悪役令嬢に転生した私,実はそんなに悪くない

悪役令嬢に転生した私,実はそんなに悪くない

渡り雨 · 完結 · 24.2k 文字

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紹介

地震であっけなく死んだと思ったら、小説の悪役令嬢に転生しちゃった!?
「さあ、今すぐ主人公をいじめろ。それがお前の使命だ」
謎のシステムから無茶な命令が下るけど、生来のヘタレでビビりな私に、いじめなんてハードルが高すぎる!
案の定、ミッション失敗で電気罰が下された。でも、想像してた激痛はなくて、ビリビリ痺れるこの感じ…あれ、なんかクセになるかも!?
『仕方ない。この俺がお前にホンモノの悪役令嬢道を叩き込んでやる』
システムにまで呆れられる始末。臆病ヘタレな私、スパルタなシステムの調教で、一体どんな風に“開発”されちゃうんですか――!?

チャプター 1

 矢留家の屋敷の庭の片隅に隠れ、私は少し離れた場所で人々に囲まれている黒髪の少年の様子を、細心の注意を払って窺っていた。

 彼は無表情のまま、周りの人々の話に適当に応じていたが、その深い瞳の奥には、私には読み解くことのできない感情が隠されていた。

『早く任務を遂行しろ。原作のシナリオ通り、お前は黒川司をいじめるべきだ』

 頭の中に、低い男性の声が響き、私を急かす。

 これはシステムの声。私が転生してから割り当てられた『導き手』だ。

 そう、私はごく普通の女の子だったが、不慮の事故で死んだ後、どういうわけか小説の世界に転生し、典型的な悪役令嬢である矢留杏になってしまったのだ。

 さらに悪いことに、私が転生したこの小説の筋書きは、嫌というほどよく知っているものだった。黒川司が主人公で、今私が演じている矢留杏は、彼を専門にいじめる意地悪な義理の妹なのだ。

 原作では、この主人公は長年いじめられた末に成功を収め、そして……矢留杏を監禁し、数年間にわたる拷問と報復を行う。

 そこまで考えると、私の両足はまたしても制御不能に震え始めた。

『何を怖がっている? シナリオ通りに、彼を少し侮辱するだけだ』システムの声音には、どこか苛立ちが混じっているように聞こえた。

『できません……』

 私は心の中で応える。

『あなたには分からないんです、原作では、彼は後で……』

『もしお前が任務を完遂しなければ、私もお前に罰を与えることになる』システムは冷たく私の言葉を遮った。

 私は深く息を吸い込み、無理やり隠れ場所から姿を現した。

 今日は、矢留杏が矢留家主催のパーティーに参加する日だ。

 手入れの行き届いた庭園を抜け、私は慎重に人々の輪に近づいていく。黒川司はすでに人だかりの中心におり、その顔は不自然に赤らんでいたが、眼差しは依然として醒めていた。彼が私に気づくと、その顔色は瞬時に険しくなった。

『行け、彼のグラスを奪い取れ』

 システムが命令する。

 私はためらいがちに手を伸ばしたが、黒川司に近づいた瞬間、恐怖に襲われた。

 この忌々しい涙失禁体質がまた発動し始め、涙がすでに目の中に溜まっている。

『お前は本当に役立たずだな』

 システムが嘲笑う。

『いじめることすらできないとは。原作の矢留杏は、いじめの達人だったぞ』

 私が尻込みしたその瞬間、ずっと囲まれていた黒川司が突然口を開いた。

 「どうした? 俺が飲んだものまで欲しいのか?」

 その声は冷たく、挑発的だった。

 私は平静を装おうと努めたが、それでも震えを抑えきれない。

 システムが怒鳴った。

『震えるな、お前は悪役令嬢だろうが! 頭がおかしくなったのか、俺はお前を彼をいじめ、凌辱しろと命令しているんだ!』

 システムのその言葉に、私の顔はかっと赤くなった。

『クソッ、何で顔を赤くする、俺がお前を罵って気持ちよくなったのか?』

『安心しろ、私がいる。お前はただ彼を侮辱すればいい』

『これ以上うつむいてオドオドした態度でいるなら、もう一度電気を流すぞ、信じないか? もっと凶悪になれ!』

 以前、私が任務を完了できなかった時、システムは私に罰を与えた。

 でも、電気を流される感覚は実は痛くなかった。

 むしろ、少し痺れるような、心地よい感覚だった。

 回数を重ねるうちに、私はそれが結構快感になってきていた。

 でも、そのことをシステムに知られるわけにはいかなかった。

 傍らに立っていた橋本蓮——この小説のヒロインで、『学園の華』と称される美少女——が、突然笑いながら言った。

「矢留さんって、もしかして司くんのこと好きなのかしら? いつもいろんな理由をつけて彼をいじめてるし」

 他の者たちもそれに乗じて囃し立てる。

「そうそう、この間は司の制服を盗んでたしな!」

 顔が熱くなるのを感じ、涙がこぼれ落ちそうになった。

 違う、それは私じゃない、全部、元の矢留杏がやったことだ!

「わ、私が彼を好きになるわけないじゃない、あれはただ……」

 ただ、いじめていただけ。

『無駄話はよせ』

 その時、システムの音声が脳内に響いた。

 皆が驚きの視線を向ける中、私は黒川司の手からグラスをひったくり、そして——

『全部、彼の頭からぶちまけろ』

 システムが命令した。

 私はその通りにした。

 琥珀色の液体が黒川司の黒髪を伝い落ち、彼の高価なオーダーメイドのスーツを濡らす。彼の瞳の底は潤んでいてどこか夢見心地だったが、怒りを内に秘め、一言も発さずに私をじっと見つめていた。

『今だ、躊躇うな、怯むな、この言葉を言え。『黒川司、私の犬になれ』』

 システムが続けて指示する。

 私は唇を噛みしめ、皆の驚愕の視線の中、その侮辱の言葉を口にした。

「黒川司、私の犬になれ」

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