三日遅れの悔恨の灰

三日遅れの悔恨の灰

渡り雨 · 完結 · 20.0k 文字

562
トレンド
562
閲覧数
0
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

連続放火事件の四人目の焼死体が兄の解剖台に運ばれた時、私は宙に浮かんでそれを見ていた。

A市で最も優秀な法医である兄は、冷静に記録する。「女性、22歳、死前に長時間火で焼かれた痕跡あり」。彼は知らない。今、自分の妹の死に様を、専門的に描写しているのだということを。

三日前、私はまさにあの倉庫で、何度も兄に電話をかけていた。兄の婚約者である美奈子(みなこ)は私のスマホを手に取り、甘く、そして悪意に満ちた笑みを浮かべて言った。「もう一回かけてみたら?今度こそ、お兄さんが出てくれるかもしれないわよ?」

電話が繋がった。

「悠也(ゆうや)、助けて——」

「リリ、今、婚約のことで忙しいんだ。もう邪魔しないでくれ!」

ツーツーという無機質な音が響く。美奈子はガソリンに火をつけた。

今、兄はついに報告書から顔を上げた。その顔は真っ青だ。被害者の全てのデータが、彼が認めたくない一人の名前を指し示しているから。

ああ、お兄ちゃん。あなたが解剖で触れる一つ一つの傷跡は、私が最後にあなたに伝えたかった言葉そのものなのよ。

――犯人は、あなたのすぐ隣で、ウェディングドレスを着て立っている、と。

チャプター 1

 死は、私を連れ去りしなかった。

 私の魂は今もなお、黒く焼け焦げた廃墟の上空を彷徨いながら、ゆっくりと晴れていく硝煙を見下ろしている。

 A市南区にあるこの廃棄倉庫は、今や飴細工のように捻じ曲がった鉄筋と、炭化した梁を残すのみとなっていた。連続放火事件は、都市全体を恐怖の底に陥れている。

 夜明け前、消防隊員たちが撤収作業を進めている。彼らのヘルメットから、水滴がポタポタと滴り落ちていた。彼らがまもなく、あの隅で一具の焼死体を発見することを知っている――あれは、私の死体だ。

 また兄の城川悠也に迷惑をかけてしまう。数日後には、彼の婚約パーティーが控えているというのに。

 案の定、三十分もしないうちに、パトカーと救急車が現場を包囲した。

 白い防護服に身を包んだ悠也が、パトカーから降りてくるのが見える。こんなに離れていても、彼が纏う職業的な冷静さと、その奥に潜む炎への恐怖が伝わってくるようだった。

「四人目だぞ、悠也」

 高山俊哉が彼に歩み寄り、沈痛な面持ちで告げる。私の胸が締め付けられた。俊哉は昔と変わらず、いつも悠也のことを気にかけてくれている。二人は幼馴染で、今は俊哉が刑事、悠也が主席監察医という関係だ。

「『フレイム・キラー』がまたやったんだ」

 悠也は小さく頷くと、深く息を吸い込み、その焼死体へと歩み寄った。そして、手慣れた様子で検死を始める。

「二十代前半の女性」彼は淡々と報告する。

「死後四十八時間は経過している。炭化が激しく、DNA抽出は困難だろう。結果が出るまで二日ほどかかる」

 私は、悠也が自分の死体の傍らにしゃがみ込むのを見つめていた。手袋をはめた手で、炭化した残骸を丁寧に検分している。その所作はあくまで冷静で、見知らぬ他人の遺体を扱うそれと何ら変わりなかった。

「助燃剤の痕跡が明白だ」彼は記録を取らせる。

「被害者は生前、脱出を試みている。この爪痕を見るに、溶接された扉を必死にこじ開けようとしたようだ」

 検視を続ける悠也の顔色が、次第に険しくなっていく。

「さらに残忍な点がある」彼は声を低くした。

「燃焼痕から判断するに、被害者は生きたまま長時間焼かれている。犯人は意図的に火勢をコントロールし、彼女にゆっくりと苦痛を与え続けたんだ」

 周囲の鑑識官たちが顔を見合わせ、数人が思わず後ずさりする。俊哉は大きく息を吐き出した。

「これまでの件より酷いな」

 規制線の外で野次馬たちが囁き合うのが聞こえる。中年の女性が子供をきつく抱きしめていた。

「あの狂人、まだ続けるつもりなの?」

「誰も安心できんよ」老人が首を振る。

「あんな怪物が、わしらのすぐ側をうろついているんだからな」

「可哀想な女の子……」別の声が震えている。

「生きながら焼き殺されるなんて」

 悠也は立ち上がり、拳を固く握りしめた。

「この放火魔を必ず見つけ出す。被害者たちの無念、必ず晴らしてやる!」

 今調べているのが、あなたの憎んでいる妹の死体だと知っても、そんなことが言えるの?

