囲った億万長者

囲った億万長者

Natalia Ruth · 完結 · 602.8k 文字

1.1k
トレンド
4.2k
閲覧数
21
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

彼はただの気晴らしのはずだった。
夫の裏切りによる胸の痛みが癒えるまで、私が囲っておける美貌の文無しモデル。
私は彼の時間を金で買い、ルールを定めた。主導権を握っているのは自分だと思い込んでいた。
だが、私のベッドにいる男は、自称していたような人物ではなかったのだ。
完璧な微笑みと罪作りな肉体の裏には、己の敵から身を潜める大富豪の素顔が隠されていた。
今や彼は私の人生に、ベッドに、そして心に深く絡みついている――
彼から離れることは、このまま傍にいるよりもずっと危険な結末を招くのかもしれない。

チャプター 1

「疲れた?」まだ情欲を色濃く残した男のハスキーな声が、彼女の耳元で囁いた。

ソフィア・ブラウンは重い瞼をこじ開けた。絹のようになめらかな赤褐色の髪が、枕の上に広がっている。

彼の動きに合わせ、彼女はどうしようもない快感に身をよじり、首を反らせて優美な喉の曲線を露わにした。

「少し休ませて」激しい情事の直後で明らかに疲れ切った様子で、彼女は掠れた声で呟いた。

ヘンリー・ウィンザーは欲望に燃える瞳で見つめながら、彼女の髪の毛をひと房もてあそび、からかうような口調で言った。「もうギブアップ? さっきは俺を引っ掻くくらい元気だったのに」

ソフィアは自分の爪がヘンリーの胸に刻んだ赤い跡をちらりと見やり、心の中で悪態をつきながら頬を染めた。

彼を囲ってから二年になるが、どういうわけか彼のスタミナは時とともに増すばかりだ。

腰が砕けそうに痛い。

ヘンリーは彼女の細い腰をしっかりと掴み、見下ろした。頭上の明かりが彼の彫りの深い顔立ちに影を落とし、まるで熱狂的な芸術家が彫り上げた傑作のように見えた。

「年も年だしね。あなたみたいに若い子には敵わないわ」ようやく息を整え、ソフィアは言った。綺麗に手入れされた爪が、気まぐれな猫のように彼の胸をじゃれるように撫でる。

ヘンリーはそのさまよう手を捕らえ、真剣な色を帯びた暗い瞳で言った。「俺の目には、あなたはいつだって若く見えるよ」

その時、ナイトテーブルに置かれたソフィアのスマートフォンが鳴った。画面に『ハニー』という連絡先名が光り、頭から氷水を浴びせられたかのように、甘い雰囲気は瞬時に打ち砕かれた。

ヘンリーの目が険しくなった。「ハニーだと? 今夜で終わりにしたいって言ったのは、こういうことか?」

「別れるんじゃないわ。この契約を終わらせるの」ソフィアは真顔で訂正した。電話を切ろうと手を伸ばしたが、ヘンリーの方が早く通話ボタンを押してしまった。

スピーカー越しに、オリバー・ミラーの苛立った声が聞こえてきた。

「ソフィア、いったい何時に帰ってくるつもりだ? 俺が待っていると知っているだろう。当てつけのつもりか?」

背景から、柔らかく華奢な女の声が割り込んできた。

「オリバー、ソフィアにもっと優しくしてあげて。そんなにきつく言わないで」

ソフィアの表情が冷たく凍りついた。

クララ・ガルシアは穏やかな口調で続けた。「ソフィア、オリバーのお祖父様がね、あなたを連れてくるようにって。いくら腹を立てているからって、お年寄りに失礼な態度はよくないわ。私たち、一晩中あなたを待っているのよ」

その口調は優しかったが、言葉の端々にはソフィアを非常識な人間として仕立て上げるような、巧妙な非難が込められていた。

オリバーは今、かつて二人の新居だった場所にいる。

ソフィアがこんなに遅くまで出歩いていることを、どういう意味で言っているのかは明白だった。

ソフィアは即座に理解し、瞳に皮肉の色を浮かべた。

二年間離れていても、クララの手口は相変わらず安っぽい。

他人の結婚をぶち壊しただけでなく、結婚式当日にオリバーをそそのかして、自分と一緒に海外へ駆け落ちさせたのだ。

彼らは後先顧みず、二年間も不倫関係に溺れていた。オリバーの祖父であるギャビン・ミラーはショックのあまり入院し、ミラー家は世間の笑いものになった。

ソフィアの声は冷たく、皮肉に満ちていた。「半日待たされたくらいで文句なの? 私は一晩中あなたを待ち続けた挙句、あなたがクララを連れて海外へ飛んだって聞かされたのよ」

