紹介
妊娠検査薬に、二本のピンクの線が浮かび上がるまでは。
彼は、私の義兄。
触れてはいけない禁断の領域で、決して私のものにはならないと、そう思っていた人。
あるメッセージを見て、私はただの酔った彼にとっての「代わり」だったのだと悟った時、この秘密と共に姿を消そうと決意した。
けれど、嵐の午後。
クリニックへ向かう私の道を、彼が遮ったあの日。
通りを行く全ての人々に、彼はそう叫んだ。「これは俺の子だ! 彼女は俺が愛する女性なんだ!」と。
その瞬間、私は知ったのだ。
チャプター 1
屋根裏部屋の天窓からナイフみたいに陽光が差し込んできて、その光に目を刺されるようにして、私は無理やり目を覚まさせられた。頭はトラックにでも轢かれたみたいにガンガンして、体中の関節が悲鳴を上げている。
身を起こそうとすると、腰に鋭い痛みが走って、それで完全に意識が覚醒した。
ここ、どこ……?
強く瞬きして、焦点を合わせようとする。この部屋……見覚えがある。天井から吊るされた音響機材、隅に積まれたレコードの山、それにあの使い古されたギター。ここは、悟の屋根裏部屋だ。
うそ、そんな……。
自分を見下ろす。最悪だ、私が着ているのはオーバーサイズのメンズTシャツ、悟のTシャツだ。私のワンピースとブラは床に散らばっていて、その周りには空のビール瓶や昨夜のパーティーの残骸が転がっている。
断片的な記憶が、洪水みたいに蘇ってくる。昨夜のハウスライブ……飲みすぎたこと……それから……。
悟の手が私の頬に触れて、彼の唇が私の唇に重なって、そして私が……彼の腕の中で「お兄ちゃん」って喘いでいた、あの瞬間がフラッシュバックする。
「クソッ」吐き捨てるように呟くと、世界がぐらぐらと揺れるのを感じた。
私、何しちゃったの? いったい、何てことを……。
もっと詳しく思い出そうとしても、脳裏に浮かぶのはスナップ写真みたいな光景だけ。熱いキス、絡み合う手足、今思い出しても顔から火が出そうなほど恥ずかしい感触。
最初にキスしたのは私の方だったこと、今すぐ穴を掘って死にたくなるようなことを口走ったことも思い出した。
舞、あんたのバカ! 彼は兄さんなんだよ!
もっとも、悟は義理の兄だけど、私たちはもう四年も一緒に暮らしてきた。私にとっては、本当の兄さんみたいな存在だった。なのに……なのに今、私たちの間にはこんなことが起きてしまった。
音を立てないように、そっとベッドから滑り降りる。まだ足元がおぼつかない、昨夜のお酒がまだ抜けきっていないのは明らかだ。床から自分の服を拾おうと屈んだその時、悟が不意に寝返りを打った。
私は息を詰めて、凍りついた。
着替えを続けようとしたまさにその瞬間、悟の腕が伸びてきて、私をベッドに引き戻した。
「やだ……」小さく抵抗したけれど、彼は私よりずっと力が強い。
彼の目は半分しか開いていなくて、まだ完全に起きてはいないのが分かった。そして、ほとんど無意識に私を抱きしめる。彼の胸は温かくて硬く、心臓の鼓動と体温が伝わってくる。一瞬、その温もりに溶けてしまいそうになった。
「ベイビー、もうちょっと寝てなよ……」彼が耳元で、寝起きの掠れた声で囁いた。
心臓が胸から飛び出しそうになった。ベイビー? 今、ベイビーって言った?
でも、すぐに現実に引き戻される。『私を他の誰かと間違えてる。きっと、自分の彼女だと思ってるんだ』
「悟……」彼の名前を囁き、身を捩って離れようとする。
「ん……?」彼はさらに強く抱きしめて、私の髪に顔をうずめた。「行くなよ、舞……まだ時間あるだろ……」
私は完全に硬直した。うそ!彼……彼は私が舞だって分かってる? 私を抱きしめているのが誰か、分かってるってこと?
私の名前を、呼んだ。
めまいがした。二日酔いのせいなのか、それともこの事実のせいなのか分からない。もし彼が私だと分かっていたのなら、昨夜の……昨夜のすべては、私たち二人とも意識がある中で起こったことなの?
