彼女のために、私の狼は砕かれた

彼女のために、私の狼は砕かれた

渡り雨 · 完結 · 18.6k 文字

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紹介

私の群れの『ゴールデンガール』――義理の妹であるロザリーが、失踪した。

私の狼が覚醒するはずだった、十八歳の誕生日。その日、私は両親によって魔女の前に引きずり出された。

「あの子に何をしたか、白状しろ」

いいだろう。見せてやればいい。

私が家に帰った日、私に薬を盛ったのが誰か。私が血を流している間に、その手柄を横取りしたのが誰か。そして、微笑みながら私の破滅を企んでいたのが、一体誰だったのかを。

この三年間、彼らは私ではなく、大事な大事なロザリーを選んできた。

真実が知りたい?

ならば、その真実で喉を詰まらせてやる。

チャプター 1

 十八歳の誕生日を迎えたその日、私は家族の手によって魔女の元へと引きずり出された。

 祝いのためではない。狼の覚醒を見届けるためでもない。

 記憶を抽出するためだ。

 冷たい鉄の手錠が手首と足首に食い込む。頭蓋を締め付けるのは奇妙な金属の輪。そこから伸びる脈打つような銀のワイヤーが、魔女の祭壇へと繋がっている。

 ロザリーが姿を消して五日が経つ。家族は皆、私が彼女をどこかに隠したのだと信じて疑わない。

「最後にもう一度だけ聞く」

 父の声が薄暗い部屋を切り裂いた。

「あいつはどこだ?」

 アラリック・ヴァレン。ヴァレン・パックのアルファであり、三つの領地の中で最も強大な狼。

 だが今、彼はまるで靴の裏にこびりついた汚物でも見るような目で私を見下ろしている。

 彼は革張りの日記帳を顔の前に突きつけた。ロザリーの日記だ。

「読め」

 私が動こうとしないと、彼は代読した。

『イゾルデに殺されるかもしれない。あの子はどんどんおかしくなってる。何をされるか怖くてたまらない』

 彼は日記を私の足元に放り投げた。

 その日記なら見たことがある。中に綴られた毒々しい言葉の一つ一つまで、私は知っていた。

「私はやってな……」

「五日前、ロザリーからマインドリンクが届いた」彼は顎を強張らせる。

「『助けて、お父様』と。それきりだ。気配を感じ取ることも、探すこともできない」

 彼の目が私を射抜く。

「お前が何かをしたんだ。お前があいつを隠した。吐け、どこにやった」

 笑いたかった。

 ロザリーの計画は完璧だ。日記、マインドリンク、失踪。

 彼女が仕掛けた罠に、私はまんまと嵌まったのだ。

「どこにいるかなんて知らない」私は言った。

「もう百回も言ったけど……」

「嘘つきが」

 兄のカスピアンが動いたのは、私が反応するより早かった。平手が激しく頬を打つ。床に倒れ込む間もなく、口の中に鉄の味が広がった。

「この田舎者のゴミめ」彼は私の髪を掴んで引きずり起こす。

「まだ無実を装うつもりか?」

 口の中が血で溢れる。舌を噛んでしまったらしい。

 カスピアンは一度だって私を愛したことなどない。私がここに戻ってきたあの日から、ずっと。

 三年前、両親はようやく私を見つけ出した——幼い頃に誘拐され、人間の世界で育てられた本当の娘を。狼の群れに連れ戻された私を、ロザリーは両手を広げて歓迎してくれた。

 少なくとも、周囲の目にはそう映っていただろう。

「三年だ」カスピアンは指折り数えて言った。

「三年の間、お前がロザリーの人生を惨めにするのをずっと見てきた。初日に俺の車で粗相をしやがって、助けようとしたロザリーに怒鳴り散らしただろう。母さんが怪我をした時、ロザリーは徹夜で看病したのにお前は死人のように眠り呆けていた。そして今——」