 私は心の中で問いかける。だが当然、答えは返ってこない。

 現場検証の終盤、俊哉が心配そうに悠也を見やった。

「これで四体目の焼死体だ。最近、根を詰めすぎじゃないか?」彼は言葉を切り、続けた。

「そういえば、妹さんの誕生日はもうすぐじゃなかったか?」

 悠也の表情が、瞬時に凍りついた。

「あいつの話はするな。誕生日は俺と美奈子の婚約パーティーと被ってるんだ。あいつにかまけている暇なんてない」

 心が引き裂かれるようだった。美奈子は私の誕生日を知っていて、あえてその日を婚約パーティーに選んだのだ。そして悠也は、その『偶然』を全く気にしていない。

 彼にとって、私の誕生日など最初からどうでもいいのだ。

 十二歳の誕生日に両親が亡くなって以来、悠也は私を恨んでいる。私のことを疫病神だ、人殺しだと罵った。十八歳の時には家から追い出され、それ以来、あらゆる接触を拒絶されている。

 だが三年前、記憶喪失の状態で警察に助けを求めてきた伊藤美奈子に対して、悠也は進んで手を差し伸べた。私はそれを遠くから見ているしかなかった。

 その後、彼女は徐々に記憶を『取り戻し』、身寄りがないと訴えた。悠也は彼女の脆さに心を動かされ、甲斐甲斐しく世話を焼くようになったのだ。

 実の妹の電話には、一度も出ようとしないくせに。

「リリはずっと、陰でお前を支えてきたんだぞ」俊哉はたまらず、悠也の肩を掴んだ。

「俺を通じてお前の世話をしていたのを、知らないわけじゃないだろう? デスクのコーヒーも、徹夜続きの時の差し入れも、全部彼女からだ」

 悠也は冷淡に俊哉の手を振り払った。

「よせ、俊哉。あいつの話はやめろ」

 空から雨が落ちてきた。黒焦げの廃墟を打つ雨粒が、ジュッという音を立てる。悠也が空を見上げた。

「雨脚が強くなってきたな。現場の証拠が流される可能性がある」

「直ちに遺体をラボへ搬送し、詳細な検査を行う必要があります」鑑識官が進言する。

「現場を封鎖しろ。証拠はすべて持ち帰って分析だ」悠也が指示を飛ばした。

 署に戻る車中、俊哉がハンドルを握りながら、ふと違和感を口にした。

「そういや、今日はコーヒーを飲んでないな。目が充血してるぞ」

「あいつのコーヒーなんて要らない」悠也は吐き捨てるように言った。

「だがリリは毎朝、俺にコーヒーを託していただろう。お前のデスクに置くようにな。徹夜の時は夜食まで用意していた。それがここ数日、ぱったり来なくなったんだ」俊哉は食い下がる。

 悠也は煩わしげに手を振った。

「気にするな、俊哉。どうせいつもの狂言だ。数日前も和解したいとか電話してきたが、切ってやったよ。癇癪でも起こしてるんだろう」

 もう二度とコーヒーが届くことはないし、電話がかかってくることもない。その事実を知ったら、あなたはどう思うの?

 その時、悠也の携帯電話が鳴った。画面の表示を見た瞬間、彼の眉間の皺が解け、声色が甘く変化する。

「やあ、美奈子……」

 画面を見る必要すらない。相手は美奈子だ。悠也にこれほど優しい顔をさせられるのは、彼女の電話だけなのだから。

最新チャプター

おすすめ 😍

名門貴族との甘い結婚

名門貴族との甘い結婚

3.8k 閲覧数 · 連載中 · 佐藤製作所
かつて勘当した娘がホワイトシティで名を馳せたことを知り、愕然とした。産業界の巨人、学術界の権威、そしてAリストの俳優たちが、彼女のおかげで成功を収めたと口を揃えて語った。彼女の元カレは、夢の女性を選んで彼女を捨てたものの、今や彼女を取り戻そうと必死に懇願していた。しかし、彼女のそばには、背が高くハンサムな男性が立ち、「私の妻に何をしているつもりだ?」と宣言した。
その男性こそ、ホワイトシティ一の大富豪だったのだ。
家族の縁を切った日、兄たちはすべてを失った

