極道義弟が私への執念

極道義弟が私への執念

間地出草 · 完結 · 28.4k 文字

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紹介

私はかつて極道組織への生贄だった。夫の突然の死後、私は震える未亡人から桜花区裏社会の「影の女王」へと変貌した。彼—義弟の桜井光代(さくらい みつよ)が金雲市から戻って組織を継いだ時、私たちの間の禁断の炎はもはや無視できなくなった。

「俺の前で聖女を演じるな、恵莉奈(えりな)。」彼はワインセラーのオーク樽の間で私を追い詰め、灼熱の息が私の耳をかすめた。「お前の体はもう裏切っている。」

「これは間違っている」私は震え声で抵抗したが、自分の体が彼に寄りかかるのを止められなかった。「組織を滅ぼす...あなたを滅ぼす...」

「お前のためなら、すべてを燃やし尽くしてもかまわない。」

チャプター 1

恵莉奈視点

教会の鐘が、頭蓋の内側で直接鳴り響いているようだった。目を閉じれば、純白のベールが氷のように冷たく頬を撫でる。くそっ、今日の私は花嫁なんかじゃない――ただ屠殺場へ引かれていく、哀れな子羊だ。

目を開けると、聖心教会のステンドグラスを透かした光が、砕けた宝石のように床に散らばっていた。祭壇には花見誠が立ち、その貼り付けたような薄笑いに吐き気を催す。

白い花で飾られたバージンロードは、まるで奈落へと続く道のようだった。一歩踏み出すごとに、心が鉛のように重く沈んでいく。

「花見誠、汝は桜井恵莉奈を、法的に結ばれた妻とすることを誓いますか」

神父の古風な声が、静まり返った聖堂に響き渡った。

誠の唇が、いやらしく歪む。

「はい、誓います」

その声が、耳障りな雑音となって鼓膜を掻き乱した。

「桜井恵莉奈、汝は花見誠を、法的に結ばれた夫とすることを誓いますか」

唇は乾ききり、心臓を鷲掴みにされたような息苦しさに襲われる。私がすべてを諦め、運命に身を委ねようとした、まさにその瞬間だった。

バァン! と、教会の扉が耳をつんざくような轟音とともに弾け飛び、参列者たちの視線が一斉にそちらへ注がれた。

逆光の中に立つ人影。それは、桜井光代だった。その射抜くような灰緑色の瞳が、まっすぐに私を捉えている。心臓が大きく跳ね上がった。私の元義弟であり、桜井家の唯一の後継者。その背後には、武装した男たちがずらりと控えていた。

「この結婚式は終わりだ」

彼は温度のない声でそう言い放つと、黒光りする拳銃を静かに掲げた。

なんてこと! 全身の血が、一瞬にして沸騰する。

悲鳴が上がる中、誠の用心棒たちが慌てて懐に手を伸ばす。パン! と乾いた銃声が空気を切り裂いた。私はとっさに身を屈め、踏みつけられた白い花びらが絨毯に広がる血だまりに染まっていくのを、ただ呆然と見つめていた。混乱の渦の中、私の目に映ったのは、決然とした足取りでこちらへ向かってくる光代の姿だけだった。

「桜井光代! 貴様、神聖な場所で何をする気だ!」

誠が顔を真っ赤にして後ずさりながら叫ぶ。

「そいつはお前の兄貴の未亡人だぞ! 桜井の伝統を何だと思っている!」

光代は鼻で笑った。

「伝統、だと? どの口が言う。桜井を乗っ取ろうとした外様が、伝統を語るな」

その視線は混沌を突き抜け、再び私を射抜く。

「恵莉奈は兄貴のものじゃなかった。最初から、俺のものになる運命だったんだ」

再び銃声が響く。光代の部下たちが、誠の用心棒を恐ろしいほどの手際で無力化していく。悲鳴、祈り、そして銃声が、悪夢のような不協和音を奏でていた。

弾丸が耳元をかすめた瞬間、不意に世界の時間が引き伸ばされたように感じた。私の意識は、五年前に遡る。すべてが始まったあの時に。私が、この運命の濁流にどこへ押し流されるのか、まだ知る由もなかった頃に……。

―――

五年前

全ての元凶は、父の度し難い博打癖だった。父は桜井組に首が回らなくなるほどの借金をこさえ、その唯一の返済手段が、私――桜井組の跡目である桜井勝男との結婚だった。十も年上のその男は、私に一目惚れしたのだと主張した。少なくとも、表向きはそういうことになっていた。

三週間後、私は高価なウェディングドレスを身にまとい、桜井組が借り切ったホテルの宴会場に立っていた。心は石のように冷え切っている。シャンパンとコロン、そして暴力の匂いが混じり合った空気が肌にまとわりつく。周りを取り囲む男たちの視線は、まるで品定めでもするかのように粘り気があり、値踏みされる商品にでもなった気分だった。

夫となる勝男は、見目が良く裕福ではあったが、その眼差しには常に所有欲がちらついていた。噂に聞くような粗暴な男ではなかったことだけが、せめてもの救いだった。

披露宴の最中、会場の隅に立つ一人の若い男が、私の注意を引いた。二十代前半だろうか。精悍な顔立ちの美青年だったが、何より際立っていたのはその瞳――全てを見透かすような、底冷えのする鋭さがあった。彼と視線が合った瞬間、背筋に奇妙な震えが走った。

