紹介
実の兄に家族の会社から追放されたことが一番深い傷だと信じていた…「建築の天才」と呼ばれる従姉妹が私の人生を奪った衝撃的な真実を知るまでは。彼女は父の隠し子だったのだ。
すべてを失ったと自分に言い聞かせていた…母の最後の日記を見つけるまでは。それは墓の向こうからのメッセージだった。「もしあなたがこれを読んでいるなら、彼らが動き出したということ。地下室のパスワードは、私たちが初めて一緒に夕日を見た日よ」
明日、私は25歳になる。私がすでに母の隠された金庫を開けていることを、彼らは知らない。そこで私を待っているのは、この家族を粉々に打ち砕くほどの秘密だけではない。青葉市の建築界の根幹を揺るがすほど革新的な設計図、そして彼らが必死に隠していた真実なのだ。
今度は私が反撃する番だ。
チャプター 1
午後三時。中心街の陽光が、全面ガラス張りの窓を通して北条設計事務所の会議室に降り注いでいる。私は深く息を吸い込み、社員や役員たちで埋め尽くされた室内を見回した。
この三ヶ月間、周りの人たちの態度が微妙に変わっていることに気を揉んでいた。だが、今日のプレゼンテーションですべてを挽回できるはずだ。そう自分に言い聞かせる。
「ご列席の皆様。このプロジェクトは、母・北条恵子のデザイン哲学を継承するものです――建築とは単なる商業空間ではなく、コミュニティの心臓部である、と」
私がリモコンを操作すると、スクリーンには人間味あふれるデザインの画像が映し出された。
会議室は静まり返った。
最前列には婚約者の小林雅人が座っているが、彼は無表情で手元のスマートフォンに視線を落としたままだ。兄の北条達也は腕を組み、その視線を部屋の隅にいる北条百合へと向けている。彼女はほんの三ヶ月前に入社したばかりの、私の従妹だ。
「予算は十二億円以内に収めています。地域住民への利益還元は――」
「待て」
突然、雅人が顔を上げた。静まり返った会議室に、鋭い声が響き渡る。
「佳奈。君は、このプロジェクトに商業的な価値があると本気で思っているのか?」
私は凍りついた。これが私の婚約者の言葉なのか? ほんの三ヶ月前までは、役員会で私のどんな提案も必死になって擁護してくれていた、あの彼が?
「……どういう意味?」
「言葉通りの意味だ」
雅人は立ち上がり、ネクタイの結び目を直した。
「回収に少なくとも十年はかかるコミュニティ事業に、これほど巨額の投資をする。役員たちが求めているのは、もっと実利的なリターンだ」
会議室にざわめきが広がる。頬がカッと熱くなり、頭に血が上るのがわかった。
「雅人、あなただってわかってるはずでしょう。このプロジェクトが持つ意味を――」
「ビジネスはビジネスだ、佳奈」
雅人の口調は、まるで赤の他人のように冷ややかだった。
「君には、もう少し経験が必要なんじゃないか?」
心臓が早鐘を打つ。これが本当に、私が知っている彼なのか? いつも私を支えてくれていた、あの雅人なのか?
達也が咳払いをした。
「佳奈のプレゼン、ご苦労。では次に、百合から提案をしてもらおう」
百合が優雅に立ち上がった。仕立ての良いシャネルのスーツに身を包み、栗色の髪を上品なシニヨンにまとめている。その姿を見た瞬間、私は自分の居場所が奪われる恐怖に襲われた。
「私の提案は、この土地を高級商業複合施設へと変貌させることです」
「想定利回りは300%です。2年で元が取れる計算になります」
スクリーンに豪華絢爛なショッピングセンターのデザインが映し出される。
「素晴らしい!」
ある役員が手を叩いて賛辞を送った。
「これこそ、我々が求めていた国際的なビジョンだ!」
別の役員も同調する。
私は拳を握りしめ、爪が掌に食い込むのを感じた。これが彼らの言う『素晴らしさ』なの? コミュニティの発展を、ただの金儲けの道具に変えることが?