オリバーの怒りが爆発した。「ソフィア、お前の芝居に付き合っている暇はないんだ! 今どこにいる? すぐに帰ってこい」

ソフィアは眉をひそめ、電話に意識を集中させていた。そのため、隣にいるヘンリーの表情がどんどん険しくなっていることには気づかなかった。

オリバーには会いたくなかったが、ギャビンのことを無視するわけにはいかなかった。

もう遅い時間だというのに、彼はまだ待っているのだ。

彼女は気を取り直して言った。「すぐに行くわ」

彼女が口を開いた瞬間、ヘンリーの手が動いた。彼は頭を下げて彼女の耳たぶを軽く甘噛みし、わざとくぐもった声を出した。「ソフィア、本当に戻るのかい? 俺の方が彼よりずっといいだろう?」

ヘンリーの声はもともと低くハスキーだったが、今は意図的にトーンを落としており、その言葉には計算された誘惑の響きがあった。

ソフィアは彼に警告の目を向け、無言で静かにするよう伝えた。

オリバーの浮気は公然の秘密だった。

彼女は被害者としての立場を保つ必要があった。もしオリバーに少しでも弱みを握られれば、彼女の優位性は失われてしまう。

オリバーは電話の向こうの声を鋭く聞き取った。彼の声色が険しくなり、問い詰めた。「男と一緒にいるのか? ソフィア、今いったいどこにいるんだ?」

「聞き間違いよ」

ソフィアは即座に電話を切り、彼にこれ以上追及する隙を与えなかった。

スマートフォンをマナーモードにして、脇に放り投げる。

ヘンリーに向き直ると、彼女は彼にまたがり、上から見下ろした。その手は彼の喉仏に置かれ、指先がゆっくりとそこをなぞっていく。

ヘンリーは息を呑んだ。

ソフィアの美しい目が細められる。

「わざとやったわね。どういうつもり? オリバーの代わりになりたいの?」

彼女はヘンリーの彫刻のように引き締まった胸の筋肉を軽く叩いた。「答えなさいよ」

ヘンリーの眼差しはさらに暗く沈み、低い声で言った。「俺の気持ちなら、最初から知っているはずだ」

「いい考えだけど、それは無理よ」ソフィアは胸の奥でわずかな未練を感じた。

何しろ、ヘンリーは完璧な相手だった。

魅力的で、素晴らしい肉体を持ち、どうすれば彼女を喜ばせられるかを熟知していた。

そうでなければ、二人の関係が二年も続くはずがなかった。

オリバーのことは軽蔑していたが、ギャビンの恩情は大切にしていた。

ブラウン家が彼女をただの駒として扱ったとき、家族の温もりを与えてくれたのはギャビンだった。

彼の体調が悪化していなければ、急いでオリバーを呼び戻すこともなかっただろう。

ソフィアが再び口を開こうとしたとき、ヘンリーが突然彼女の唇を奪い、それ以上の言葉を塞いだ。

ソフィアは心の中でため息をついた。まあいいわ。今は彼に身を任せよう。

一方、オリバーは何かおかしいという疑念を拭いきれずにいた。かすかな音だったが、確かに男の声を聞いたはずだ。

こんな時間に、ソフィアは他の男と一緒にいる!

