ビジネスパートナーの出産に付き添うため、夫は妊娠九ヶ月の私をワインセラーに閉じ込め、死なせた

ビジネスパートナーの出産に付き添うため、夫は妊娠九ヶ月の私をワインセラーに閉じ込め、死なせた

渡り雨 · 完結 · 15.1k 文字

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紹介

妊娠九ヶ月、臨月も間近だというのに、夫の温井正道(ぬくい まさみち)は私をワインセラーに閉じ込め、内側から鍵をかけた。

ただ、彼の未亡人であるビジネスパートナー、松本絵美菜(まつもと えみな)も今日が出産日だという、それだけの理由で。

「お前のせいで絵美菜さんが早産しかけたんだ。ここでしっかり反省しろ」

激しい陣痛が私を襲い、あまりの痛みに生きている心地もしない。私は床に膝をついて彼に懇願した。「正道さん、お願い。本当に、もう産まれそうなの。赤ちゃんが死んじゃう!」

しかし彼は、冷たい石の階段へと私を突き飛ばし、氷のように冷え切った目で言い放った。

「嘘をつくな!お前の出産予定日は今日じゃないはずだ。注目を浴びたいがために、そんな下劣な真似までしでかすとはな」

「今夜一番大事なのは、絵美菜さんの無事だけだ。お前は自分が過ちを認めるまで、そこにいろ!」

重厚な木の扉がバタンと閉まる音と共に、私の生きたいと願う最後の希望は、完全に断ち切られた。

数時間後、正道は絵美菜が産んだばかりの息子を抱きながら、メイドに電話をかけた。

「絵美菜さんが男の子を産んだ。とても嬉しいよ。奥様を外に出してやってくれ。今日のわがままは許してやる」

しかし、電話の向こうから聞こえてきたのは、メイドの震えるような泣き声だった。

「旦那様……奥様と赤ちゃんは……もう、亡くなっています」

チャプター 1

 妊娠九ヶ月。臨月を迎えた私を、夫の正道はワインセラーに閉じ込めた。

「博美、お前は絵美菜を早産させるところだったんだ。自分の過ちをよく反省しろ」

 絵美菜。

 いつだって、絵美菜だ。

 未亡人でありながら企業の重役を務め、数百万ドル規模のM&A案件を握る彼女。正道は数ヶ月も彼女を追いかけ、花を贈り、食事に連れ出し、そのすべてはビジネスのためだと言い続けた。

 けれど私は見ていた。彼女が彼を見る目つきを。彼の腕に触れる時間が、必要以上に長いことを。そして私が気づいていないと思って浮かべる、あの密やかな笑みを。

 突然、ナイフで切り裂かれるような激痛が腹部を走り、私は息を呑んだ。

「正道!」絶望に声を震わせ、私は叫んだ。

「正道、お願い! 病院に行かせて!」

「いい加減にしろ、嘘はもうたくさんだ。お前の予定日はまだ先だろう」彼の瞳は氷のように冷え切っていた。

「お前の魂胆なんてお見通しだ。可哀想なふりをして、俺が絵美菜の世話をするのを邪魔したいだけだろう」

「正道、違うの。赤ちゃんが……産まれる、本当に産まれるのよ」

「騙そうとしても無駄だ。もうその手には乗らない」

 彼は重厚な木の扉を押し開け、暗闇へと続く狭い石階段を露わにした。

 これ以上抗議する間もなく、私は中へと突き飛ばされた。バタン、と扉が閉まる。

 カチャリと鍵がかかる無機質な音が、石室に響き渡った。

 ワインセラーは冷たく湿っていた。私は扉に背を預け、拳で叩きながら、再び襲ってきた激しい陣痛に耐えていた。

 悲鳴を上げたが、その声は虚しく石壁に跳ね返るだけだった。

 苦痛の中で、時間の感覚が曖昧になっていく。

 陣痛は波のように押し寄せ、そのたびに激しさを増していく。同時に、鼻と喉を焼くような刺激臭がセラーに充満し始めていた。

 私は壁伝いにずるずると崩れ落ちた。足にはもう、体を支える力なんて残っていない。

 赤ちゃんが降りてくるのがわかる。耐え難い圧迫感。毒を含んだような空気を吸うたびに胸が締め付けられ、視界が霞んでいく。

「お願い」頬を伝う涙と共に、私はお腹の子に囁いた。

「お願い、もう少しだけ頑張って」

 最後の力を振り絞り、石階段を這い上がる。陣痛の合間を縫って、必死にドアノブにしがみついた。

 扉はびくともしない。それでも私は諦めず、もがき続けた。こんなところで産むわけにはいかない。

 やがて、向こう側から足音が聞こえてきた。

「助けて……」かろうじて聞き取れるほどの声で呟く。

「お願い、助けて。産まれるの」

 勢いよく扉が開き、私は前のめりに倒れ込んだ――そこにいたのは学人。正道の弟だ。

 彼は私の肩を掴み、目を丸くして驚きの表情を浮かべた。

「学人」私は息を切らしながら訴える。

「よかった、神様……産まれるの、病院に行かないと」

 だが彼は私を助け起こすどころか、逆に突き飛ばした。バランスを崩した私は石階段を転がり落ち、肩を壁に強打した。乾いた音が響く。

「へえ、ちょうどよかった。お前がここにいるなら、例のワインを持ち出せる」

 学人はそう言うと、スマホを取り出し電話をかけた。

「もしもし、正道兄さん? ああ、信じられないと思うけどさ。兄貴の嫁さんが、あの1947年のヴィンテージワインを盗もうとしてるところに出くわしたんだ。ほら、合併記念のパーティー用に取っておいたやつ」

「違う……」呻くような私の声は、彼には届かない。

 スピーカーフォンから、弱々しく震える声が聞こえてきた――絵美菜だ。

「正道さん、そんなに厳しくしないで。お二人の仲が悪くなるのは見たくないわ……」

「いや、絵美菜」正道の声は確信に満ち、彼女を庇う響きがあった。

「君は優しすぎる。今日、君を怒らせた時、あいつは自分が何をしているか分かっていたはずだ。君の言う通り、あいつは気を引くためなら何だってする女だ。外に出すなよ、学人」

 電話が切れる間際、絵美菜の小さな溜息が聞こえた。

「正道さん、私心配で……妊娠中にいろんなことを抱え込むなんて……私に耐えられるかしら」

「心配いらないよ」正道の声が瞬時に甘くなる。

「俺が全て処理する。君は自分のことと、子供のことだけを考えていればいい」

 もちろんだ。

 数週間前、正道は絵美菜のために病院の特別棟を確保していた。最高の名医、最新の設備、二十四時間体制の看護。すべては彼女の出産のために用意されたものだ。

 通話が終わると、学人はスマホをポケットに突っ込み、苛立ちを隠そうともせずに私を見下ろした。私は冷たい石畳の上で、苦痛に身をよじっていた。

「最悪だ」

 彼は舌打ちし、乱暴に髪をかき上げた。

「今夜はデートの約束があったのに。こんな場所に足止めされて、お前の三文芝居を見せられる羽目になるなんてな」

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