達也が立ち上がり、満足げな笑みを浮かべた。
「今日以降、主要なプロジェクトはすべて百合に主導させることとする。佳奈はもっと経験を積む必要があるからな」
会議室が拍手に包まれた。その乾いた音の一つ一つが、まるで私の頬を張る平手打ちのように感じられた。
百合が私に近づき、優しく肩に手を置いた。
「心配なさらないで、佳奈お姉様。これからは協力して、一緒に学んでいきましょう」
その口調はまるで、失敗した子供を慰めるかのようだった。その手を振り払いたかったが、大勢の人が見ている中では、顔に張り付いたような笑顔を崩さないことで精一杯だった。
胸の奥で怒りの炎が燃え上がった。私は勢いよく立ち上がり、椅子が床を擦って不快な音を立てた。
「これは母さんのデザイン哲学を受け継ぐものなのよ! こんなことをして、それでもあなたたちは『北条』の名を継ぐ資格があると思っているの!?」
その瞬間、空気が凍りついた。みんなが、まるで頭のおかしい人を見るような目で私を見ている。
達也の顔色がさっと青ざめた。
「いい加減にしろ、佳奈。会議はこれまでだ」
全員の視線が突き刺さるのを感じる。屈辱と怒りで呼吸すらままならない。私は資料をひったくると、逃げるように会議室を飛び出した。
廊下に私のヒールの音が虚しく響き渡る。背後から、雅人の足音が追いかけてくるのが聞こえた。
「佳奈、待てよ」
私は振り返らずに足を止めた。もし振り返れば、そこには知らない他人の顔があるような気がして怖かったのだ。
「……何? これ以上、私に恥をかかせるつもり?」
「そんなんじゃない」
雅人が私の前に回り込んでくる。
「俺はただ、現実を見ているだけだ」
「現実、だって?」
私は振り返り、怒りに目を燃え上がらせた。
「いつからそんなに会社の利益を気にするようになったの? それとも、あの『従妹』の才能とやらに目が眩んだのかしら?」
雅人の表情が一瞬、不自然に強張った。
「佳奈、そんな言い方はやめろ。みっともないぞ」
「みっともない?」
私は自嘲気味に笑った。心臓が張り裂けそうだった。
「みっともないのはどっちよ? 私が一番助けを必要としている時に、敵側に回るなんて!」
「百合から学ぶべきなんじゃないか。本当のデザイン思考というやつを」
雅人の言葉が、ナイフのように胸に突き刺さった。
仕立ての良いスーツを着たこの男を見つめながら、私はふと、彼がまったくの赤の他人のように思えた。三年間の歳月は、どうやらただの笑い話だったらしい。
「本当のデザイン思考?」
声が震え始めた。
「雅人、あれは母さんの遺産なのよ!」
「ビジネスはビジネスだ、佳奈。感情でプロとしての判断を曇らせてはいけない」
「ええ、そうね。私はどうかしてるわ」
私は一歩後ずさった。
「あなたなら私の味方をしてくれると信じていたなんて、本当にどうかしてた」
その日の夜七時。私は雅人の両親との定例の食事会に出席し、何事もなかったかのように振る舞おうとしていた。
中心街にある高級レストラン。クリスタルのシャンデリアの下で、雅人の両親は熱心に今日の会議について語り合っている。
私はテーブルにつき、機械的にフォークを回していた。婚約指輪が光を反射しているが、今はそれが鉛のように重く感じられた。
「百合さんという方は、本当に素晴らしいわね!」
小林夫人が目を輝かせて言った。
「佳奈も彼女を見習うべきよ。ビジネスの世界じゃ、涙なんて何の役にも立たないんだから。結果がすべてなのよ」
「百合さんの国際的な感覚こそ、これからの未来だ」
小林おじさんも同意して頷く。
雅人は黙ってロブスターに向き合っていた。私を弁護する言葉など、ただの一言も発しようとはしない。
胃がむかむかする。この人たちは、まるで私がそこにいないかのように私の話をしている。
もういい。本当に、もうたくさんだ。
「おっしゃる通りですわ」
私は突然食器を置き、立ち上がった。
全員の視線が私に集まる。
私は指から婚約指輪をゆっくりと抜いた。プロポーズの時、雅人が「一生身につけていてほしい」と言った指輪だ。それをテーブルの中央に置く。ダイヤモンドが蝋燭の光を受けて冷ややかに煌めいた。
「婚約を解消させてください」
周囲の客が何事かとこちらを向く。小林夫人はワインを喉に詰まらせて咳き込んだ。
「佳奈!」
雅人が飛び上がった。
「気が狂ったのか? たかが仕事の意見の食い違いだろう!」
「たかが意見の食い違い?」
私の声は澄み渡り、一語一語が弾丸のようだった。
「いいえ。ようやく真実が見えただけよ」
私はバッグを手に取った。かつてないほどの身軽さを感じていた。
「私を尊重してくれない男性と結婚するつもりはありません」
背後で椅子が倒れる音と雅人の怒鳴り声が聞こえたが、私は振り返らなかった。
一時間後。私は私たちの――いや、彼のマンションに戻り、荷造りを始めた。雅人から何十回も着信があったが、すべて無視した。
夜も更けた頃、私はスーツケースを引きずって高級マンションを出た。冷たい夜風が頬を撫で、瞳から溢れる涙をさらっていく。
三年間の同棲生活が、あっけなく終わった。不思議なことに、予想していたほどの痛みはない。代わりに感じたのは解放感だった。
タクシーを拾い、北条家の本邸へと直行する。今はただ自分の部屋に引きこもり、今日起きたすべてのことを整理したかった。
玄関に着いたところで、携帯が鳴った。父からだ。誰とも話したくなくて、すぐに切った。
静かに玄関の鍵を開ける。リビングは真っ暗だった。階段へ向かおうとしたその時、書斎から父の潜めた声が聞こえてきた。
私は足を止めた。なぜか心臓が早鐘を打ち始める。こんな時間に、父はどうしてあんなに声を忍ばせているのだろう?
「あと一ヶ月だけ引き延ばせばいい。あの土地の書類さえ整えば、佳奈にはもう止める力などない……」
心臓が止まるかと思った。
何の書類? 止める力がないって、どういうこと?
「百合の協力も見事なものだ。雅人も計画通り佳奈から離れた……すべて予定通り進んでいる」
血の気が引いた。世界が崩れ落ちていくのがわかる。
すべて、仕組まれていたことだったのだ。
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六兄:「なぜチームが負けた?」――彼女が脱退したからだ。
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だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
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