紹介
受話器の向こうから聞こえてきたのは、言葉ではなく、獣のような、絶望的な泣き叫ぶ声だった。
桜木町に住む、世間体の良いある夫婦から「娘が死んだ」と通報があった。しかし、警官がその家のドアをくぐった瞬間、目の前に広がっていた光景は、経験豊富なベテラン警部でさえその場に崩れ落ち、嘔吐してしまうほど凄惨なものだった――。
彼らの36歳になる娘は、すでにソファと「一体化」していたのだ。
彼女の体は、腐敗したソファのスポンジ、排泄物、そして蠢くうじむしとドロドロに混ざり合っていた。皮膚はひび割れた革のソファにへばりついている。彼女の胃の中には、ソファの詰め物と自身の糞便が詰まっていた。体重はわずか29キロしかなかった。
泣き崩れる両親はこう説明した。「娘は重度の自閉症で……誰にも体を触らせようとしなかったんです……」
しかし、近隣住民の証言は全く異なるものだった。この12年間、誰もその娘の姿を見たことがないというのだ。
その後、捜査員はソファの下からあるものを発見した。つい最近使われたばかりの、清拭シートだった。
誰かが彼女の腐敗した体のそばにしゃがみ込み、少しずつ、丹念に彼女の体を拭き清めていたのだ。それも、何日にもわたって。
だが、このような地獄のような光景の中で、一体誰がそこまで冷静でいられたというのか?
それは悲痛ゆえの行動だったのか――それとも、罪悪感からだったのか?
チャプター 1
「はい、こちら警察です。どうされましたか?」
受話器越しに聞こえてきたのは、言葉ではなかった。それは、むせび泣くような生々しい嗚咽だった。
「娘が――」途切れ途切れで、まともな言葉になっていない。
「息をしていないんです……お願い……助けて……」
「奥さん、ご住所は?」
「楓通り二丁目十七番……桜木町……お願い、早く……」
その後、彼女は完全に泣き崩れ、呼吸もままならないほど激しく嗚咽し始めた。
神崎涼はパトカーの助手席に座り、通信指令室が救急車を手配し、詳細を確認するのを聞いていた。無線からはまだあの女性の泣き声が響いており、そのあまりの悲痛さに、車内の空気までが重く感じられた。
「高橋さんのところも気の毒にな」運転席の松本浩巡査部長がサイレンを切りながら言った。
「健一さんはロータリークラブの会長で、静子さんは裁判所勤めだ。娘さんは何年も前から病気でな――ずっと寝たきりだったはずだ」
涼は何も答えなかった。警察官になって三ヶ月、彼はまだベテラン刑事たちのように、感情を切り離して仕事に向き合う術を身につけてはいなかった。
パトカーは、手入れの行き届いた芝生に陽光が斜めに差し込む、まるで雑誌から抜け出してきたかのような住宅街を通り抜けた。二丁目十七番地は、ポーチに花が咲き乱れる、白いヴィクトリア調の瀟洒な家だった。
あたりは、不気味なほど静まり返っていた。
玄関先では、高橋健一が待っていた。カシミヤのカーディガンという部屋着姿で、髪は乱れ、ひどく狼狽している様子だった。パトカーを見るなり、彼は半ば走り、半ばつまずくようにしてこちらへ向かってきた。
「お巡りさん――ああ、来てくださってよかった――」その声はひび割れていた。
「恵が――娘が――」
彼は言葉を継げず、目元を拭った。
松本が彼を支えるように言った。
「大丈夫ですよ、高橋さん。救急車もすぐ後ろから来ています」
健一は頷いたが、その足取りは覚束なく、今にも倒れそうだった。彼に案内されて玄関ホールを抜けると、震える手でリビングのドアノブを回した。
「中に静子が……妻は……すっかり取り乱してしまって……」
部屋の中から、くぐもった泣き声が漏れ聞こえてきた。
涼が足を踏み入れると、絨毯の上にうずくまる中年女性の姿があった。両手で顔を覆い、体を丸く縮こまらせている。全身を震わせて嗚咽し、指の隙間から悲痛な声が漏れていた。
「静子……」健一自身も声を震わせながら、妻に歩み寄った。
「医者からも言われていただろう……時間の問題だって……」
「違うわ――私のせいよ――」静子が弾かれたように顔を上げた。涙に濡れた顔は、目も開けられないほど腫れ上がっている。
