紹介
破水し、私は伴侶の絆(メイト・ボンド)を通して必死に彼を呼んだ。しかし、私たちを繋いでいたその絆が、彼の手で断ち切られていたことに気づいた。
彼らは革鞭で私の膨らんだ腹を打ち、体内にはトリカブトを注射した。甚だしきに至っては、赤ん坊の頭が見え始めたとき、彼女を無理やり押し戻しさえしたのだ。
ただ、未亡人である義姉のジュヌヴィエーヴが今日出産を控えており、彼女の子こそが群れの跡継ぎにならなければならないという、それだけの理由で。
私は血まみれで地下牢から這い出したが、戸口で彼に阻まれた。
彼の足元に跪き、ズボンの裾を掴んで哀願する。「あの子に罪はありません。どうか、この子を産ませてください……」
彼は嫌悪に満ちた顔で私を振り払った。「ジュヌヴィエーヴが産み終えるまで待て」
やがて、夜空に花火が打ち上がり、誰もがジュヌヴィエーヴの跡継ぎ誕生を祝っていた。
私は水牢に投げ込まれ、氷のような水が少しずつ血で赤く染まっていくのを眺めながら、お腹の娘が次第に動かなくなっていくのを感じていた。
ジュヌヴィエーヴの腕の中で泣き声を上げる赤子を見て、彼はようやく私のことを思い出し、慌てて部下を地下牢へ向かわせた。
しかし、戻ってきた部下は顔面蒼白で、震える声で報告した。
「首領!奥様が…奥様は…お腹の子と共に、亡くなられました!」
チャプター 1
凍えるような石壁が背中に食い込む。妊娠三十六週目を迎えたお腹は、今にも破裂しそうなほどに膨れ上がり、胎内の子は不安を訴えるかのように激しくのた打ち回っていた。
地下牢には腐ったような黴の臭いが充満し、壁から滲み出した雫が一つ、また一つと髪を濡らす。その冷たさは、骨の髄まで突き刺さるようだった。
「カスパ……」
震える唇で、私は狼の伴侶だけが持つ精神の絆(メイト・ボンド)を通じて夫の名を呼ぶ。
「お願い、もう産まれるの……」
返ってきたのは、死ごとき静寂だけ。
いや、違う。絆が断ち切られたのだ!
信じがたい現実だった。互いの感情を分かち合うはずの命の絆を、彼は自らの手で切り捨てたのだ。
突如、下腹部を襲った激痛。まるで焼けた火箸で内臓を直接引き裂かれているかのようだ。恐怖に駆られて視線を落とすと、スカートの裾がぐっしょりと濡れている。
破水したんだ!
「誰か! 誰かいないの! 助けて!」私は力の限り叫んだ。
「産まれる! 赤ちゃんが産まれちゃうの!」
それでも、闇は沈黙したままだ。
再び、身を引き裂くような痛みが走る。苦痛に耐えきれず、呻き声が漏れた。子供は待ってくれない。この世界に出ようと必死に足掻いている。
「カスパ! お願い、聞いて! あなたの子供なのよ! 私たちの子供じゃない!」最後の力を振り絞り、私は絶叫した。
その時、廊下に足音が響いた。私は藁にもすがる思いで顔を上げる。
階段を降りてきたのはカシウス。カスパが最も信頼を置く隊長の一人だ。だが、その瞳には見たこともない陰湿な光が宿り、口元には残忍な笑みが浮かんでいた。
「カシウス! よかった、早くカスパに連絡して! 産まれそうなの!」震える手を彼に伸ばす。
「急いで、もう時間がないの!」
しかし彼は動こうともせず、檻の中の哀れな虫でも眺めるように、面白がって私を見下ろしている。
「お願い!」私は跪かんばかりに懇願した。
「赤ちゃんが、もう待てないの!」
「チッチッチッ、本当に惨めだねえ」カシウスは冷笑しながら首を振った。
「上の階では今頃、ジュヌヴィエーヴ様が最高級の医療チームに囲まれて優雅にお過ごしだよ。我らがゼファー・パックの正統なる後継者を産むためにね」
「で、お前のガキだって?」カシウスは鼻で笑った。
「お前みたいな素性の知れない女が生んだところで何になる。ジュヌヴィエーヴ様はタイガ・パックの首領の娘だ。彼女が生む子こそが、二大狼族同盟の象徴となる。わかるか? お前の存在自体が、最初から間違いだったんだよ」
そうか。私が信じていた愛は、私一人だけの独り善がりだったのか。
「お願い……」私は鉄格子を掴む。指の関節が白くなるほど強く。
「私がどうなってもいい、でもこの子は無実よ……産ませて、お願いだから……」
カシウスはしばらく私をじっと見つめていたが、やがてポケットから携帯を取り出した。
「まあいい。徹底的に諦めさせてやるよ」
コール音はすぐに止み、カスパの聞き慣れた、けれど酷く冷淡な声が響いた。
「どうした」
「首領、あの女が産気づいたようです。随分と苦しんでおいでですよ」カシウスの声には、隠しきれない嗜虐的な色が混じっていた。
電話の向こうで数秒の沈黙が流れる。心臓が止まりそうだった。もしかしたら、彼にもまだ人の心が……。
「カスパ……」私は消え入りそうな声で呼んだ。
「私よ……お願い、私たちの赤ちゃんを助けて……」
その時、受話器から別の声が聞こえてきた。鳥肌が立つほど甘ったるく、嬌態を帯びた声。
「ダーリン、お医者様が順調だって! 赤ちゃんも元気よ! それに全然痛くないの。ねえ、私、苺のショートケーキが食べたいわ。いいでしょ?」
それは、ジュヌヴィエーヴの声だった。
頭から氷水を浴びせられたような衝撃。現実の残酷さを、私は嫌というほど思い知らされた。彼女は最高の環境でケーキをねだり、私は日の当たらない地下牢で野良犬のように打ち捨てられている。
電話越しの声は、さらに冷たさを増した。
「あいつは演技をしているだけだ。騙されるな、計画通りに進めろ。それと、あまり大きな声を出させるな。ジュヌヴィエーヴの出産に障る」
「嘘よ! カスパ、そんなことしないで!」私は半狂乱で叫んだ。
「演技なんかじゃない! 本当に産まれるの!」
だが、通話は無情にも切断された。
カシウスは携帯をしまうと、その笑みを一層深く、残忍なものへと変えた。
「聞こえただろう? 首領の命令は絶対だ。計画通りにする。看護師が来て分娩遅延剤を打つまでの間、さっき騒ぎ立てた分のツケを払ってもらおうか」
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「どうせ俺から離れられないだろう」
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「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」
初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。
「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」
「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。
「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」













