紹介
家では妹、海野瀬千保(うみのせ ちほ)のための誕生日パーティーが開かれていた——そう、私たち姉妹は同じ誕生日。だがこの家で、祝われる価値があるのは彼女の誕生日だけだ。
物置で私の体がゆっくりと腐っていく中、リビングからは笑い声とバースデーソングが聞こえてくる。彼らは私がまた「癇癪を起こしている」とでも思っているのだろう。私がどんな苦しみを経て死んだのかも知らずに。
さらに皮肉なことに、私が5年もの歳月をかけて彼女の代わりに書いた音楽作品が、彼女を世間の言う「天才作曲家」に仕立て上げた。そして私、本物の創作者は、ただ嫉妬深いだけの姉として扱われた。
腐敗臭に導かれて彼らがようやく私の死体を見つけた時、すべてはもう手遅れだった。
だが、死は、私の復讐の始まりに過ぎない。
私を傷つけた者すべてに、その代償を払わせる。
私が最も愛した、あの人たちにさえも。
チャプター 1
私が死んだのは、自分自身の誕生日だった。
家族は祝い事に夢中で、そのことに気づきもしなかった。
誰もが千保のパーティーの飾りつけに追われ、私がまた癇癪を起こしていると愚痴をこぼしながら、かくれんぼに興じているだけだ。
私はリビングの天井近くを漂いながら、母さんが等身大のテディベアを抱えて入ってくるのを見下ろしていた。
「これ、千保が三ヶ月も前から欲しがっていた限定版なのよ!」母さんは興奮気味に声を上げ、テディベアを慎重にソファへ座らせる。
「四時間も並んだんだから」
父さんがそれに続き、特注のドレスカバーをまるで至宝のように大事に抱えている。
「皺にならないようにな。パリから空輸させたんだ」
最後に直利が入ってきた。手には「僕らの小さなお姫様、千保へ」と書かれたケーキの箱。
今日が私の誕生日でもあることなど、誰も気にかけていない。
「千保、座って休みなさい」父さんはすぐに彼女へ駆け寄る。
「疲れただろう? 残りはパパたちに任せればいい」
千保は、去年の誕生日に私が欲しがっていたのに買ってもらえなかった、あの白いワンピースを着ていた。彼女は甘ったるい猫なで声で言う。
「平気よ、パパ。私にも手伝わせて」
「だめよだめ。今日の主役はお姫様なんだから、何もしてはいけないの」母さんは手をふりながら言った。
「手伝いなら七奈美にさせればいいわ」
直利が二階に向かって声を張り上げる。
「七奈美? 降りてきて手伝え。今日が自分の誕生日だからって、千保に全部押し付けられると思うなよ」
私たちの誕生日は「千保に奉仕するための日」であると、誰もが当たり前のように認識している。
過去二十八年間、ずっとそうだったように。
私は直利の電話に出られなかった。彼は眉をひそめ、スマホを取り出して私の番号を鳴らした。
着信音が、納戸の方から響いてくる。
「おかしいな」直利が呟く。
「どうしてあいつの携帯が……」
「お姉ちゃん、お風呂に入ってるのかも」千保が自然な仕草で近づき、電話を切らせた。
「直利、飾りつけ手伝って。お姉ちゃんの好きなスタイル、私知ってるから~」
直利は優しく彼女の肩に触れた。
「いいんだ、休んでてくれ。七奈美が来るのを待つよ」
千保が頷く。
直利の穏やかな表情は一瞬で消え失せた。彼は再び私の番号にかけ、今度は留守番電話にメッセージを残す。
「七奈美、いい加減に降りてこい。もうすぐパーティーが始まる。今日は千保のための祝いなんだ、場の空気を壊すな」
母さんがキッチンから顔を出し、呆れたように目を回してみせる。
「七奈美ったら、また癇癪を起こしてるのね」
「自分の思い通りにならないと、すぐ姿を消すんだ」直利は苛立ち紛れにスマホをポケットにねじ込んだ。
「誰かが機嫌を取りに来るのを待ってるのさ」
父さんはプレゼントを開封しながら、顔も上げずに言った。
「甘やかされて育ったからな……このパーティーの真の主役は千保だ。七奈美なんか来ても来なくてもどうでもいい。放っておけ」
そこでまた、千保が口を開く。
「パパ、そんな言い方しないで……今日はお姉ちゃんの誕生日でもあるのよ。お姉ちゃんがいなきゃお祝いできないわ。私が見つけてくる」
「千保は本当に優しい子ね」母さんは愛おしそうに千保の髪を撫でた。
「どこかの誰かとは大違いだ」直利も同意して頷く。
私は千保が納戸へ向かうのを見ていた。
彼女は知っている。
私がどこにいるのか、彼女だけは知っているのだ。
千保は納戸のドアを足で蹴り開けた。
懐中電灯の光が雑多な荷物の山をなぞり、隅に転がっている私を照らし出す――あり得ない角度にねじ曲がった首、半開きの目、口角にこびりついた乾いた血。