「私が出かけたりしなければ――あの子を置いていかなければ――恵、ごめんね、本当にごめんなさい――」
彼女はそれ以上言葉を続けられず、ガタガタと全身を震わせた。健一も彼女のそばに膝をついて抱き寄せ、二人はすがるように身を寄せ合った。
涼は傍らに立ち尽くし、胸が締め付けられるのを感じていた。
松本が静かに尋ねた。
「娘さんはどちらに?」
健一は真っ赤に充血した目を上げ、リビングの中央を指差した。
「あそこです……あそこに座ってテレビを見るのが好きで……毎日あそこで……」
彼は最後まで言い切れず、再びうなだれて肩を震わせた。
涼は彼の指差した方向へ視線を向けた。
リビングは塵一つなく片付いていた。床から天井まである大きな窓から陽光が降り注ぎ、シミ一つないペルシャ絨毯を照らしている。マントルピースの上には家族写真が飾られていた。テレビはつけっぱなしになっており、子供向けのアニメが流れている。
部屋の中央には、ベージュのレザーソファが置かれていた。
そのソファに、一人の女がドアに背を向けて座っていた。微動だにしない。
「動かすのが怖かったんです」静子が涙声で震えながら言った。
「お医者様が……骨がとても脆くなっているからと……傷つけてしまうんじゃないかって……」
「それで正解ですよ」と松本が応じた。
涼はゆっくりと近づいていった。
部屋の中には微かな匂いが漂っていた。強烈ではないが、どこか奇妙な――芳香剤のまとわりつくような甘い香りが、何か別の、淀んだ不穏な臭いを誤魔化そうとしているかのようだった。
「普段から、この階にいらっしゃったんですか?」涼はできるだけ穏やかな声で尋ねた。
「ええ……」健一の声はまだ震えていた。
「恵は二階の自分の部屋を嫌がって……ここが好きだったんです。テレビをつけておくのが好きで……だから、好きなようにさせて……」
「昨日出かけた時は元気だったんです、本当に元気だったのよ」静子が突然口を挟んだ。
「今日の午後帰ってきて、お昼ご飯にしようって声をかけたら……いつもみたいに座っていたのに、返事がなくて、それで――」
彼女は言葉を詰まらせ、夫の肩に顔を埋めた。
健一は妻をきつく抱きしめた。
「あの子の病気には……私たちも、できる限りのことはしたんです……」
涼はソファの横へと回り込んだ。女は大きめのTシャツを着ており、生気のない乱れた髪を垂らし、頭をわずかに前へ傾け、テレビの方へ顔を向けていた。この角度から見ると、ただ眠っているだけのように見える。
彼はさらに一歩踏み出した。
匂いが強くなった。鼻を突くほどではないが、思わず後ずさりしたくなるような臭いだ。
「ああ、恵……」静子の泣き声が再び大きくなった。
「本当にごめんなさい……」
涼は深呼吸をして、ソファの正面へと回った。
そして、見てしまった。
周囲のすべてが遠のいていく。
陽光は変わらず絨毯に温かな光だまりを作っていたが、涼の背筋には氷のような悪寒が走った。
これは、たった今死んだばかりの遺体ではない。
到底、そんなものではなかった。
松本が隣にやって来た。ベテランの巡査部長の呼吸が急に荒くなり、反射的に涼の腕を掴むと、その指がぎゅっと食い込んだ。
「なんてことだ……」松本が息を呑んだ。
テレビの中では、アニメのキャラクターたちが陽気に歌っている。
涼は何かを言おうとし、動こうとしたが、体が言うことを聞かなかった。ただ目の前の惨状を見つめることしかできず、一つの考えだけが頭の中でガンガンと鳴り響いていた。
これは事故じゃない。
絶対に、事故なんかじゃない。
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私は静かに頷いた。
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「消えろ」
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