祝賀会で夫が腹黒女と熱いキスを交わしているのを見て、私はすぐさま会社を買収。すると彼は、ひざまずいて復縁を求めてきた

祝賀会で夫が腹黒女と熱いキスを交わしているのを見て、私はすぐさま会社を買収。すると彼は、ひざまずいて復縁を求めてきた

渡り雨 · 完結 · 14.6k 文字

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紹介

祝賀会は、やじと喝采に包まれていた。

中田池は、いわゆる「出資者の義理の娘」のご機嫌を取るため、私の目の前で、村木由紀菜と艶めかしいポッキーゲームのようなキスを始めた。

私は彼のジャケットを抱え、隅に立つ。まるで余計な家政婦のように。

私が問い詰めると、中田池は不機嫌さを隠そうともせず言い放った。「鈴川薫子、遊びじゃないか!由紀菜さんの機嫌一つで会社の命運が決まるんだ。大局を見ろ!」

私は、笑った。

彼は知らない。彼が必死に媚びへつらうその「由紀菜」が、虎の威を借る狐、ただの偽物だということを。

そして、彼の会社の命脈を本当に握り、あのS級プロジェクトを承認したのが、彼に見下されていた「何の取り柄もない」私自身だということを。

離婚の翌日、私は中田グループの資金供給をすべて断ち切った。

中田池は半狂乱で謎の出資者との面会を求めた。重い扉が開き、彼が目にしたのは、主賓席に座る私の姿。私は彼の目の前であのS級プロジェクトの企画書をシュレッダーにかけた。

「中田様、このビジネス、なかったことにさせていただきます。」

チャプター 1

「キスしろ! キスしろ!」

 囃し立てるコールが、ソファの中央に座る一組の璧人を包み込んでいた。

 中田池の腕の中には村木由紀菜がいる。彼女は恥じらう素振りを見せながらトランプの一角を口に咥え、もう一角がゆっくりと中田池の唇へと近づいていく。

 私はその喧噪から数メートル離れた場所に立ち、中田池が脱ぎ捨てたばかりのジャケットを抱え、彼にサインをもらうための書類を握りしめていた。

 このS級プロジェクトを勝ち取るために、一ヶ月も徹夜を続け、胃痙攣を薬で散らしながら耐え抜いたのだ。企画書は十数回も書き直し、ようやく昨日のこと、正式決定に漕ぎ着けたばかりだった。

 なのに今、私は莫大な富をもたらした功労者でもなければ、彼の『隠し妻』ですらない。まるで空気の読めない家政婦のようだ。

「中田様、まだ躊躇ってるんですか? 村木さんが照れちゃうじゃないですか!」

 中田池はふっと笑うと、歓声の中で身を乗り出し、トランプへと食らいついた。鼻先が触れ合い、二人は深い口づけを交わす。

「ヒュー! 付き合っちゃえよ!」

「中田様、披露宴はいつですかー?」

 同僚たちの嬌声が響く。本来なら私のプロジェクト成功を祝うはずだったこの宴は、いつの間にか主役がすり替わっていた。

 窒息しそうな空気に耐えきれず、私は宴会場を背にした。無人の廊下に立ち、中田池の携帯を鳴らす。

 三十秒後、彼が大股で歩いてきた。

 彼は苛立たしげにネクタイを緩める。

「中にいるんだから、中で話せばいいだろ。わざわざ電話で呼び出すな」

 私は彼を凝視した。声が震える。

「中の人たちが何を言ってるか、聞こえましたよね」

「何の話だ?」

 中田池は気のない様子で壁に寄りかかった。

「披露宴の話か? 場のノリを真に受けるなよ」

「目の前でキスするのが場のノリですか?」

 私は一歩踏み出した。

「結婚して三年。会社のイメージのために隠したいと言うから我慢しました。村木由紀菜は取引先の娘だから世話をしろと言うから、それも我慢しました。でも、次は? 二人の子供にお祝いを包むまで、公表しないつもり?」

 中田池の表情が曇り、上位者特有の威圧感が押し寄せる。彼は私の顎を掴み、痛いほど指を食い込ませた。

「鈴川薫子、お前最近暇なのか?」

 冷淡な声が降ってくる。

「あれは忘年会の余興だ。俺が乗らなきゃ出資者の顔が立たない。それくらいの理屈もわからないのか?」

「わからないのは、どうしてあなたのメンツのために、私の尊厳が踏みにじられなきゃいけないのかってことよ!」

「いい加減にしろ!」

 中田池は私の顔を振り払い、侮蔑の眼差しを向けた。

「外で発狂するな。ヒステリックな女はみっともないぞ」

 彼は襟元を整え、もう私を見ようともしなかった。

「感情を整理してから戻ってこい。俺の顔に泥を塗るなよ」

 発狂?

 愛して八年、結婚して三年。創業から支えてきた私に、最後にかける言葉がそれ?

