紹介
一方で、大胆で向こう見ずなキャロラインは、姉妹が受ける栄誉をしばしば妬んでいた。
刻印の儀の夜、欲情に呑まれ、酒に酔いしれていたマイケルは取り違え、カミラではなくキャロラインと一夜を共にしてしまう。そして刻印は、誤ってキャロラインの身に刻まれた。
パックの誰もが、キャロラインこそが彼の真の伴侶なのだと信じた。カミラは仲間たちの前で辱めを受け――婚約は破談となり、居場所は双子の妹に奪われたのだ。
裏切られ、見捨てられたと感じたカミラは、禁じられた森へと逃げ込み、疲労と絶望に押し潰されるようにして、その場に崩れ落ちた。
チャプター 1
婚約
カミラ視点
父は私たち――双子の妹と私――を居間に呼びつけた。大事な知らせがある、と。
それから、私たちは待った。
部屋の空気は、何かが起こるのを今か今かと待ち構える緊張に満ちていた。キャロラインと私は古い木の長椅子に肩を並べて座り、背筋をこわばらせた。聞こえるのは、ランタンの火がぱちぱちと弾ける音だけだった。
キャロラインは苛立たしげに、長い指で太腿をとんとん叩く。私は動けずにいた。胸の奥がざわつき、目の前のランタンの炎がゆらゆら踊るのを見つめるしかない。
私たちは同じ顔をしている。けれど彼女が燃えさかる松明なら、私はその下に潜む静かな水だ。違いは、夜と昼ほどにも鮮やかだった。
扉が開き、空気がふっと揺れた。父――ジャック。敬われる戦士であり、アルファ・マイケルの副官でもある男――が部屋へ入ってきた。群れを率いてきた幾十年という歳月が、その立ち姿に刻まれている。
銀の髪はきちんと後ろへ梳かれていた。年齢は少しずつ顔に影を落としつつも、眼差しは昔と変わらず揺るがない。
父は背後で扉を閉め、咳払いをした。
「二人とも、立派な美しい娘に育ったな」低く落ち着いた声で、父は言った。「お前たちがこんな娘になったことを、父は誇りに思う」
息が詰まった。これは、ただの褒め言葉ではない。
父の視線が、まっすぐ私に向けられる。
「アルファ・マイケルが決めた。前回の満月の集いのあと、彼は私のところへ個人的に来てな……お前の手を求めた、カミラ」
心臓が止まったみたいだった。キャロラインが、信じられないという顔で私を見た。
瞬きをする。世界が狭まり、耳の奥でどくどくと血が鳴るのだけが大きくなる。「……私の?」
「そうだ」父はうなずいた。「お前の立ち居振る舞いを見てきた――落ち着きがあり、忠実で、賢い。彼は、お前なら彼の隣に立つのにふさわしいルナになると考えている」
キャロラインの息を呑む音は、隠しようもなかった。彼女は勢いよく立ち上がる。
「何かの間違いよ」早口で言う。「マイケルと私には、ずっと繋がりがあった。私――彼、私にちょっかい出してくるじゃない。みんな見てるわ」
父は彼女のほうへ向き直り、眉をひそめた。「彼は多くに愛想を振りまく。だが望んでいるのはカミラだ。彼の言葉は絶対だ」
耳の中が空洞みたいに鳴った。口を開いたのに、言葉が出ない。膝の上で指が震える。こんな……こんなこと、想像もしていなかった。私はアルファ・マイケルを敬っていた。強く、年齢以上に賢く、未来の統率者にふさわしい魅力がある。
いつかルナになれたら――そう夢見たことはある。だが、こんなに早く、しかもこんな形で訪れるなんて、信じたことはなかった。
キャロラインの緑の瞳が私に向き、燃えるように鋭くなる。「知ってたの?」
「いいえ」私は正直に囁いた。けれど、その真実はあまりに頼りない響きを伴った。
彼女は鼻で笑う。「そうでしょうね。あんたはいつも、黙ってお行儀よく座ってるだけで、世界のほうから差し出してくるんだものね?」
肩がびくりと跳ねた。
「もういい」父が鋭く言い放つ。「これは名誉だ、カミラ。アルファ・マイケルの正式な発表は明日の夜、集会堂で行われる。備えておけ」
議論の余地はなかった。キャロラインは最後に、焼けつくような視線を私へ投げつけると、つかつかと部屋を出ていった。
私は座ったまま動けなかった。胸の鼓動は遠い太鼓の律動みたいに響く。これは恐怖なのか……それとも、別の何かなのか。
翌日、群れは興奮に沸き立った。訓練場でも市場でも、私の背後にひそひそ声がついてくる。憧れの眼差しを向ける者もいれば、妬みを隠さない者もいた。
私はすべてを頭から追い払い、代わりに自分を待つ儀式のことだけに意識を集中させようとした。
年長の女たちの手によって、私は月光そのもののようにきらめく、揺れるように流れる白いドレスをまとわされた。肩から腕にかけて淡い銀の紋様が描かれ、髪には小さな珠がいくつも編み込まれていく。
仕上がったところで鏡をのぞき込み、そこに映る女が自分だとはほとんど信じられなかった――まるでルナそのものだ。
けれど胸の奥では、怯えた小さな少女のままだった。
儀式は大広間で執り行われた。代々、群れの儀礼が行われてきた、円形で屋根の開いた建物。月が真上にかかり、じっとこちらを見下ろしている。
アルファのマイケルは広間の中央に立っていた。銀糸の刺繍が施された儀礼用の黒衣に身を包んで。
父の腕にすがるようにして歩み寄る私を、彼の視線が捕らえた。承認の色を含んだ、熱く、深い所有の眼差し。
満足げで、誇らしげだった。まるで私が戦利品であるかのように。
