私が襲われ殺されたその時、家族は妹のためにお祝いを開いていた

私が襲われ殺されたその時、家族は妹のためにお祝いを開いていた

渡り雨 · 完結 · 17.5k 文字

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紹介

誕生日、私は数人の男に屋根裏部屋へ引きずり込まれ、蹂躏された。

両親に、兄に、そして恋人に助けを求めて電話をかけた。しかし、彼らは私が注目を引くためにそんなことをしているのだと思い込み、妹の江里花(えりか)のお祝いを台無しにしていると決めつけた。

「侑那(ゆうな)、いい加減にして。私たちは江里花のパーティーの準備で忙しいの。気を引きたいなら、他のやり方を探しなさい」

彼らが私を失望させたのは、これで百回目だった。

でも、もうその数が増えることはない。

だって、私はもう死んでいるのだから。

チャプター 1

 兄の正樹が、また私の持ち物を漁っている。

「侑那、駄々をこねてるのは分かってるんだぞ。だが、もう遊びは終わりだ。江里花が今夜のドレスに合わせるヘアピンが必要なんだよ。さっさと出てきて、お前の手からあいつに渡してやれ」

 私は正樹の腕を掴もうとした。やめて、私の物に触らないでと伝えたかった。

 けれど、手はそのまま彼をすり抜けてしまった。

 氷のような恐怖が、一瞬にして私を飲み込む。

 自分の手を見下ろす――半透明で、まるで陽の光に透ける霧のようだ。

 もう一度、正樹に触れようとした。押してみる。肩を揺さぶってみる。

 何も起きない。

 私はついに、自分が死んだという事実を受け入れた。

 目当ての物が見つからず、正樹は何度も私に電話をかけ、留守電を残した。

「いい加減にしろよ。江里花の祝いのケーキを作らなきゃいけないんだぞ。パーティーは八時開始だ。母さんが言ってたぞ、もしこのまま姿を見せなきゃ、家から追い出すってな」

 正樹の苛立ちは募るばかりで、やがてその視線が私の机に止まった。

 そこには日記帳があり、鍵は外され、ページが開かれたままになっていた。

 彼は歩み寄り、眉を顰めて私の文字を追う。

「『100回目の失望』……?」彼はページをめくった。

「『99回目の失望』……『98回目の失望』……なんだこりゃ? 誰がこんな下らない記録をつけるんだ?」

 彼が理解してくれればよかったのに。

 あの中の誰も、分かってくれればよかったのに。その数字の一つ一つが、彼らが私ではなく江里花を選んだ瞬間を意味していることを。また一つ忘れられた誕生日、また一つ無視された達成を意味していることを。

 正樹は不機嫌そうに日記を閉じると、ダイヤル錠がカチリと音を立てて勝手にロックされた。

 秘密は、葬り去られる運命にあるのだ。

 江里花の声が響いてきた。

「ママ! ヘアピンは? 正樹が取りに行ったんじゃないの?」

「探してるよ!」正樹が叫び返す。

「侑那のやつ、どこに隠れたのか分からないんだ!」

「宝石箱を見てよ。たぶんそこにあるわ」江里花が言う。

 正樹は案の定、宝石箱の中にヘアピンを見つけた。

 彼はヘアピンを手に取ると、怒り心頭で階下へ降り、両親に告げ口した。

「侑那はまた癇癪を起こしてます。部屋にもいないし、電話にも出ない」

「そういう態度にはもう心底うんざりだ」父は顔も上げずに言った。

「拗ねたいなら拗ねさせておけ。自分で思い知らせてやる必要がある」

「あの子はずっと江里花に嫉妬していたもの」母が同意する声には、失望が滲んでいた。

「むしろこのほうがいいかもしれないわね。少なくとも江里花は、お姉ちゃんの嫉妬に邪魔されず、静かにお祝いのパーティーを楽しめるんだから」

 まるで彼らの会話に呼ばれたかのように、私はふわりと江里花の部屋へと引き寄せられた。

「こんな古臭いデザイン、今日のドレスに全然合わないじゃない。ゴミはゴミ箱がお似合いよ」彼女は私のヘアピンを無理やり曲げようとしていた。

「江里花、やめて――」私は止めようとしたが、もう遅かった。

 パキッという乾いた音がして、ヘアピンが折れた。

 私の心も、一緒に砕け散った気がした。

 それは、母が私にくれた唯一のプレゼントだったのに。

 彼女は純白のベッドに腰を下ろし、私にメッセージを打ち始めた。

『ねえお姉ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど……あいつらに入られた時、どんな感じだった? 気持ちよかった? あ、ついでに言っとくけど、全部動画に撮ってあるから。一秒残らずね。だから黙って言うこと聞いたほうがいいよ。そうしないと、お姉ちゃんがどれだけ哀れなふしだら女か、みんなに見せることになるから』

 その言葉を読んで、私の心は粉々に砕け散った。

 死んでなお、江里花は私を許そうとしない。

 だが次の瞬間、彼女はそのメッセージを削除し、打ち直した。

『侑那、本当に心配してるの! お願いだから無事に帰ってきて。大好きなお姉ちゃん、ただ無事を確かめたいだけなの。妹にはお姉ちゃんが必要なんだよ!』

 送信ボタンを押すと、彼女はすぐさまスクリーンショットを撮った。自分がどれほど優しく、思いやりのある妹か、両親に見せるつもりなのだろう。

 数分もしないうちに、母が江里花の健気さと大人びた態度を褒め称える声が聞こえた。

 私は苦笑するしかなかった。

 今日は江里花がピアノコンクールで一等賞を取った記念日。家族は彼女のために盛大な祝賀会を開いている。

 けれど今日は、私の誕生日でもあった。

 キッチンで自分のためにバースデーケーキの準備をし、一緒に祝ってくれるか家族に聞こうとしていた時だった。江里花の友人を名乗る数人の男たちに、屋根裏部屋へと引きずり込まれたのだ。

 どれだけ暴れても、助けを求めて叫んでも、彼らは私を犯した。

 抵抗した拍子に、男の一人が机の角にぶつかり、額から血を流した。

 彼らは激昂し、私の頭を壁に何度も激しく打ち付けた。頭蓋骨が砕ける音がして、生温かい血が頬を伝うのを感じた。

 死の間際、私は最後の力を振り絞って家の電話にかけた。

「助けて……お願い……」私は弱々しい声で訴えた。

「侑那、いい加減にしてちょうだい。私たちは江里花のパーティーの準備で忙しいの。気を引きたいなら、別の方法にしなさい」母は電話を切った。

 父にも、正樹にも、江里花にさえかけた。

 誰もが、私が嘘をついていると思っていた。江里花の特別な日を台無しにしようとしているのだと。

 そうして私は、彼らに知られることもなく、屋根裏部屋で死んだ。

 おそらく、私の死体が腐り始め、無視できないほどの異臭を放つようになるまで、彼らが私の死に気づくことはないだろう。

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