身代わりの妻

身代わりの妻

大宮西幸 · 完結 · 16.8k 文字

868
トレンド
917
閲覧数
6
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

妊娠八か月、胆汁まで吐くほどつわりがひどく、お腹には三つの「奇跡」が宿っている。

その夜まで、壁に手をついて歩いていた私は、個室から聞こえる笑い声を耳にした。

夫のフランクが笑いながら言った。「賭け金をもう一千万円上乗せしよう。男の子二人、女の子一人に賭ける」

愛人のアヴァが甘えるように言った。「あなた、結果を知ってるくせに」

「当然だろう」彼は軽やかに答えた。「俺の子供なんだから、当然知ってる」

そして私は聞いてしまった。

彼らは私の子宮について、まるで性能の良い機械を評価するかのように話していた。

「どちらの卵子がより価値があるか」で乾杯していた。

どの子が最初に生まれるかまで賭けの対象にしていた。

そして私はドアの外に立ち、むくんだ足で、ひび割れそうな全身を支えていた。

中では騒ぎ、祝っていた。

完璧な容器である私が、夫と愛人の子供を身籠っていることを祝っていた。

その瞬間、突然吐き気が止まった。

ただ、寒気がした。

そして、ある計画が氷のように冷たい胸の奥で、ゆっくりと脈打ち始めた。

チャプター 1

ジアナ視点

 病院の廊下、壁に手をついて荒い息を整える。八回目の激しい嘔吐が、ようやく治まったところだ。

 鏡に映る姿は、まるで亡霊のようだった。顔はむくみ、目の周りは青黒く窪んでいる。極限まで張り詰めた腹部の皮膚は透き通るように白く、三本の妊娠線が亀裂のように走っていた。

 三つ子。妊娠八ヶ月。拒絶反応で命を落としかけたこともある。

 それでも、この子たちは私とフランクの子供だ。不妊治療を三年続けてようやく授かった、奇跡の結晶なのだから。

「スターリング奥様、本当に退院されるのですか?」看護師が慌てて追いかけてくる。「今の奥様の容体では……」

「今夜は夫の会社の上場記念パーティーなの」私は無理やり笑みを浮かべた。「どうしても行かないと」

 絢爛豪華な宴会場。しかし私の鼻をつくのは、澱んだシャンパンと香水が混じり合った匂いだけだった。

「スターリングはどこ?」通りがかりの給仕を腕を掴んで呼び止める。

「あ、スターリング様でしたら、ご友人の方々と一番奥の個室にいらっしゃいます」彼は視線を泳がせた。「ご案内いたしま――」

「いいえ、結構よ」

 鉛のように重い体を引きずり、廊下の突き当たりへと向かう。

 個室のドアはわずかに開いており、そこから笑い声が溢れ出していた。

 足を止めると、本能的に手が腹部へ向かう。お腹の中で赤ちゃんたちが動いた気がした。

 隙間からフランクの声が聞こえる。聞き慣れた、あの奔放で楽しげな響き。「賭け金をあと百万円上乗せだ。俺は男二人、女一人に賭ける」

 胸の奥が温かくなる。やっぱり彼も、子供たちを楽しみにしてくれているんだ。

「フランクったら、ずるいじゃない」アヴァの甘ったるい声が響く。「結果を知ってるくせに」

「当然だろう」彼は軽く笑う。「俺の子供だぞ、知らないわけがない」

 部屋の中が冷やかす声で沸き立つ。私の口元も自然と綻び、そっとドアの縁に身を寄せた。

「じゃあ本当に男二人と女一人なのか?」誰かが尋ねる。「アヴァ、君の遺伝子検査のレポートはどうだったんだ?」

 空気が、凍りついた。

 私の指が掌に食い込む。

「どっちにしろ、私の可愛い子供たちよ」アヴァの声は蜜のように甘い。「ジアナには悪いけどね、あんなに大変な思いをして」

「あいつはそういうのに向いてるんだ」フランクの口調は平坦で、まるで機械の性能を評価しているようだった。「子宮の状態がいいし、忍耐力もある。医者は当初、減胎手術を勧めたが、俺が断った。アヴァの卵子は貴重なんだ、一つだって無駄にはできない」