並んで立つと、長が儀式を始めた。詠唱はほとんど耳に入らない。意識がふわりと浮いて、現実離れした感覚と、その意味の重さのあいだに引き裂かれていた。
明日、私は印を刻まれる。
私は彼のものになる。
印づけの儀は神聖だ。首筋への噛み痕が魂を結び、死でさえ断ち切れない絆となる。ひとたび終えれば、後戻りはできない。
長が最後の祝詞を述べる頃、マイケルが身を寄せ、私の髪をそっとかき分けた。
「息をのむほど美しい」彼は私の耳元へ囁いた。「早く、おまえを俺のものにしたい」
その声音に、肌がきゅっと強張った。飢えがあるのは確かだ――だがそれだけではない。傲慢さ。所有欲。私は喉を鳴らすように唾をのみ込み、どう答えていいかわからなかった。
長が儀式の完了を宣言すると、群衆がどっと歓声を上げた。マイケルの手が私の手を握り締める。強く、逃げ場のない力で。彼は繋いだ手を高く掲げた。新たな拍手が爆発し、大広間の石そのものが震えるほどだった。
彼に導かれ、祝祭に沸く群れの中心へ踏み込む。周囲の顔は滲み――大きく広がる笑み、好奇心にきらめく目。マイケルの肩を叩こうと手が伸び、私には祝福の言葉が次々と向けられる。私は痺れたような笑みと、上品に見えることを願いながらの小さな頷きで応じた。
マイケルは差し出される杯を片っ端からあおった。笑い声は朗らかに響き、誇りは隠しようもないほど露わだ。「俺の完璧なルナに!」彼は何度も何度もそう叫び、私を引き寄せた。
私はただ、そのすべての中を漂っていた。笑い声も音楽も、まるで水の底で聞いているみたいにくぐもって遠い。
夜が更け、騒ぎが次第に眠たげな熱へ変わっていく頃、ようやくマイケルは私を解放した。酒と満足で目がとろんとしている。彼が顔を寄せ、蜜酒の匂いを含んだ温かな息が肌を撫でた。「今夜までだ、俺の美しいルナ」彼は囁いた。「行け。俺のために準備しろ。迎えに行く」
彼は私の額に、所有を告げる最後の口づけを落とした。次の瞬間には、部下の戦士たちの一団に囲まれて連れ去られていく。彼らの喧しい声――明日の印づけの儀の話題――が夜闇へと流れていった。
年長の女たちは私をアルファの居室へ導き、夜に咲く花の香りを移した水で身体を清めた。私は人形のように動き、魂だけがどこか遠くに切り離されたようだった。
ようやく一人になった。印まで、あと数時間。絆まで、あと数時間。彼が来るまで、あと数時間。
けれど、そこからすべてが狂い始めた。
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「夏川紅蓮は地味で野暮ったい田舎者だ」と。
何を隠そう、彼女は無数の隠された顔を持つ存在。
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そして、暗部を統べる首領さえも——彼女なのだ。
そんな折、頂点に君臨する名門の若様が、彼女をそっと腕のなかに抱き寄せた。
「誰が彼女を田舎くさい地味女だと言った? 彼女こそ、俺・諏訪淳行の婚約者だ」
紅蓮が流し目をひとつ送る。
「婚約、破棄しなくていいの?」
「しない」
彼が長いあいだ追い求めてきた決して手の届かない高嶺の花こそが、いま腕のなかにいる婚約者なのだ。
解消などありえない——この婚約は、死んでも解消しない。
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。
私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。
「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。
「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」
初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。
「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
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「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。
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私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる
ところが、その兄が乗ってきたのはトラクターだった。
ガタガタと揺れるトラクターがたどり着いた先は、まるで古城のような大邸宅。そこで私は思い知る。本当の家族のもとに引き取られた私は、貧しくなるどころか、前よりずっと裕福になっていたのだ。
……だが、ちょっと待ってほしい。なぜ私には突然、婚約者というものが存在するのか。しかもその相手は、私の大学の教授だという。誰か、説明してくれないだろうか。
妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。