 遠ざかる男の背中を見つめ、私は乾いた笑い声を漏らした。

 中田池と入れ替わるように、村木由紀菜が中から現れ、私の退路を塞ぐように立ちふさがった。

 彼女は三百万は下らないオートクチュールのドレスを身に纏い、私を頭のてっぺんから足の先まで品定めすると、極めて軽蔑的な視線を送ってきた。

「あなたが中田様の恋人? こんな地味な女、中田様の趣味じゃないでしょ」

 村木由紀菜は声を潜め、勝利者の悪意を滲ませる。

「あたしがどうしてあんたの存在を知ってるか、知りたい?」

「昨日の夜、ホテルで中田様がシャワーを浴びてる間に、スマホの登録名を見ちゃったの」

 彼女は一拍置き、艶めかしい笑みを浮かべた。

「あとね、ベッドの上での彼は……家政婦のあなたよりずっと激しかったわよ」

 全身の血が凍りつく。氷の底へ突き落とされた気分だった。

 ……体の関係まであったのか。

 吐き気を催す暇もなく、村木由紀菜は不気味に口角を上げた。手にした赤ワインを自身の高価なドレスにぶちまけ、中田池が振り返る前に、私を思い切り突き飛ばしたのだ。

 足首に激痛が走り、私は床に叩きつけられた。冷や汗が背中を一気に濡らす。

「キャーッ! 鈴川さん! 何するの!?」

 村木由紀菜の悲鳴に、中田池が弾かれたように振り向いた。給仕を押し退けて駆け寄ってくる。彼は村木由紀菜の汚れた裾を見て舌打ちし、それからようやく、うずくまる私に目を向けた。

 私は歯を食いしばり、最後の望みを託して中田池を見上げた。

「足が……動かない」

「絨毯の上だぞ、大袈裟にするな」

 中田池は私の言葉を遮り、声を潜めた。

「由紀菜のドレスは三百万だぞ。騒ぎにするな。今すぐ謝れば、俺がなんとかしてやる」

 信じられない思いで彼を見る。

「彼女が突き飛ばしたのよ」

「自分でドレスを汚してあんたを陥れたとでも? 鈴川薫子、いつからそんな聞き分けのない女になった?」

 中田池はしゃがみ込み、私の腫れ上がった足首を一瞥もしない。ただ私の耳元で、聞き分けのない子供をあやすような猫なで声を出した。

「いいか、彼女の顔を立てろ。謝ってこの場を収めれば、来週の結婚記念日、アイスランドにオーロラを見に連れて行ってやる。チケットも手配済みだ」

 記念日を覚えていたのか。私が妻であることも。

 だが彼はそれを切り札にして、骨が折れるような痛みに耐え、浮気相手に頭を下げろと言うのだ。

「アイスランド、か……」

 私は壁に手をつき、激痛を堪えて立ち上がった。

 私が折れたと思ったのだろう。中田池が安堵の息を吐き、村木由紀菜に手を差し伸べようとしたその時。

「チケットは自分で使いなさいよ」

 私は彼を真っ直ぐに見据えた。瞳から光が消え失せているのが自分でもわかる。

「私は行かない」

 中田池が動きを止め、眉をひそめる。

「どういう意味だ? また癇癪か?」

 彼の問い詰めには答えず、あの男女を見ることもなく、一晩中抱えていたジャケットを近くのゴミ箱に放り込んだ。

「もう御免だってことよ」

 言い捨てて、私は引きずった足で背を向けた。

 背後で中田池の怒鳴り声が聞こえたが、もう何も届かない。

 ホテルの正面玄関を出て、スマホを取り出す。ピン留めされたアイコンをタップした。

 迷いも、長文の未練もない。

 数文字だけを打ち込み、送信ボタンを押す。

【中田池。離婚しましょう】

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反論しようとして、しかし私は何も言えなかった。

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私が時価総額数十億ドルのファッション帝国を裏で支配していることも、ウォール街の株価をたった一回の取引で大暴落させられることも、誰も知らない。私はその正体を、この平凡で冴えない素顔の裏にすべて隠し持っていた。

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そして私の婚約者——すでに顔を合わせているにもかかわらず、その正体を知らなかったあの男こそ、この街の誰もが名前を聞くだけで震え上がる、ビジネス界の冷酷な死神:梅原晴琉だったのだ。

ある日、彼は私の手を執り、ゆっくりと距離を詰めると、耳元で低く囁いた。

「俺のこの鼓動、今なら感じられるか?」

私は至って真面目な顔で彼の胸に手を当て、大真面目にこう返した。

「心拍数は確かに少し高めですが、非常に健康的です。心配ありませんよ」

彼は一瞬呆気にとられ、それからふっと吹き出した。その瞬間の彼の笑顔に、私の心臓もなぜかドクンと跳ねた。それは、自分自身でも説明のつかない初めての衝動だった。

だが、彼が私の真実に一歩ずつ近づくにつれ……私の心は揺らぎ始めている。自分の最後の秘密を、あとどれくらい隠し通せるのだろうか。

外されるはずのなかった仮面——。だが、あの人が執拗にその霧を剥ぎ取ろうとするとき、私は一体どこへ向かえばいいのだろう?
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「いいよ。」
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「わかった。」
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「?」