 世界から音が消えた。

 視線をゆっくりと腹部へ落とす。皮膚の下で、三つの小さな命が動いている。

「フランク、お前もひどい男だな」別の男が笑う。フランクの共同経営者、マイケルだ。「妻に愛人の代理母をやらせるとはな。しかも双子も。ジアナが知ったら……」

「知るわけがない」フランクが遮る。「体外受精のカルテは改竄済みだ。あいつは自分の卵子だと信じ込んでいる」

「じゃあ、三人目は?」誰かが尋ねる。「アヴァの子じゃないなら、さすがにジアナの子なんだろう?」

 沈黙。

 やがて、アヴァの笑い声が弾けた。「三人目? 誰の子か当ててみてよ。正解者にはフランクからご褒美があるわ」

 個室の中は大盛り上がりで、予想する声が飛び交う。

 私はよろめき、背中を冷たい壁に打ち付けた。

 部屋の中の声は続き、毒蛇のように耳へと潜り込んでくる。「ジアナが哀れすぎるだろう」

「何が哀れなものか。もともと家の力を使って無理やりフランクと結婚したのはあいつだぞ? 自業自得さ」

「全くだ。フランクの本命はずっとアヴァだったってのに、身の程知らずめ」

「それにしてもアヴァ、痛いのが怖いからって、自分の腹を痛めないのはどうなんだ?」

「怖いもーん」アヴァが甘えた。「妊娠なんてしたらスタイルが崩れちゃうし。どうせジアナが喜んで『器』になってくれるんだから、私が苦労することないじゃない?」

「どんな姿の君も好きだよ」フランクが低く笑った。

 続いて、湿った接吻の音が聞こえた。

 私はきつく瞳を閉じた。

 記憶の破片が鋭利な刃物となって突き刺さる。採卵室で、長い針が腹部を貫いた痛み。歯を食いしばり、爪が掌に食い込んで血が滲んだあの日。

 その時、フランクは私の手を握り、目を赤くしていた。「ジアナ、もう少しの辛抱だ。俺たちの子供のためだ」

 減胎手術のカウンセリングで、医者がモニターを指差した時。「三つ子の妊娠は母体への負担が大きすぎます。減胎手術をお勧めします」

 フランクは私の肩を抱き、力強く言った。「一人だって減らせない。全員俺たちの子供だ、諦めるなんてできない」

 激しい嘔吐で脱水症状になった私に、彼が粥を食べさせてくれた時。その瞳は潤むほどに優しかった。「この子たちが生まれたら、毎日ずっとそばにいるよ」

 嘘だ。

 全部、真っ赤な嘘だった。

 私はゆっくりと体を起こす。

 もう行こう。この地獄から立ち去らなければ。

 だが、私の足は底に釘付けになったように動かない。

 待って。

 彼らは「二人」と言った。アヴァの受精卵は二つだと。

 なら……私のは?

 もしかして、三人目の子は、私とフランクの子なんじゃないか?

 私は腹部を押さえる。そこには、三つの心音が皮膚越しに伝わってくる。

 万が一、彼らが間違っていたら?

 万が一、カルテの改竄にミスがあったら?

最新チャプター

おすすめ 😍

弁護士とゴッドファーザー

弁護士とゴッドファーザー

3.4k 閲覧数 · 連載中 · 月岛澪
彼が浮気したその夜、私は涙を流さなかった。ただ、お酒に逃げただけ。
ウイスキーが喉を灼く。その時、彼が目に入った。
仕立ての良いスーツが広い肩幅を引き立て、その瞳の奥には人を威圧するほどの冷静さが宿っている。
気品を纏ったその肉体は、骨の髄まで溶かすような誘惑に満ちていた。
私は千鳥足で歩み寄り、身体の火照りを感じながら問いかけた。「……あなた、お相手してくれる?」
彼は口元をわずかに吊り上げた。「君のことは知っているよ」
私は彼の膝の上に腰掛けた。シガーの煙と濃厚なコロンの香りが私を幾重にも包み込む。
指先で彼の顎に触れ、そのまま腰元の冷たい金属のアクセサリーへと滑らせた。
その瞬間、彼は私を強く抱き寄せた。その身体は重厚で力強く、逃げることなど許さない。
重ねられた彼の唇は重く、熱く、深く、拒絶を許さないほどの独占欲を孕んでいた。
口づけを交わすたびに呼吸を奪われ、触れられるたびに、私はどうしようもなく彼に寄り添ってしまう。
彼に横抱きにされてバーを後にする頃には、私の頭はすっかり朦朧としていて、心の奥でさらなる温もりを求めていた。
彼のベッドの上で、彼は熱烈でありながらも理性を保ち、何度も私を絶頂へと導き、すべての理性を狂わせていく。
翌朝、目が覚めると、私は彼のベッドのシーツにくるまれていた。肌には彼が残した痕跡がいくつも刻まれている。
夜が明ける前に、私は逃げるようにその場を去った。この一夜は、元カレへのあてつけの、ただの荒唐無稽な過ちだと言い聞かせて。
けれど、彼と過ごしたあの夜の時点で、私の運命はすでに決まっていたのだ――。
私を芯から熱くさせたあの男は、私の想像を遥かに超えるほど、危険な存在だった。
今さら跪いても遅い