家族の縁を切った日、兄たちはすべてを失った

282.5k 閲覧数 · 連載中 · 風見リン
前の人生で両親が交通事故で亡くなった後、長兄は世間体を気にして、事故を起こした運転手の娘を家に引き取った。
公平を期すという名目のもと、兄たちは彼女からリソースを根こそぎ奪い、その尊厳を踏みにじってまで、運転手の娘を支えた。
彼女は兄たちのためにすべてを捧げたというのに、家を追い出され、無残に死んだ。

生まれ変わった今、彼女は人助けの精神などかなぐり捨てた。許さない、和解しない。あなたたちはあなたたちで固まっていればいい。私は一人、輝くだけ。

兄たちは皆、彼女がただ意地を張っているだけだと思っていた。三日もすれば泣きついて戻ってくるだろうと高を括っていたのだ。
だが三日経ち、また三日経っても彼女は戻らない。兄たちは次第に焦り始めた。

長兄:「なぜ最近、こんなに体調が悪いんだ?」――彼女がもう滋養強壮剤を届けてくれないからだ。
次兄:「会社のファイアウォールは、なぜこうも問題ばかり起こす?」――彼女がメンテナンスに来なくなったからだ。
三兄:「新薬の開発が遅々として進まないのはなぜだ?」――彼女が治験をしなくなったからだ。
四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
五兄:「この義肢は、なぜこんなに出来が悪いんだ?」――彼女が製作をやめたからだ。
六兄:「なぜチームが負けた?」――彼女が脱退したからだ。

兄たちは地に膝をついて許しを請うた。「戻ってきてくれ。俺たちこそが、血を分けた本当の家族じゃないか」

彼女は絶縁状を兄たちの顔に叩きつけ、冷ややかに笑った。
「車が壁にぶつかってから、ようやくハンドルを切ることを覚えたのね。株が上がってから、ようやく買うことを覚え、罪を犯して判決が下ってから、ようやく悔い改めることを覚えた。残念だけど、私は――許さない!」
離婚を告げたら、見知らぬ夫が泣き出した

離婚を告げたら、見知らぬ夫が泣き出した

24.7k 閲覧数 · 連載中 · 神楽坂奏
彼女は十九年間、家に養われた偽の令嬢だった。真の令嬢の身代わりとして、顔も見たことのない瀕死の男に嫁がされることになった。

孤児となった自分の人生は悲惨なものになると思っていたが、姓を変えてからの彼女は、一人で見事に人生を切り開いていった。

彼は海城の権力者の代表格で、手段を選ばず冷酷無情だと噂されていた。彼の傍にいる小さな萌え萌えした子供の生母については、海城最大の謎とされていた。

ある日、彼が病に倒れて昏睡状態の時、なんと女が彼の部屋に忍び込み、彼を襲ったのだ!

彼は全市を挙げて犯人を捜索したが、まさか「元凶」がずっと自分の目の前で跳ね回っていたとは思わなかった。しかも、息子の先生だったのだ!

事が発覚すると、彼は彼女を壁に押し付け、顎を掴んで言った。

「先生、随分と派手に遊んでくれたじゃないか」

彼女は封印されていた結婚証明書を取り出した。

「私があなたを襲ったのは、合法よ」

それ以来、彼は彼女を骨の髄まで愛し、天にも昇るほど溺愛した。

「彼女はなかなかやり手ね。家の若旦那の継母になるために、わざわざ幼稚園の先生になったのよ」

「名門の継母なんてそう簡単になれるものじゃないわ。一ヶ月後には家から追い出されるに違いないわ!」

翌日、彼女はSNSで親子鑑定書の写真をアップし、こう添えた。

【申し訳ございません、実の子でした!】
妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

389.3k 閲覧数 · 連載中 · 蛙坂下道
鈴木七海は、中村健に好きな人がいることをずっと知っていた。それでも、彼との結婚を選んだ。
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

96.1k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
裏切られた後に億万長者に甘やかされて

裏切られた後に億万長者に甘やかされて

719.8k 閲覧数 · 連載中 · FancyZ
結婚四年目、エミリーには子供がいなかった。病院での診断が彼女の人生を地獄に突き落とした。妊娠できないだって?でも、この四年間夫はほとんど家にいなかったのに、どうやって妊娠できるというの?