でも、彼はまた寝言を話し始めた。「言わなきゃ……もっと早く、この気持ちを伝えるべきだった……」
そっと彼の腕から抜け出す。今彼が何を言っていようと、本当に目が覚めたらすべてが変わってしまう。昨夜のことを、気持ち悪がって後悔するに決まってる。
彼が起きて、まだ私がここにいるのを見つけるわけにはいかない。そんなことになったら、もっと気まずくなるだけだ。
ここから、出なきゃ。
神経質に震える指で、急いで服を着る。ワンピースのボタンを留めながら、ふと悟の方を見てしまった。
彼は眠りながら眉をひそめていた。隣にあった温もりが消えたのを、感じ取っているみたいだった。
「ごめんね、悟。全部、私のせいだから」
そろりそろりとドアに向かう。彼を起こしてしまうのが怖くて、一歩一歩が慎重で、計算された動きになる。ドアノブに手が触れた、ちょうどその時、ナイトスタンドの上で彼のスマホがブーンと震えた。
振り返る。悟のスマホの画面が光り、新しいメッセージが表示されていた。
見るべきじゃない。本当に、見るべきじゃないのに。でも、私の目は無意識に画面へと吸い寄せられていた。
【優奈 昨日の夜は最高だったね。次はいつ会える?】
まるで、誰かに胸を殴られたような衝撃だった。
優奈。彼には、優奈という名前の彼女がいたんだ。
『昨日の夜は最高だった?』頭がフル回転を始める。このメッセージはどういう意味? パーティーのこと? それとも……何か他のこと?
昨夜のライブにいた、あの可愛いベーシストの女の子を思い出す。彼女は一晩中、悟の周りをうろちょろしていて、二人は親しげに見えた。あの子が、優奈?
そうか。すべてが、突然はっきりと見えた。昨夜のことは、悟にとってはただの酔った上での過ちだったんだ。
彼には彼女がいて、きっと付き合っていて、そして私は……私はただの事故。本当の彼女がそばにいなかったから、酔った勢いで選んだだけの、アクシデント。
吐き気がした。二日酔いのせいじゃない。自分がしてしまったことを自覚したせいだ。私たちは兄妹としての関係を台無しにしてしまった。そして彼にとって、それはきっと、ほんの一夜の気の迷いに過ぎなかったんだ。
静かにドアを開け、そっと部屋を抜け出した。
ギシギシと音を立てる屋根裏部屋の階段を、抜き足差し足で下りていく。静まり返った家の中では、一歩一歩が雷鳴のように響いた。
古い洋館の床板が私の体重で軋み、その音のたびに顔をしかめる。誰にも聞かれずに自分の部屋にたどり着くことだけを考えていた。
この家で暮らした四年間で、私たちは本当の兄妹になった。キッチンテーブルで一緒に朝食を食べ、テレビのリモコンを巡って喧嘩し、両親の風変わりなヒッピー的決断に一緒に文句を言った。
悟はリビングルームで私にギターを教えてくれたし、私はダイニングテーブルで彼のために歌詞を書いた。私たちの関係は、純粋で、美しいものだった。
そして今、私はすべてを破壊してしまった。
二階の踊り場に着く頃には、私は決心を固めていた。何もなかったことにしよう。私たちはただ一緒に酔っぱらって、私が彼のソファで寝落ちしただけ。キスも、絡み合ったことも、顔から火が出るような感触も、全部なかったことにする。
それが最善の解決策だ。私たちの関係を守り、この家族を守り、そして私自身を守るために。
「舞?」階下のキッチンから、母親の真理奈の声が聞こえてきた。「早いのね。よく眠れた?」
しまった。階段の途中で凍りつく。自分の部屋に逃げ込む前に、彼女と顔を合わせなければならないことに気づいた。
「うん」私は声を張り上げ、普段通りに聞こえるように努めた。「ちょっとお水を飲みにね」
「淹れたてのお茶があるわよ。私はこれからヨガスタジオに行くし、健一は芸術センターで会議があるから。家はあなた一人になるわよ」
好都合だ。考えを整理して、悟が起きた時に彼と顔を合わせる準備をする時間が必要だった。
「ありがとう、ママ」私は残りの階段を急いで下り、自分の部屋に駆け込んで後ろ手にドアを閉めた。
やっとだ。安全な場所。
ドアに背中を預けて、床にずるずると座り込む。昨夜の出来事が、頭の中で再生され始めた。悟のキス、彼の指の感触、彼の腕の中での私の反応……。
やめて。忘れなさい。何もなかったふりをするの。
でも、一度起きてしまったことは、決して本当には忘れられないと分かっていた。そして、優奈のメッセージを見て、悟に対する私の気持ちが、自分が思っていたよりもずっと複雑なものだったことに気づかされた。それはただの妹としての依存心じゃない――認めるのが怖かった、一種の……恋だった。
そしてこの恋は、痛みしかもたらさない運命なのだ。
目を閉じて、心の平穏を取り戻そうとする。でも、私たちはもう戻れない一線を越えてしまったこと、そしてその一歩を踏み出したのは私の方だということを、私は知っていた。
今はただ、悟が昨夜の細かいことまで覚えていないように、そして私たちが昔の兄妹関係に戻れるようにと、祈ることしかできなかった。
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——
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彼が、私の代わりに答えた。
「――断る」