クララは彼の表情が険しくなるのを注意深く見つめていた。「オリバー、考えすぎよ。きっとソフィアは男性のクライアントと仕事の話をしているだけだわ」

「こんな深夜にどんな仕事の話をするっていうんだ?」

オリバーは勢いよく立ち上がった。独占欲から来る怒りが彼の中で燃え上がっていた。

「もしソフィアが俺を裏切っているなら、絶対に許さない」

彼は胸に込み上げる不安を無理やり押し殺した。

ホテルの部屋では、ソフィアとヘンリーがついに情事を終えていた。

ソフィアは疲れ果てて、指一本動かせなかった。

ヘンリーは彼女を優しく抱き上げてバスルームへと運び、体を洗ってやった――それは二年間ずっと続けてきた習慣だった。

ソフィアは温かい泡風呂の中でくつろいだ。

丁寧に彼女を洗った後、彼は彼女をタオルで包み、ベッドへと運び戻してから、自分の体を洗い流した。

しかし彼が戻ってくると、ソフィアは一枚のキャッシュカードを差し出した。

「あなたは最高だったし、私をあらゆる面で満たしてくれたわ。でも、夫が帰ってきたの」彼女は静かに彼の視線を受け止めた。

「だから、これで終わりよ。このカードにはあなたの慰謝料が入っているわ」

最新チャプター

おすすめ 😍

跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

383.9k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
六年前、藤堂光瑠は身覚えのない一夜を過ごした。夫の薄井宴は「貞操観念が足りない」と激怒し、離婚届を突きつけて家から追い出した。
それから六年後——光瑠が子どもたちを連れて帰ってきた。その中に、幼い頃の自分にそっくりの少年の顔を見た瞬間、宴はすべてを悟る。あの夜の“よこしまな男”は、まさに自分自身だったのだ!
後悔と狂喜に押し流され、クールだった社長の仮面は剥がれ落ちた。今や彼は妻の元へ戻るため、ストーカーのようにまとわりつき、「今夜こそは……」とベッドの隙間をうかがう毎日。
しかし、彼女が他人と再婚すると知った時、宴の我慢は限界を超えた。式場に殴り込み、ガシャーン!と宴の席をめちゃくちゃに破壊し、宴の手を握りしめて歯ぎしりしながら咆哮する。「おい、俺という夫が、まだ生きているっていうのに……!」
周りの人々は仰天、「ええっ?!あの薄井さんが!?」
彼女を誘惑して、一夜で虜になった

彼女を誘惑して、一夜で虜になった

80.8k 閲覧数 · 連載中 · 月見光
結婚して三年——
彼は毎晩、私を抱きながらも、心はいつも“好きな人”にあった。
私は必死に「今泉夫人」としての役目を果たし、
愛のない結婚を繋ぎとめようとしていた。

けれど、妊娠がわかったあの日——
最愛の夫は私を手術台に押しつけて言った。
「小島麻央、子供とお前、どちらかしか生かせない。」
その言葉で、私の世界は雲散霧消した。粉々になった心を抱えて、私はすべてを捨てて去った。
──再会した時、
私はもう、かつての小島麻央ではなかった。
世界を驚かせるほど、美しく、強く、生まれ変わったのだ。跪く元夫が囁く。「麻央、帰ってきてくれ……」私は微笑んで答えた。「ごめんなさい。もう男には興味ないの。」その瞬間、彼は私を抱き寄せ、低く笑った。
「昨夜の君は、そうは言わなかっただろ……?」
氷の君と太陽の私

氷の君と太陽の私

94.7k 閲覧数 · 完結 · 鍋部奈
裏切られ、後悔に溺れながら死んだ私は、恐れられ冷酷な婚約者が私を救おうと身を投げる姿を見た。

運命が私を引き戻した——薬を盛られた結婚初夜、彼の腕の中で生まれ変わったのだ。これは私の二度目のチャンス。

かつて逃げ出した男こそが私の運命。彼の狂おしい愛こそが、私の最強の武器。世界が恐れる男を受け入れ、彼の姫となろう。共に、私たちを破滅させた裏切り者どもを灰燼に帰すのだ。

しかし私の突然の献身は、彼に疑念を抱かせる。心を砕いてしまった男に愛を証明するには、どうすればいいのだろう……彼の最も暗い欲望が、私を永遠に縛り付けることだと知りながら。
婚約破棄後、私はヤクザの組長と結婚した

婚約破棄後、私はヤクザの組長と結婚した

61.8k 閲覧数 · 連載中 · やもり
裏切りと陰謀が渦巻く世界で、妃那(えな)は突然の誘拐事件に巻き込まれる。
救いの手を差し伸べたのは謎めいた男・葉夜(かなや)だったが、彼の真意は読めない。
一方、妃那の宿敵であり自信家の祈葉(いのか)は、自らの美貌と魅力を武器に黒社会の頂点を目指すが、
思いもよらぬ残酷な試練に追い込まれていく。
誤解と嫉妬、愛と憎しみが絡み合い、
それぞれの思惑がやがて一つの危険な運命へと収束していく――。
マフィア姫の帰還

マフィア姫の帰還

37.1k 閲覧数 · 完結 · Tonje Unosen
タリアは何年ものあいだ、母と義理の妹、そして継父と暮らしてきた。だがある日、ついにそこから逃げ出すことに成功する。

ところがその直後、自分にはまだ外に家族がいるのだと知る。そして本当に自分を愛してくれる人たちが大勢いることも――そんなものは今まで感じたことがなかった。少なくとも、彼女の記憶にあるかぎりでは。

タリアは人を信じることを学ばなければならない。新しくできた兄たちにも、ありのままの自分を受け入れてもらわなければならないのだ。
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

262.4k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
過ちの恋~姉の元恋人との結婚

過ちの恋~姉の元恋人との結婚

4.3k 閲覧数 · 連載中 · 相葉悠衣
まる五年間、私は姉の身代わりにすぎなかった。

同じ床で枕を共にしながら、彼が口にするのはいつも姉の名前であって、私の名前ではなかった。彼の心の奥底で最も愛しているのは姉だった。姉が重い病に倒れ命が危うくなると、彼は躊躇うことなく、私を無理やり手術台に押し上げ、私の腎臓を摘出して姉を救った。