 彼は私の顎を掴み、無理やり視線を合わせさせた。

「今、あいつがいなくなった。お前のせいだ」

 弁解なら何度も試みた。何度も、何度も。

 けれど、誰も信じてはくれなかった。

「カスピアン」母の声は細く、疲れ切っていた。

「あまり痛めつけないで。抽出に障るかもしれないわ」

 母は歩み寄ると、袖で私の唇の血を拭った。その手つきは優しい。

 けれど、その目は泣き腫らして赤くなっている。ロザリーのために。

「あの子がどこにいるか、ただ教えてくれればいいの」母は囁く。

「お願い、イゾルデ。もう五日も眠れていないの。食事も喉を通らない。もしあの子に何かあったら……」

 言葉が詰まる。

 私は母を見つめた。

 これほど長く関心を向けられたのは、数ヶ月ぶりのことだ。

「知りません」私は静かに答えた。

 父は重く息を吐き出した。

「いいだろう」彼は闇に控える魔女に向き直る。

「抽出を始めろ。こいつが何を隠しているのか暴いてやる」

 魔女が前に進み出た。

「ヴァレン・アルファ」その声は枯れ葉のように乾いている。

「警告しておきます。この娘は今日で十八歳になったばかり。狼はまだ目覚めていません。精神が……非常に脆い」

「それがどうした?」

「記憶の抽出には安定した精神基盤が必要です。彼女のような——未覚醒で不安定な状態では、限界があります」魔女は言葉を切った。

「三回。せいぜい四回まででしょう。それ以上行えば、完全に記憶を失う恐れがある。最悪の場合、狼そのものを失うかもしれません」

「こいつの狼などどうでもいい」父の声は氷のように冷徹だった。

「私が求めているのは、娘を見つけ出すことだけだ」

 魔女は躊躇った。

「損傷は永続的なものになる可能性があります。彼女は——」

「聞こえなかったのか?」

 沈黙。

「いいえ、アルファ」

 魔女が私の方を向く。白濁した瞳は、私を通り越して心の中まで見透かしているようだった。

「力を抜いて、お嬢さん。抵抗すれば苦しみが増すだけだよ」

 抵抗などしない。

 何の意味がある?

 ロザリーの勝ちだ。いつだって彼女が勝つのだ。

 魔女が詠唱を始めた。金属の輪が頭蓋の上で熱を帯びていく。

「もう一つだけ」突然、父が口を開いた。歩み寄り、私を見下ろす。

「もし協力するなら——ロザリーの居場所を言うなら——金をやる。望むだけの額をな。それを持って人間の世界へ帰れ。二度と互いに関わることもない」

 人間の世界。

 全身の筋肉が強張った。視界の端が白く飛ぶ。

「嫌」勝手に言葉が漏れ出た。

「あそこは嫌。お願い。どこでもいい、あそこだけは——」

「見たか?」カスピアンが嘲笑う。

「ここで悲劇のヒロイン気取りでいる方が、俺たちを助けるよりマシだってよ。強欲な——」

「もういい」父が手を振った。

「始めろ」

 魔女の詠唱が高まる。私と祭壇を繋ぐ銀の糸が発光した。

 激痛が頭蓋を貫く。

 そして——

 世界が霧散した。

 色彩が混ざり合い、音が歪む。

 視界が定まると、私は車の中にいた。滑らかな黒塗りのセダンだ。

 カスピアンの車だ。

 隣には、私の手を握り、輝くような笑顔を浮かべる金髪の少女。瞳が煌めいている。

 ロザリーだ。

「お帰りなさい、お姉ちゃん!」彼女は明るく弾んだ声で言った。

「特別なものを作ってきたの。ウェルカム・ドリンクよ! 午前中ずっとかかって作ったんだから。飲んで、ねえ、飲んでみて!」

 私は、過去の自分がそのカップを受け取るのをただ見つめていた。

 微笑み、感謝し、信じ切っている私。

 その先に何が起こるか、痛いほど知っているというのに。

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