「あの子には気をつけなさい」

隣に座った親戚筋の女性が、そっと囁いた。

「あれが光代さん、勝男さんの弟よ。見た目に騙されちゃだめ。一族の中じゃ『悪魔』って呼ばれてるの。もちろん、ただの噂じゃないわ」

式の後、勝男は驚くほど思いやりに満ちていた。私たちの結婚が実質的な取引であったにもかかわらず、彼は決して無理強いすることなく、時にはブロードウェイのチケットを手配してくれることさえあった。私はこの暗い世界で、ささやかな幸せを見つけられるかもしれないと、愚かにも考え始めていた。

しかし、幸運は決して長続きしない。特に、裏社会に紛れ込んだ部外者にとっては。

半年後の、嵐の夜。けたたましいドアベルの音で、私は叩き起こされた。ドアを開け、思わず悲鳴を飲み込む。びしょ濡れの光代が、血まみれの勝男の体を抱えて立っていた。

「かかりつけの医者を呼べ! 今すぐだ!」

光代の声に含まれた焦燥が、私の骨の髄まで凍らせた。常に冷静なこの男が、これほど取り乱している姿を見たのは初めてだった。

だが、全ては手遅れだった。勝男は病院へ向かう途中で息を引き取った。「花見組の待ち伏せだ」と、光代は後に淡々と説明した。裏社会では、人の死など三面記事と同じ。ありふれた日常の一部に過ぎなかった。

葬儀の後、私は桜井組本家の会議室の隅で、生殺与奪の権を握られたまま、ただ息を潜めて座っていた。男たちは、私の運命を議論するにあたって、その残酷な言葉を隠そうともしなかった。

「この女は知りすぎた。消すのが筋だ」

しわくちゃの老人が、冷たく言い放った。

「余所者に俺たちの内情を知られたままにはしておけん」

勝男の父――桜井組組長である桜井啓雄は、黙って葉巻を燻らせている。その視線は剃刀のように鋭い。この部屋では、彼こそが閻魔だ。

「まあ待て。まだ使い道はあるだろう。ビアンキのあの後家にでもくれてやれば、少しは貸しを作れる」

別の一族の者が、手をこすり合わせながら卑しい笑みを浮かべた。

私の手は震えていたが、必死で無表情を装った。深い絶望が私を飲み込もうとした、その時だった。

「もういい」

光代が、不意に立ち上がった。

「この人は兄貴の妻であり、桜井の一員だ。俺たちは身内を処分したりはしない」

啓雄を含む全員が、その若者に視線を向けた。光代は構わず続けた。

「兄貴は死ぬ間際、この人を俺に託した。桜井の人間は、約束を守る」

思わず笑いがこみ上げそうになった。勝男は死の淵で、一言も口をきけなかったというのに。だが、誰も光代の嘘を問い質そうとはしなかった。

会議の後、私は廊下で光代を呼び止めた。

「どうして助けてくれたの? 本当の理由を教えて」

彼の瞳は、底の知れない湖のように静かだった。

「勝男に約束したからだ」

「嘘はやめて」

私は彼をまっすぐに見据えた。耳の奥で、自分の血流が脈打つのが聞こえる。

「勝男さんは死ぬ時、話せる状態じゃなかったわ。本当のことは何?」

光代は一歩前に出て、唇の端をかすかに上げた。

「たぶん、桜井組にはあんたみたいな頭の回る女が必要だと思っただけさ」

彼が立ち去ろうとした時、廊下の突き当たりで振り返りもせずに言った。

「ところで、勝男には咲良という娘がいる。母親は去年死んだ。今は誰も面倒を見ていない。もしあんたが出て行きたいなら……誰かが『引き継ぐ』ことになる」

その平坦な口調は、その「引き継ぎ」が決して穏やかなものではないことを、雄弁に物語っていた。

その夜、私は桜井咲良に会った。勝男によく似た大きな瞳を持つ、物静かな六歳の女の子。彼女は怯えた小動物のように、用心深く私を観察していた。私が寝る前に本を読んであげようかと申し出ると、その瞳に長い間失われていた光が、かすかに揺らめいた。

私の腕の中でようやく安らかに寝息を立て始めた彼女を見て、私は決心した。

翌日、私はまっすぐに啓雄の書斎へ向かった。

「咲良さんの面倒を見るために、私はここに残ります」

私は深く息を吸い込んだ。

「でも、条件があります」

彼は書類から顔を上げ、無言で私の続きを促した。

「勝男さんが遺したレストランを、私に経営させてください」

私の声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。

「私はレストランを経営する家で育ちました。きっとうまくやれます……経営を立て直してみせます」

啓雄は長い間私を吟味し、やがてわずかに唇を歪めた。

「大した度胸だ、恵莉奈。だがな、俺たちの世界じゃ、勇気は臆病より命取りになることもある」

彼はインターホンのボタンを押した。

「光代を呼べ」

そして、私に向き直る。

「今日から、光代がお前にここの流儀を教える」

部屋に入ってきた光代と私の視線が交わった時、背筋に奇妙な電流が走った。この決断が私の人生を根底から変えてしまうこと、そしてこの危険な男との間に何が待ち受けているのか、その時の私にはまだ、知る由もなかった。

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***

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