今さら跪いても遅い

7.1k 閲覧数 · 連載中 · ショコラ風味
5年間の結婚生活を壊したのが、1通の親子鑑定書だとは夢にも思わなかった。

自分が手塩にかけて育てた息子は、夫が元カノとの間に作った子供だった。さらにあり得ないことに、父子は最初からその事実を知っており、結託して彼女に隠していたのだ。

それだけではない。彼女はドアの隙間から、夫の計画を親の耳で聞いてしまう。元カノが戻ってきたら、彼女を「体面よく」会社から退職させ、財産を一切渡さずに追い出し、5000万の「補償金」で済ませようというのだ。

5000万?彼女が一人で支えてきた会社で、彼女の金と人脉を使って夫の尻拭いをしてきた結果が、たったのそれだけ?

絶望した彼女は、自分のすべてを取り戻すと誓う。

恩知らずの息子? もう愛さない。初恋に狂う夫? 彼も消え失せろ。

だが、彼女が本当に離婚して完全に去ったとき、あの父子は再び彼女に家に帰ってきてくれと泣きついてきた!
「もう一度だけチャンスをくれ」

今度の彼女は、一瞥さえくれなかった。
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

292.6k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
社長の逃げた妊娠妻

社長の逃げた妊娠妻

12.9k 閲覧数 · 連載中 · ユイ
川崎佑哉は上半身裸のまま、江原安美の上に覆いかぶさり、大きな手で彼女の柔らかな胸を撫で上げた。

江原安美は甘い吐息を漏らしながら喘いだ。「もう我慢できない…ちょうだい…」

川崎佑哉は彼女の体をうつ伏せにひっくり返し、ペニスを彼女の柔らかな臀部の間で前後に擦りつけた後、背後から一気に挿入した。

「江原安美、たとえ離婚しても、お前は一生、俺の下で喘ぐしかないんだ。」


江原安美はまさか自分がいつか、夫・川崎佑哉と彼の愛人のために結婚指輪をデザインすることになるとは思わなかった。そしてさらに届いたのは、一通の離婚届だった。

彼女は迷わずサインし、彼への想いを断ち切り、妊娠検査の結果を隠して、海外へと旅立った。

その後、彼女は海外で大成功を収め、言い寄る男は数知れず。しかし彼は変わった。彼女に執着し、離れようとせず、目を赤くして「もう一度チャンスをくれ」と懇願した。

彼女の小さな宝物が飛び出して彼の前に立ちはだかり、腰に手を当ててこう言った。「ママに追いつきたいなら、まず列に並んでね!」
偽物令嬢の逆転劇

偽物令嬢の逆転劇

92.8k 閲覧数 · 連載中 · ひかり
「泥棒女め、今すぐこの家から出て行きなさい!」

実の娘が戻ってきたその日、私はゴミのように家を追われた。
病弱な「お嬢様」の生きる輸血パックとして虐げられ、血を搾り取られ続けてきた日々。用済みになった途端、身に覚えのない盗みの罪を着せられ、婚約者からも冷酷に捨てられた。
元家族たちは、私が「貧しい田舎で野垂れ死ぬ」と信じて疑わなかった。

だが、彼らは何も知らなかったのだ。
私が、世界中のVIPが縋る伝説の名医であることも。
私を迎えに来たオンボロトラックが、実は国家機密級の超高級カスタムマシンであることも。
そして、私の本当の実家が、国さえも動かす世界屈指の超巨大財閥だということも!

「今まで苦労をかけたね、私たちの可愛いお姫様」
生き別れていた超過保護な両親と、各界の頂点に君臨する最強の兄たちに狂おしいほど溺愛されるシンデレラライフが幕を開ける!
一方、大切な「命の恩人」を自ら捨てた元家族たちには、破滅へと向かう絶望の後悔タイムが待ち受けていて!?

