拝啓、刑事になったあなたへ。容疑者の私は、今日も嘘をつく。
698 閲覧数 · 完結 · 猫又まる
もう二度と会うはずのなかった人。
私のすべてだった、牧村須加――。
三年前の“あの日”、私たちの日常は血と炎に塗りつぶされた。共通の敵である犯罪組織によって父は殺され、母は心を失い、そして彼の両親も命を奪われた。
復讐を誓った私は、光の世界に彼を残し、たった一人で闇に身を投じることを決意した。
私が組織に堕ちた裏切り者だと信じ込ませ、心の底から憎ませること。それが、危険な復讐に彼を巻き込まないための、唯一の方法だったから。
「――まさか、こんな形で再会するなんて」
潜入任務中の些細なミスで逮捕された私。取調室の扉が開き、そこに立っていたのは……成長した彼の姿。鋭い眼光で私を見据える、刑事牧村須加その人だった。
「名前を」
かつて私の名を優しく呼んだ唇から紡がれたのは、他人に向けるような、氷のように冷たい声。
「……朝比奈鈴」
本当の私は、潜入捜査官。
本当の私は、今もあなた...
私のすべてだった、牧村須加――。
三年前の“あの日”、私たちの日常は血と炎に塗りつぶされた。共通の敵である犯罪組織によって父は殺され、母は心を失い、そして彼の両親も命を奪われた。
復讐を誓った私は、光の世界に彼を残し、たった一人で闇に身を投じることを決意した。
私が組織に堕ちた裏切り者だと信じ込ませ、心の底から憎ませること。それが、危険な復讐に彼を巻き込まないための、唯一の方法だったから。
「――まさか、こんな形で再会するなんて」
潜入任務中の些細なミスで逮捕された私。取調室の扉が開き、そこに立っていたのは……成長した彼の姿。鋭い眼光で私を見据える、刑事牧村須加その人だった。
「名前を」
かつて私の名を優しく呼んだ唇から紡がれたのは、他人に向けるような、氷のように冷たい声。
「……朝比奈鈴」
本当の私は、潜入捜査官。
本当の私は、今もあなた...