彼女は一瞬ぎくりとして口元を押さえたが、それは恐怖からではない。こみ上げる笑いを必死に噛み殺すためだった。
彼女がしゃがみ込み、つま先で私の脛を軽く小突くのが見えた。
「ねえ、なんで死んだふりしてんの? 起きなよ、お姉ちゃん」
返事はない。私はもう死んでいるのだから。
だが彼女は図に乗り、私の顎を掴んで左右に揺すった。
「チッ、メイク崩れてんじゃん……ブッサイク」
「千保? そこにいるのか?」リビングから直利の声がする。
千保は素早く立ち上がり、私をゴミの山へさらに深く押し込んで隠すと、その場を離れた。
「お姉ちゃん、いい夢見てね」彼女は小声で囁いた。
「今夜のパパとママのお姫様は、私ひとりだけなんだから」
そして納戸を出るなり、彼女は直利の胸に飛び込んだ。
「ごめんなさい、直利、私が悪いの。あちこち探したけど、お姉ちゃん見つからなくて」
直利は彼女の髪を撫でて言った。
「あいつのことは気にするな。今日は君の日なんだ」
その光景を眺めながら、私は苦笑する。
確かに彼らの目には、私たちの誕生日はどちらも千保のものとして映っているのだろう。
過去の誕生日を思い出す――ケーキにはいつも「千保、お誕生日おめでとう」と書かれ、プレゼントは「千保が先に選ぶ」のがルール。パパとママが決める私の誕生日の願い事は、決まって「千保が幸せになりますように」だった。
だが今年、その願いを口にすることはもうない。
一ヶ月前、医者から心不全で余命いくばくもないと宣告された。
診断書をテーブルの上に突きつけたというのに、両親はただ笑って、私が「同情を引くために可哀想なふりをしている」と言い放った。
しかし彼らは知らない。私が千保と張り合おうなどと考えたことすらないことを。私はとっくに、自分が「千保の引き立て役」であることを受け入れていた。それどころか、千保への誕生日プレゼントまで入念に準備していたのだ。
今年の唯一の願いは、家政婦の佐藤さん(私を気にかけてくれるたった一人の人)と静かに過ごし、そしてひっそりとホスピスに入ることだけだった。
だが、その日は来なかった。
今朝、家にいた私の元へ暴漢たちが押し入ってきた。彼らは私を犯し、その様子を動画に収めた。
解放してくれと懇願したが、それは彼らをさらに興奮させるだけだった。彼らは何度も私を辱め、笑顔を作れ、ポーズを取れと強要し、ついに私が気絶するまで続けた。
意識が途切れる寸前、ポケットに入っていたボイスレコーダーに手が触れた――音楽のアイデアを記録するために使っていたものだ。
私は録音ボタンを押した。
「海野瀬千保に伝えろ。動画は撮ったと」服を着ながら男の一人が言った。
「これで妹が邪魔することは二度とないとな」
最後に、彼らは私を納戸に放り込んで立ち去った。
目を覚ますと、スマホは手の届く範囲に落ちていた――だが腕が折れていて、掴むことができない。
私は顎を使って少しずつスマホを手繰り寄せ、ようやく画面のロックを解除した。
連絡先リストの一番上にあるのは直利の名前だ。電話をかけたが、切られた。両親にもかけたが、同じく切られた。
最後に直利から返信が来た。
『千保のパーティーで忙しい。よほどの急用でない限り、煩わせるな』
最初のデートで、彼が約束してくれた言葉を覚えている。
『僕の携帯は二十四時間電源を入れておく。君からの電話なら、たとえ地球の裏側にいてもすぐに飛んで帰るよ』
あの時、私は大袈裟すぎると笑ったものだ。彼がすぐに駆けつけなければならないような事態なんて、私に起こるはずがないと思っていたから。
まさかその時が本当に来たというのに、彼が電話に出ることさえしてくれないとは、夢にも思わなかった。
一縷の望みをかけて、最後にもう一度だけ直利に発信した。彼はまたしても、即座に切断した。
その瞬間、悟った――彼はもう、私のことなどどうでもいいのだ。
別のメッセージが届く。
『七奈美、もう電話してくるな。一体何がそんなに重要なんだ? わざと邪魔をするのはやめろ。今夜のパーティーで会おう』
そのパーティーに、私が出ることはない。彼らが私に会うことは、もう二度とない。
私は死んだ。
暗い納戸の中で、心不全により命尽きたのだ。
彼らが私を見つけた時、そこにあるのは納戸に打ち捨てられねじ曲がった私の死体と、私が彼らのために心を込めて用意した、別れのプレゼントだけだろう。
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「ふぅん、あなた誰?」
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