エミリーと億万長者の夫との結婚は契約結婚だった。彼女は努力して夫の愛を勝ち取りたいと願っていた。しかし、夫が妊婦を連れて現れた時、彼女は絶望した。家を追い出された後、路頭に迷うエミリーを謎の億万長者が拾い上げた。彼は一体誰なのか?なぜエミリーのことを知っていたのか?そしてさらに重要なことに、エミリーは妊娠していた。
クズ男の叔父さんと結婚したら、溺愛されすぎ

クズ男の叔父さんと結婚したら、溺愛されすぎ

14.4k 閲覧数 · 連載中 · 佐藤製作所
安田美香は彼氏の藤原辰が本当に自分のことを好きかどうか試そうと思い、自分が誘拐されたふりをして藤原辰を脅したのですが、藤原辰は安田美香のことを全く気にかけず、むしろ安田柔子のことをもっと心配していました。安田美香が失望のどん底にいたその時、クズ男の元カレである叔父の藤原時が駆け込んできました。
婚約破棄後、私はヤクザの組長と結婚した

婚約破棄後、私はヤクザの組長と結婚した

28.1k 閲覧数 · 連載中 · やもり
裏切りと陰謀が渦巻く世界で、妃那(えな)は突然の誘拐事件に巻き込まれる。
救いの手を差し伸べたのは謎めいた男・葉夜(かなや)だったが、彼の真意は読めない。
一方、妃那の宿敵であり自信家の祈葉(いのか)は、自らの美貌と魅力を武器に黒社会の頂点を目指すが、
思いもよらぬ残酷な試練に追い込まれていく。
誤解と嫉妬、愛と憎しみが絡み合い、
それぞれの思惑がやがて一つの危険な運命へと収束していく――。
本物令嬢の正体がばれました

本物令嬢の正体がばれました

39.3k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
新谷南は新谷家で二十年も育てられたのに、本当の娘が戻ってきた途端、あっさり家を追い出された。

デザイン部のディレクターの席? 本当の娘へ。
何千万円もの価値がある婚約話? 本当の娘へ。

会社中の人間が、彼女という「野良扱いの娘」がどう転げ落ちていくか、笑いものにしようと様子をうかがっていた。

そんなある日、世界限定二十台の高級バイクが会社の前に止まる。降りてきた不良っぽいイケメンが言った。

「妹、兄貴と一緒に帰るぞ」

新谷家の人間「……は?」

そのあとで彼らはようやく知ることになる。

彼女こそ、国内外の美術館の館長たちが面会待ちの列を作る「南先生」と呼ばれるアーティストであり、
新谷グループの全受賞特許の名義人であり、
さらに、伝説の「国家並みの資産を持つ」と噂される周防家の、本当の長女だということを。

大手財閥の若き当主は、封印していた婚約書を取り出し、薄く唇を吊り上げる。

「なるほど。俺の本当の婚約者は、君だったわけか」
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

539.3k 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
初恋よ、引き下がれ!

初恋よ、引き下がれ!

34k 閲覧数 · 連載中 · 午前零時
結婚してから、夫が私に触れたことは一度もなかった。
私は、彼を無性愛者なのだと思い込んでいた。……あの日、彼の裏切りを知るまでは。

夫の浮気が発覚したのは、相手の女が病院に運ばれたからだった。二人の行為があまりに激しかったせいだという。

そして、何よりも私を打ちのめしたのは、その相手が――私の実の妹だったという事実だ。

その瞬間、心臓を煮えたぎる油に放り込まれたような、耐え難い激痛が全身を貫いた。
社長の奥様は、世界を震撼させる

社長の奥様は、世界を震撼させる

62.2k 閲覧数 · 連載中 ·
青山光は、最も信頼していた親友と男に共謀され、殺された。
亡くなる前に安田光は知っていた。自分を最も愛してくれていたのは青山雅紀だ。
彼は青山光名目上の夫である。彼は彼女の死を知ったとき、殉情した。
青山光はその時初めて、男が自分の手首を切り裂いていたことに気づいた。鮮血は瞬く間にシーツを赤く染めていく。
「やめて」青山光ははっと目を覚ました。
額には冷や汗が滲み、体は氷のように冷たい。目を開けると、そこは見覚えがあるようで、どこか見慣れない光景だった。
自分は死んだのではなかったか?
ここはどこ?
青山光はついに悟った。自分は生まれ変わったのだ。
生まれ変わったからには、青山光はあの二人に必ず代償を払わせると誓った。そして同時に、青山雅紀を守り抜くのだ。