地獄の七年を生き延びた私は、マフィアのドンからついに逃げ出した

地獄の七年を生き延びた私は、マフィアのドンからついに逃げ出した

渡り雨 · 完結 · 27.9k 文字

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紹介

私は冷酷非道なマフィアの夫のために三人の子どもを産んだ。
そしてそのたびに、彼は血に濡れたシーツから生まれたばかりの赤ん坊を引きはがし、そのまま不妊症の姉の元へと差し出した。

七年間、私は電気ショック療法と残酷な監禁に耐え続け、
「完璧な絵に描いたような家族」を完成させるための、ただの繁殖用の器に成り下がった。

彼は、私の心なんてとっくに折れていると思い込んでいた。
だからこそ暗殺者たちが襲ってきたとき、彼はためらいもなく、私を人間の盾として銃弾の前に突き出したのだ。

自分の「真実の愛」を守るために――
彼は、血を流し傷だらけの私の体を、完璧な身代わりとして凍てつく水牢に投げ込んだ。

少しばかりの憐れみを投げ与えておけば、私は犬のように彼のもとへ這いつくばって戻ってくると、彼はそう信じていた。

だが、それは大間違いだった。

骨まで凍えるような冷水に飲み込まれたとき、私は取り乱して暴れたりしなかった。
ただ静かに微笑み、黒い深淵へと沈んでいく自分の体を任せたのだ。

龍之介は決して想像もしなかっただろう。
自らの手で死体安置所へ送った、あの冷たく息絶えたはずの死体こそが、
私が七年もの苦痛の末に練り上げた「完璧な脱出」だったなどとは。

彼は私から子どもたちを奪い、私の尊厳を一滴残らず踏みにじった。

だから今度は、私が彼からすべてを奪ってやる番だ。
彼が愛してやまないものを、一つずつ、じわじわと――
その帝国を、その権力を、そして彼が永遠に自分のものだと思い上がっていた「愛」を。

チャプター 1

 郷田家の私設精神科施設から解放されて二年後、私は再び身籠っていた。

 今度は、声を上げることもなかった。

 十ヶ月に及ぶ激しい拒絶反応と、地下の診療所での無麻酔分娩に耐え抜いた私には、死んだような目で虚空を見つめる気力しか残されていなかった。

 夫である郷田龍之介が、血まみれのシーツから赤ん坊を抱き上げ、私に一瞥もくれることなくおくるみに包んだ時でさえ、私は瞬き一つしなかった。

 雪奈は、龍之介にとって決して触れてはならない、執着の対象だった。事故によって子供を産む体を奪われた彼女の代わりに私が郷田家に迎えられた理由はただ一つ――機能する子宮を持っていたからだ。

 冷たい石壁にすがりつきながら、私は震える体を引きずって地下の診療所から上へと向かった。終わりの見えない廊下を一歩進むたびに縫合したばかりの傷口が引き裂かれ、薄いガウンに温かい血が滲んでいく。

 目の前が真っ暗になるほどの激痛を飲み込み、私は当主であるドン・源蔵の重厚なオーク材のデスクの前に立った。

「七年です、ドン」彼の手にある黒曜石のロザリオから目を逸らし、デスクへと視線を落とす。

「契約は完了しました。私を解放してください」

 ロザリオを弾く音が止んだ。老齢のドンは重い瞼を持ち上げ、私のこけたくぼんだ頬をなぞるように見つめた。

「龍之介を恨むな」砂のように乾いた声で彼は言った。

「雪奈はあいつの命を救うために体を壊したのだ。あいつが子供を奪うのは、雪奈がこの家で生きていくための理由を与えるためでしかない」

「恨むだなんて、滅相もありません」私は床のタイルに向かって呟いた。

「取引は取引です。私の時間は終わりました。借りは返しましたし、今はただ自由が欲しいのです」

 書斎は死のような静寂に包まれた。

 長い沈黙の後、源蔵は重いため息をついた。

「本当に出て行くつもりか? 腹を痛めて産んだ三人の子供たちを、それほど冷酷に見捨てられるというのか」

 背筋に激しい悪寒が走った。苦々しく、壊れたような笑みが私の唇を歪める。

 私に選択肢などあったとでも言うのだろうか。

 四年前、嵐の吹き荒れる夜。私は第二子である美亜を出産し、出血多量で死にかけていた。

 雨に濡れたスーツ姿のままの龍之介は、顎をしゃくって部下たちに合図を送り、綺麗に拭われたばかりの赤ん坊をすぐに連れ去るよう指示した。

 私は狂ったように暴れ回り、血塗れのシーツを握りしめながら叫んだのを覚えている。

「私の子よ! 返して!」

 だが、龍之介はただ私を見下ろすだけだった。その灰緑色の瞳には、言うことを聞かないペットに向けるような、微かな苛立ちが浮かんでいた。

「最近、雪奈の鬱が酷くてね。彼女のそばには、生きている血肉が必要なんだ。お前は彼女の妹だろう。どうしてもう少し物分かりよくできないんだ?」彼は身の毛もよだつほどの無関心さで呟いた。