虐げられた天才少女が本当の愛と富を掴み取る、逆転ファンタジー、ここに開幕!
二度目はない 動じず咲く

二度目はない 動じず咲く

136.8k 閲覧数 · 完結 · Gloria Fox
結婚式の一ヶ月前、私は一年かけて自らの手で縫い上げたウェディングドレスを燃やした。

婚約者は身ごもった愛人を腕に抱き寄せたままそこに立ち、私を鼻で笑っていた。「俺がいなきゃ、お前なんて何の価値もない」

私はきびすを返し、この街で最も裕福な男の扉を叩いた。「ロック氏、政略結婚にご興味はおありですか? 千億ドル相当の株式――それに加え、未来のビジネス帝国も無料でお付けいたしますわ」
余命宣告された日、帰宅するとベッドに「引き裂かれた愛人の下着」があった

余命宣告された日、帰宅するとベッドに「引き裂かれた愛人の下着」があった

56.5k 閲覧数 · 連載中 · 七海
結婚して5年、夫とは円満だと思っていた。
しかし、運命は残酷だ。

病院で「白血病」という絶望的な診断を受けたその日。
震える足で帰宅した私の目に飛び込んできたのは、夫の裏切りの証拠だった。

私たちの神聖な寝室。
そのベッドの上には、無惨に引き裂かれたレースの下着がわざとらしく残されていたのだ。

それは明らかに、夫の愛人からの宣戦布告。
「あなたはもういらない」と嘲笑うかのような、残酷なマウントだった。

命の期限を突きつけられた日に、愛まで失った私。
絶望の淵で、私はある決断を下す。
令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

786k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
天才陰陽師だった御影星奈は、かつて恋愛脳のどん底に落ち、愛する男のために七年もの間、辱めに耐え続けてきた。しかしついに、ある日はっと我に返る。
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

317.2k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
夫が選んだのは義妹でした。だから私は家を出て、伝説のレーサーとして成り上がります

夫が選んだのは義妹でした。だから私は家を出て、伝説のレーサーとして成り上がります

13.3k 閲覧数 · 連載中 · 相葉悠衣
結婚して三年。植物状態から目覚めた夫が、最初に口にしたのは私への侮辱だった。最愛の義妹を庇うためだ。
三年間の献身的な介護は、ただの徒労だった。夫がずっと愛していたのは、私の人生も身分も、すべてを奪い取ったあの女だったのだ。
夫は義妹のために私を無一文で追い出し、街から徹底的に排除した。

だが、彼らは知らない。
かつて「家事をして尽くすだけ」だった捨てられた女が、今や世界中のレーサーを震え上がらせる伝説のドライバーであることを。

夫の宿敵から差し出された救いの手――。
全てを奪われた妻の、華麗なる復讐劇が今、幕を開ける。

勝つのは、果たして誰か?
本物令嬢の正体がばれました

本物令嬢の正体がばれました

143.3k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
新谷南は新谷家で二十年も育てられたのに、本当の娘が戻ってきた途端、あっさり家を追い出された。

デザイン部のディレクターの席? 本当の娘へ。
何千万円もの価値がある婚約話? 本当の娘へ。

会社中の人間が、彼女という「野良扱いの娘」がどう転げ落ちていくか、笑いものにしようと様子をうかがっていた。

そんなある日、世界限定二十台の高級バイクが会社の前に止まる。降りてきた不良っぽいイケメンが言った。

「妹、兄貴と一緒に帰るぞ」

新谷家の人間「……は?」

そのあとで彼らはようやく知ることになる。

彼女こそ、国内外の美術館の館長たちが面会待ちの列を作る「南先生」と呼ばれるアーティストであり、
新谷グループの全受賞特許の名義人であり、
さらに、伝説の「国家並みの資産を持つ」と噂される周防家の、本当の長女だということを。

大手財閥の若き当主は、封印していた婚約書を取り出し、薄く唇を吊り上げる。

「なるほど。俺の本当の婚約者は、君だったわけか」
実の妹と私を騙した冷徹夫、失うものすら残らない地獄へようこそ

実の妹と私を騙した冷徹夫、失うものすら残らない地獄へようこそ

4k 閲覧数 · 連載中 · ^野田恵^
来栖琴音は、自分たちの結婚が本物の愛で結ばれていると信じて疑わなかった。

この3年間、彼女は自分のキャリアさえも犠牲にして、完璧な妻であり続けようと尽くしてきた。
――だが、そんなおとぎ話は、夫の裏切りを知った瞬間に無惨にも崩れ去る。

不倫の真相を追う彼女の前に、次々と暴かれていく歪んだ欺瞞の数々。
あろうことか実の妹との禁断の不貞、横領された会社の資産、そして琴音の社会的名声を徹底的に失墜させようとする冷酷な陰謀――。
彼は彼女の心を壊しただけではない。彼女の未来そのものを盗み取っていたのだ。

無駄にされた10年分の対価を、今度は私がすべて奪い尽くす番。
――最後に何もかもを失って絶望するのは、あなたよ。