ときめき禁止令【百合オメガバース】

「これが顧南の二度目の周府への訪問だった。

前回は李艾耘に連れられ、その人の従者、あるいは玩具のような身分で、周府の使用人たちにさえ蔑まれ、自分より下だと見なされる存在だった。

下どころか、αとして、そもそも最も卑しい存在であり、一方彼らは何者か？議員家の使用人であり、しかも議長選に出馬する議員の家、さらには府内には最年少で「最も将来有望」と呼ばれる議員までいる。

これほど多くの名誉ある肩書きを持つ周府は、どれほど栄えていることか。周府の使用人として、彼らも自然と誇りを持ち、一般人より数段上だと自負し、ましてや卑しいαなど眼中にない。

そんな卑しいαが、彼らの家の小さなお嬢様に手を出すとは、主人に叱責されて当然、最後には湖に身を投げて自殺するはめになった。

しかし、そんな卑しい人間が湖に飛び込んだだけで、なぜこれほど大きな騒ぎになるのだろう？

彼らには分からないし、知る必要もなく、また彼らには関係のない話だった。

彼らにとって、それはただの話のネタに過ぎなかった。

だが顧南にとって、この出来事は彼女の人生を一変させるものだった。

あの時、周府で溺れかけた彼女は、奇跡的に生き延び、むしろ災いが転じて福となり、その後の数ヶ月の生活を根本から変え、安定した日々を送ることになった。

しかし過去のすべては、今となっては過ぎ去った雲煙のようで、誰にとっても触れたくない忌まわしい過去となり、彼女たちは心の奥底に封印し、二度と掘り起こしたくないと願っていた。

再び周府を訪れ、顧南は改めてこの邸宅の広大さを実感した。それはまるで彼女と周舒宁の間の距離のようだった。

これほど広大な敷地内を歩いて移動することは不可能で、飛行車から降りた後、すぐに別の車に乗り換えた。

すると、周府の使用人たちは信じられない光景を目にした。

彼らの家の唯一のωであるお嬢様の隣に、若く美しい女性が並んで座っていたのだ。

そう、並んで座っていた。これまでお嬢様の側近である阿潔でさえ、後部座席に座り、お嬢様と並ぶことはなかったし、お嬢様が外部の人間を連れてくることなど一度もなかった。

さらに驚くべきことに、彼らの家の小さなお嬢様はその若い女性の膝の上に座り、まるで普段お嬢様を抱くように、親しげにその首に腕を回していた。

重要なのは、この女性が何とも平然とした顔をしていることだった。お嬢様から話しかけられても、ただ幼いお嬢様を抱いているだけだった。

一体この人は何者なのか、こんなにも堂々と、お嬢様の顔すら立てないとは。

あの顔を見ると、どこかのωなのだろうか？

しかし、どこの家のωがそれほど尊ばれ、自分たちのお嬢様から熱心な歓迎を受けるのだろう？

忘れてはならないが、彼らのお嬢様は議員なのだ。上院の議員である。

しかし、この顔は見たことがない。彼らが知る上流貴族家のωではないようだ。

もしかして新興の富豪か？

車が彼らの視界から消えると、暇な使用人たちの間で噂話が始まった。

もちろん、その人物がどこかで見覚えがあるという者もいたが、どこで見たのか思い出せなかった。

ごく一部の人だけが、その顔をはっきり見た後、ただ驚愕の表情を浮かべ、すぐにその信じられない考えを否定した。

まさか、あの人は確かに…

そんな人物がどうして小さなお嬢様と同席できるのか、きっと見間違いだろう。

これらの使用人たちがどう思い、どれほど驚いても、それは顧南には関係なく、彼女はただ静かに座っていた。

車はしばらく走った後、ある中庭の外で停まった。

ここがどこなのか、顧南にも分からなかった。

隣に座っていた女性が彼女に告げるまでは。「小南、着いたわ。降りましょう。ここが今後私たち四人が住む中庭よ。私たちの許可なしに一般の人は入れないし、これからは誰にも邪魔されないわ…」

話しながら、周舒宁は片手でお腹を支え、もう片方の手で座席を握りしめながら車から降りた。

過去なら、彼女のお腹がこれほど大きくなっていれば、きっと小南に先に降りてもらい、慎重に自分を支えてもらったことだろう。

もちろん、あの頃の小南なら彼女が言う前に急いで車から飛び出し、彼女を支えようとしただろう。彼女が転んだり、ぶつかったり、転倒したりしないよう心配するはずだった。今のように見て見ぬふりをするのではなく、赤ちゃんが騒いで彼女を車から引きずり出すようなことはなかっただろう。

心強い助っ人である宝宝は、最後にはママの合図で、南南を素早く中庭の中へ引っ張った。

「南南、烨烨はたくさんおもちゃ持ってるの。早く見に行こう！これからは南南と一緒に遊ぼうね」

「たくさん」と言いながら、興奮している宝宝は顧南の手を離し、両腕をできるだけ広げて、自分がどれだけたくさんの宝物を持っているか南南に見せようとした。

そしてこれらの宝物は、これからは南南と一緒に分け合うのだ。

他の人なら、絶対に使わせないのに。

そう言うと、宝宝はまた興奮して南南の手を取り、中庭の奥へと引っ張っていった。

宝宝に引っ張られ、彼女が転ばないように顧南は彼女の手をしっかりと握り、一緒に中へと走っていった。

大人と子供が手を繋いで、これから暮らす場所へ走っていく姿を見て、周舒宁はようやく安堵のため息をつき、満足げに、幸せそうに微笑んだ。そして彼女たちの後を追いかけた。彼女の美しい瞳は輝き、まるで夜明け前の空で最も明るく輝く星のようだった。

小南がついに戻ってきたのだから。

そしてこれからは、二人が一緒にいることを制限する者はもういない。

彼女が堂々と人を府に連れ帰ることができたのが、最高の証拠だった。

人は連れ戻した。次は、小南の心を取り戻すだけだ。

そう考えながら、彼女は再び大きく膨らんだお腹に手を当てた。「お姉ちゃんだけじゃなく、赤ちゃんもママが南南の心を取り戻すのを手伝ってね。お姉ちゃんがどれだけ頑張っているか見てる？私たち母娘も頑張らないとね」

烨烨はまだ4歳だが、すでに多くのことを理解していて、前回南南のことを忘れて南南をどれだけ傷つけたかも分かっているのだろう。だから今は真心を込めて南南に償おうとしている。

子供の好意はずっと単純だ。あなたに好意を持ったら、自分の持っている宝物をすべて分け合おうとする。

一方彼女は、あれこれと計算し、「痛みを伴う別れ」を選び、何も言わずに小南を天国から地獄へと落とした。

あの暗黒の日々の中で、小南がどれほど絶望していたか、彼女には想像もつかなかった。

今日から彼女も宝宝から学ばなければならない。そうしなければ、小南の失われた心は本当に取り戻せなくなるかもしれない。

これまで生きてきた中で、この点では4歳の子供にも劣るとは、本当に情けない。

遅れをとった周舒宁は苦笑いしながら頭を振り、すぐに足早に追いかけた。

烨烨がこれほど頑張っているのだから、彼女も遅れをとるわけにはいかなかった。