満身創痍で病床に横たわっていた私は、さらに魂を打ち砕くような残酷な真実を知らされた——この世にたった一人残された肉親である祖父もまた、間接的に彼の手によって命を落としていたのだ。その瞬間、私の心は完全に灰と化した。

彼は離婚協議書を私の前に投げつけ、これですべて終わりだと思っていた。しかし運命は、最後にもう一つ残酷な転折を用意していた。

私は、身ごもっていた。
地獄の淵で誓った「死」の宣告――裏切り者たちへのレクイエム

地獄の淵で誓った「死」の宣告――裏切り者たちへのレクイエム

3.6k 閲覧数 · 連載中 · 南宮
夫は私を病院へ放り込み、愛人と笑い、娘を飢えさせた。
雪の中で凍え死にかけた私を救ったのは、復讐の代行者。
「選べ。彼らを許すか、地獄へ送るか」 私の答えは決まっている。
膝をついて泣き言を漏らす夫を見下ろしながら、私は冷たく微笑む。
罪を償う時間よ。地獄の火よりも熱い、復讐の始まりを教えるわ。
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

320.1k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
私が囲っている億万長者

私が囲っている億万長者

2.4k 閲覧数 · 連載中 · ほしの ちなつ
私はただ、心の痛みを紛らわせたかっただけ。

彼は息を呑むほど美しく、落ちぶれていた。夫の裏切りがもたらした傷が完全に癒えるまで、彼をそばに置いておくつもりだった。

お金で彼の付き添いを買い、すべてのルールを私が決め、すべてを完全に掌握しているつもりだった。

けれど、私の隣で横たわるこの男の正体は、彼が語ったものとはまるで違っていた。

魅惑的な笑顔と抗いがたい容姿の下に隠されていたのは、仇敵から身を隠す億万長者の素顔だった。

今や彼は、私の生活に、私のベッドに、そして私の心に――完全に絡みついている。

身を引くことは、彼のそばにいることよりも、もっと危険かもしれない。
「田舎者」と笑われた私、実は裏社会の女帝でした ~冷徹社長に正体がバレて溺愛される~

「田舎者」と笑われた私、実は裏社会の女帝でした ~冷徹社長に正体がバレて溺愛される~

101.6k 閲覧数 · 連載中 · 68拓海
ある名家から「不吉な忌み子」として捨てられ、世間からは「ただの田舎娘」と嘲笑される少女。
しかし、その正体は……
ファッション界を牽引するカリスマであり、香水界の伝説的な始祖。
さらには裏社会と政財界の命脈を握り、大物たちが跪く「影の支配者」だった!

長きにわたる雌伏の時を経て、彼女はついに帰還する。
奪われたすべてを取り戻し、自分を蔑んだ一族や世間を足元にひれ伏させるために。

一方、彼女の前に立ちはだかるのは、商業界の帝王と呼ばれる冷徹な男。
彼は知らなかった。裏でも表でも自分を脅かす最強の宿敵が、目の前で愛らしく微笑むこの少女だということを。

互いに正体を隠したまま、幾度もの交戦を重ねる二人。
そのスリリングな攻防の中で、二人は互いの秘密と脆さを共有し、やがて敵対関係は唯一無二の愛へと変わっていく。

そして危機が訪れた時、二人はついに仮面を脱ぎ捨て、並び立って頂点へと君臨する。

「君の『仮面』はすべて剥がした。次は、その心を裸にする番だ」
本物令嬢の正体がばれました

本物令嬢の正体がばれました

127.3k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
新谷南は新谷家で二十年も育てられたのに、本当の娘が戻ってきた途端、あっさり家を追い出された。

デザイン部のディレクターの席? 本当の娘へ。
何千万円もの価値がある婚約話? 本当の娘へ。

会社中の人間が、彼女という「野良扱いの娘」がどう転げ落ちていくか、笑いものにしようと様子をうかがっていた。

そんなある日、世界限定二十台の高級バイクが会社の前に止まる。降りてきた不良っぽいイケメンが言った。

「妹、兄貴と一緒に帰るぞ」

新谷家の人間「……は?」

そのあとで彼らはようやく知ることになる。

彼女こそ、国内外の美術館の館長たちが面会待ちの列を作る「南先生」と呼ばれるアーティストであり、
新谷グループの全受賞特許の名義人であり、
さらに、伝説の「国家並みの資産を持つ」と噂される周防家の、本当の長女だということを。

大手財閥の若き当主は、封印していた婚約書を取り出し、薄く唇を吊り上げる。

「なるほど。俺の本当の婚約者は、君だったわけか」