる――最期の瞬間のルシアンの冷たい目、三十七件の暗殺任務、私の銃で死んだすべての人々の名前。そして最後に、私が危険すぎると判断したときの彼の絶対的な確信。

 ドアが開く。

 一人の男が入ってきた。

 長身で、肩幅が広く、ダークブラウンの髪に、薄暗い照明の中では氷のように見えるグレーブルーの瞳。最も印象的なのは右目の下にある傷跡だ。目尻から頬骨まで走り、彼を危険で命知らずな男に見せている。

 ケイル・ヴォーン。

 ルシアンの宿敵。

「俺の部下が君を瓦礫の中から引っ張り出してラッキーだったな」彼はベッドの横の椅子に座り、両手を組んで言った。「ルシアン・クロスから生き延びる人間はそういない」

 喉が渇きすぎて声が出ない。

 彼が水の入ったグラスを差し出す。一瞬ためらった後、受け取って飲んだ。冷たい液体が喉を滑り落ち、焼けるような痛みを和らげてくれる。

「名前は?」と彼が尋ねる。

 問題は、それだ。

 本名を名乗れば、ケイルはすぐに私が誰なのか――ゴースト、ルシアンの最も危険な暗殺者だと気づくだろう。その場で殺されるか、人質として利用されるのが関の山だ。

 でも、正体を隠せば……

 私は彼の目を見つめ、決断を下す。

「ノラ」とかすれた声で答える。「ノラ・ベネット」

「ノラ・ベネット」ケイルは繰り返した。その声には疑念が滲んでいる。「なぜルシアンは君を殺そうとした?」

「私は彼の情報屋でした」と私は言う。「知りすぎたんです。抜けたいと言ったら、彼は……後始末をすることにしました」

 ケイルは長い間私をじっと見つめ、そのグレーブルーの瞳で私を見透かそうとしていた。心臓が胸から飛び出しそうなくらい速く鼓動しているのに、私は平静を装うことに努めた。

「奴を憎んでいるか?」と彼が突然尋ねた。

「殺したいほどに」と私はためらうことなく答えた。

 その答えに彼は微笑んだが、その笑みは目には届いていなかった。

「いいだろう」彼は立ち上がって言った。「ならば取引をしよう。君は俺にルシアンの情報を提供する――基地の場所、取引記録、奴に打撃を与えられるものなら何でもだ。その見返りに、俺は君に保護と復讐の機会を与えてやる」

 私は拳を握りしめ、爪が手のひらに食い込む。

 前の人生では、十年もの間ルシアンの武器として生きた。

 この人生では、彼が築き上げたものすべてを、この手で破壊してやる。

「取引成立です」と私は言った。

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