彼らが私を愛してくれたのは、遅すぎた

彼らが私を愛してくれたのは、遅すぎた

大宮西幸 · 完結 · 20.2k 文字

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紹介

あの麻薬密売人に拷問されていた時、父シラス——麻薬取締官、そして母ヴァイオレット——市の主任検視官は、妹のバレーボール準決勝勝利を祝っていた。三年前、父が彼の麻薬組織を壊滅させた報復として、男は私の喉を掻き切った。死に際に父へ電話をかけたが、電話を切る直前、父はこう言った。「ふざけないで。今はセレーナの試合が一番大事なの!」

チャプター 1

 あの麻薬の売人が私をなぶり者にしていたとき、父さんのサイラス――麻薬捜査官と、母さんのヴァイオレット――市首席監察医は、妹のバレーボール準決勝の勝利を祝っていた。三年前に父さんが奴の麻薬組織を潰した報復として、男は私の喉を掻き切ったのだ。死の間際、私は父さんに電話をかけた。けれど切れる寸前、父さんはこう言った。「いい加減にしろ、今はセリーナの試合が一番大事なんだ!」

――

 私の遺体は、城北にある廃棄された製薬工場で見つかった。

 通報者は近隣の住民で、あまりの悪臭に耐えられなかったそうだ。

 父さんと母さんは、妹のセリーナの準決勝勝利祝賀会から駆けつけたところだった。

 父のサイラス・ブラックウッドのシャツの襟には、まだ宴会のゲストパスが留められたままで、母のヴァイオレット・ブラックウッドの真紅のドレスは、薄暗い工場の中で酷く場違いに見えた。

 父の相棒であるコール・ラッシュが警戒線の外で待ち構え、二人にマスクを手渡す。

「ここを覚えてるか?」コールが声を潜める。「三年前に押さえたあの件、現場はここだった」

 父さんは数秒間工場を見つめ、無言で頷いた。

 母さんはすでに車のトランクを開け、慣れた手つきで使い捨ての防護服を着て、道具箱を取り出していた。

 幾多の凶悪な現場に慣れっこなはずの二人でも、工場に足を踏み入れた瞬間、鼻をつく腐臭に思わず吐き気を催したようだった。

 コンクリートの床に転がる私は、ガスで膨れ上がり、原形を留めていなかった。皮膚は汚濁した緑色に変色し、顔は潰され、首はほとんど断裂している。

 たとえ彼らが私のことを真剣に「一瞥」したとしても、それが私だとは気づかないだろう。

 蠅が飛び交い、空気には甘ったるい腐敗臭が漂っていた。

 母さんはマスクの位置を直して深呼吸し、紫色のゴム手袋をはめた。

 ふと、以前セリーナが膝を擦りむいた時のことを思い出す。母さんは同じような手袋をして傷口を洗い、痛くないかと気遣いながら優しく慰めていた。

 生きている間、私がそんなふうに扱われたことなんて一度もなかった。あの優しさは、いつだってセリーナだけのものだ。

 今、その手が私の膨れ上がった手首に触れる。

 動きが止まった。

 金属製のブレスレットが肉に食い込み、黒ずんだ血糊にまみれ、鎖の隙間には乾いた組織片がこびりついている。それは去年、私が三ヶ月分の小遣いを貯めてオーダーした特注品で、内側には家族全員のイニシャルが刻まれていた。

 あの時、私は緊張と期待で胸がいっぱいだった。不器用な訪問販売員みたいに、誰かがこの気持ちを受け取ってくれることを願って。

 けれどセリーナは試着するなり、金属アレルギーだと言った。父さんはその場で顔を曇らせた。「お前は、一つのことすらまともにできないのか?」

「エヴァ。セリーナは養子だけど、実の妹として接しなさい」

 あの瞬間、私は必死に弁明しようとした。実の妹だと思っているからこそ、お揃いのものを作ろうとしたのに。

 ただ、金属アレルギーだなんて知らなかっただけなのに。

 今となっては、そんな言い訳など何の意味もないけれど。

 母さんは眉をひそめ、ブレスレットをつまみ上げると、惨白な照明にかざした。

 これが私からのプレゼントだったと思い出すはずだ!

 それが私のブレスレットだと気づき、泣き崩れる母さんの姿さえ想像した。

 だが、母さんの表情はピクリとも動かなかった。

「証拠品袋を」彼女は助手のペイトン・ウェルズに振り返った。「留め具に注意して。微細証拠が残っているかもしれない」

 ブレスレットは透明な袋に入れられ、道具箱の横に無造作に置かれた。

 最初から期待なんてするべきじゃなかったんだ。彼らにとって、あらゆるものは分類され、番号を振られ、ファイルされるだけの存在なのだから。

 母さんは手袋を外すと、こめかみを揉んだ。「女性、二十歳前後。致命傷は頸動脈の切断だけど、死ぬ前に長時間拷問を受けている」一呼吸置いて、付け加えた。「手口に……ショーのような演出を感じるわ」

 父さんは煙草に火をつけた。煙が澱んだ空気にまとわりつく。「恨みによる犯行か。あるいは見せしめだな」

 父さんはコールを見た。「メディアは?」

「嗅ぎ回ってる。局は、麻薬絡みならDEA主導にするそうだ」

 コールが忠告する。「ホトケはまだ挙がってない。あんたのところの二人の嬢ちゃん、最近は気をつけさせたほうがいい」

 母さんは間髪入れずに答えた。「セリーナの強化合宿には二十四時間の警備がついてるわ。エヴァに関しては……あの子は好き勝手に出歩くから、私には管理しきれない」

 父さんの煙草を持つ手が、ふいに震えた。

「古傷が痛むのか?」

 父さんはやるせなさそうに呟く。「エヴァが買ってくる鎮痛パッチが切れて……」

 言いかけて、口をつぐんだ。

 それは仕事中に撃たれた手の後遺症だった。それ以来、毎週私が用意していたのだけれど、今はもう私が死んでしまったから。

 コールが父さんの背中を強く叩いた。「エヴァはあんたらの実の娘だ。もう少し気長に付き合ってやれ、悪いことは言わん」

 父さんは深く煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

「セリーナは準決勝の前夜、試合を見に来てくれって泣いてエヴァに頼んだんだ。エヴァのやつ、調子よく約束したくせに、結果はどうだ? 携帯は電源切れ、本人は蒸発。セリーナは姉を心配して第一セットでミスを連発、危うく敗退するところだった」

「エヴァは今になっても帰ってこない。電話にも出ず、アパートにもいない」父さんは吸い殻を地面に投げ捨て、靴底で踏み躙った。「手元で育ててない子供は、結局心がここにないんだな」

 私はそこに横たわり、その言葉を聞きながら、胸が張り裂けそうだった。

 父さん、母さん。

 行きたくなかったわけじゃない。行けなかったの。

 セリーナが試合をしていたあの日、私はもう死んでいたんだよ。

 家に帰らないとあなたたちが文句を言っていた間、私はずっとこの薄暗い工場で、あなたたちを待っていた。

 今、あなたたちは来てくれた。私の死体を見て、私のブレスレットに触れた。

 なのに、それでも気づいてくれなかった。

 これが、あなたたちの娘だということに。

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