「いい子だから、手放しなさい。子供ならまた作ればいい」

「跡継ぎとして玲央をあげたじゃない! それじゃ足りないの!?」

「彼女は娘を欲しがっている。絵に描いたような、完璧な家族をね」

 その瞬間、私の理性の糸が切れた。

 その夜、私は見張りの手首を噛みちぎり、点滴のスタンドをなぎ倒して、眠る美亜を胸に抱きしめながら土砂降りの雨の中へと逃げ出した。

 屋敷の門をよじ登ろうとしたその時、子供の声が雨音を引き裂いた。

「あの狂った女を捕まえて! 僕の妹を盗んだんだ!」

 全身の血が凍りついた。勢いよく振り返ると、そこには長男である二歳の玲央がいた。龍之介の生き写しのようなその幼い顔は、恐怖と絶対的な嫌悪に歪んでいた。

 武装した警備員たちに知らせたのは、彼だったのだ。

 あの夜以降、龍之介は私が重度の産後精神病であると宣言し、一族の私設精神科施設に私を監禁した。

 精神安定剤。革の拘束具。電気ショック治療器の不吉な駆動音。私の反抗心が完全に粉砕されるまで、高圧電流が脳を焼き尽くし続けた。

 今でも、子供たちのことを考えるだけで、食いしばった顎に焼け焦げた銅のような幻の味が蘇ってくる。

 私は逆らうことの代償を学んでいた。

 ドン・源蔵の瞳に、珍しく同情の光が揺らめいた。

「お前の父親が組織の身代わりとなって命を落とした時、わしは幹部たちの反対を押し切り、お前を守るために龍之介と結婚させた。まさか、それがお前をここまで壊してしまうとはな。よかろう。離縁状を用意させよう。部屋に戻りなさい」

 私は片膝をつき、彼の重厚な金の指輪に唇を押し当てた。そして、震える足を引きずりながら、自分の寝室へと戻った。

 ドアを押し開けると、窓辺で龍之介がぎこちない手つきで赤ん坊をあやしていた。

 しかし、腕の中の赤子を見つめるその悪名高き冷酷な男の顔には、珍しく微かな優しさが浮かんでいた。

 物音に気づき、彼は顔を上げた。

「洗礼式の名前は、雪奈がもう決めている。琉佳だ」

 私は爪が手のひらに食い込むほど拳を握りしめた。十ヶ月の苦しい妊娠期間に耐え、私の肉体から切り離された命は、気高い姉が名前をつけるという束の間の娯楽を提供するためだけのものだった。

 喉の奥に広がる血の味を飲み込む。

「最初、あなたは雪奈に跡継ぎが必要だからと玲央を奪ったわ。二度目は、彼女が男の子と女の子の『完璧な』組み合わせを望んだからと美亜を奪った。今度の言い訳は何?」

 彼は赤ん坊を抱え直し、何気ない様子で言った。

「雪奈が言うには、最近玲央が反抗的らしい。彼女は寂しがっていて、大人しく寄り添ってくれる赤ん坊を欲しがっているんだ」

 彼は琉佳を抱いたままソファに腰を下ろし、鋭い視線を私に向けた。

「今から彼女の部屋へ連れて行く。別れのキスをするか?」

 彼の広い肩が、見慣れた緊張感を帯びるのに気づいた。

 彼は身構えていた。私がいつものようにヒステリックな絶望に駆られ、彼に飛びかかってくるのを待っていたのだ。私を服従させるためのアメとムチの準備はできているのだろう。

 だが今回、私は前には進まなかった。半歩、後ろへ下がったのだ。

「必要ないわ」私は視線を落として言った。

「雪奈がしっかり面倒を見てくれるでしょうから」

 龍之介はひどく顔をしかめた。その氷のような冷静さが、本物の当惑によって乱されていた。

「十ヶ月も腹に抱えておいて、今は顔を見る気すらないというのか?」彼はギリッと歯を食いしばった。

「いつからそんなに冷酷になったんだ?」

「安心してください」ガラスのように脆い声で私は囁いた。

「誓います。二度と姉から子供を奪おうだなんてしません」

 精神科施設での焼け焦げるような感覚を思い出すだけで、私の体は純粋な本能から降伏してしまう。もしもう一度過ちを犯せば、私は本当に生きては帰れないだろう。

 龍之介は怒りに任せて口を開き、明らかに私を怒鳴りつけようとしたが、彼のスマートフォンが震えた。雪奈専用の着信音だ。

 電話に出た瞬間、彼の瞳の奥の氷は瞬時に溶け去った。甘く宥めるような言葉を囁きながら、彼は赤ん坊を抱いてドアへと歩き出す。

 敷居を跨ぐ時、彼は立ち止まり、振り返った。もしかすると、私の空虚な姿が、ついに彼の中のほんの一滴の憐れみを呼び覚ましたのかもしれない。

 彼の視線は和らぎ、寛大な恩恵を授けるように言った。

「約束する。これで最後だ。次は、お前が育てていい」

 私は顔を上げることすらしなかった。

 重い鍵の音が響き渡った時初めて、七年間の臆病な麻痺が剥がれ落ちた。その代わりに現れたのは、死のように冷たく、氷のように研ぎ澄まされた静寂だった。

 マットレスの縫い目の奥深くに手を伸ばし、隠しておいた通信機を取り出すと、私は東日本にいる忠実な部下たちへ暗号化された指令を送信した。

『ジェット機を用意しろ。七日後に脱出する。私の席を取り戻しに行く』

 この激しく痛めつけられた体が、もう二度と「次」を産めない体になっていることなど、龍之介は永遠に知る由もない。

 この地獄に耐え忍んだ七年間は終わった。もう、行く時間だ。

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