偽りの結婚と、奪われた人生。離職までの三十日間、私が仕掛けた地獄の全貌

偽りの結婚と、奪われた人生。離職までの三十日間、私が仕掛けた地獄の全貌

Eleanor · 連載中 · 187.5k 文字

401
トレンド
401
閲覧数
0
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

結婚は、最初からしていなかったことになっていた。流産の果てに孤独な目覚めを迎えた私の手元には、離婚届さえも届かない。
夫は今も、奪い合う女と共に笑っている。――さようなら、私の愛した人。
そして、地獄へようこそ。離職期限は三十日。偽りの結婚、拘留の真実、放火事件の全貌。
私が積み上げた証拠は、あなたの大切な女の正体を暴き、あなたを奈落へ引きずり込む。
三十日後、私は自由になる。そしてあなたは、永久に救われない廃墟の中で生きるのだ。

チャプター 1

朝7時。谷口美桜は痛みの中で目を覚ました。ベッドに広がる血の染みが、目に刺さるほど赤い。

昨夜、山﨑蓮に狂ったように抱かれ、何度も求められた記憶が一気によみがえる。

目覚ましが鳴った瞬間、彼はさっと身体を離し、服を着替えると、そのまま出ていった。ひと言すら残さずに。

最後は彼女自身が救急へ電話し、病院に運ばれて――そこで初めて、流産したのだと知った。

スマホがぶるぶると震え続ける。広報部の小山誠子から、メッセージが何件も届いていた。

【谷口さん、山﨑社長がトレンド入りしてます! 下山さんと空港で撮られました!】

【広報部の電話が鳴りっぱなしです! いつ会社に来られますか?】

ニュースも立て続けに流れてくる。写真の中では、山﨑蓮が、つい先日夫を亡くしたばかりの下山柚奈をきつく抱きしめ、離れがたそうにしていた。

山﨑蓮の秘書――それが世間の目に映る、彼女の唯一の肩書きだ。

誰も知らない。彼女が本当は山﨑蓮の妻であることを。

そして、下山柚奈の事故死した夫が、山﨑蓮にとって戸籍上の兄だったことも。

谷口美桜は洗面台に手をついた。鏡に映る自分は、まるで幽霊みたいに青白い。

深く息を吸い、短く打ち返す。

【すぐ行きます】

子宮内容除去の処置を終えると、看護師が書類を差し出した。

「ご家族の方は? こちら、署名が必要です」

「自分で書きます」

「ご結婚されていますよね? マタニティ保険が使えれば、一部は戻りますよ」

谷口美桜のペン先がぴたりと止まる。

「はい。結婚して3年になります」

看護師は書類を受け取り、数分後、困った顔で戻ってきた。

「……ご結婚、されていますか? システム上では未婚になっていて、保険適用ができません」

「未婚……?」

谷口美桜は信じられないまま、看護師を見返した。

しばらくして、自分の声がひどく遠く聞こえた。

「……システムの不具合かもしれません。自費でお願いします」

病院を出た彼女は、その足で市役所へ向かった。

照会結果は病院と同じだった。

彼女の婚姻状況は、ずっと未婚。

山﨑蓮もまた、未婚のまま。

3年前、山﨑蓮が結婚証明書を渡してきたとき、金があれば役所に行かなくても済むのかと、ぼんやり感心したことがある。

けれど違った。

最初から最後まで、彼と自分は法の上では赤の他人だったのだ。

スマホは今も鳴り続けている。小山誠子のほうは、もう限界なのだろう。

谷口美桜は通りがかりのタクシーに飛び乗り、そのまま会社へ向かった。

会社の前は記者で埋め尽くされていた。彼女は脇の入口から中へ入る。

すれ違うたび、あらゆる視線がまとわりついた。哀れみ、好奇心、面白がる気配。

「谷口さん!」

小山誠子が駆け寄ってくる。

「山﨑社長に電話がつながりません。どうしましょう?」

「公式声明を出して。山﨑社長は、配偶者を亡くした知人を礼儀として出迎えた。あのハグは慰めの範囲内――そういう説明で」

歩きながら告げる声は、異様なほど静かだった。

「いくつか媒体にも声をかけて。30分後、私が記者会見を開く」

「でも、あの写真……」

「写っているのは抱き合ってる場面だけよ。それ以上は証明できない」

谷口美桜はエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押した。

「言った通りにして」

扉が閉まる。外の喧騒がすべて遮断された。

彼女は壁にもたれた。下腹部の痛みがじくじくと神経を刺す。

記者会見は驚くほど滞りなく終わった。

山﨑蓮と下山柚奈の関係を釈明するのは、これで17度目だ。慣れたものだった。

オフィスへ戻ると、アシスタントの太田美咲が後を追ってきて、声を潜めた。

「谷口さん、山﨑社長がさっき辞令にサインしました。下山さん、来週から入社して製品開発部長に就任するそうです」

書類をまとめていた谷口美桜の手が、ほんの一瞬だけ止まる。

そこは、もともと自分の席になるはずだった。

半年かけて追った案件。

契約書は、3日徹夜して自分でまとめたもの。

「……そう」

自分の口から出た声は、ひどく平坦だった。

「あと……」

太田美咲は言いにくそうに続ける。

「谷口さんが抱えてた案件もいくつか、下山さんに回されました。契約までは済んでるから、以後は下山さんに引き継がせればいいって」

谷口美桜は微笑んでうなずいた。目の奥がじわりと熱い。

ふいに思い出す。

昨夜、山﨑蓮が彼女を抱きながら、熱に浮かされた声で漏らした名前を。

「……柚奈」

あのときは聞き間違いだと思った。

でも、違った。

ずっと考えていたことがある。

もう、迷う理由はなかった。

谷口美桜は朝から用意していた退職願を持ち、そのまま人事部へ向かった。

「山﨑社長には報告済みですか?」

人事部長の葉山千春が、退職願を見て目を見開く。

谷口美桜は穏やかに言った。

「私の上司は社長ではありません。報告は不要です。通常の手続きで進めてください」

今朝、山﨑蓮が自ら下山柚奈の人事異動にサインしたことを思い出し、葉山千春は何か言いかけ、結局のみ込んだ。

「……分かりました。30日の引き継ぎ期間が終われば、退職できます」

「ありがとうございます」

背を向けて人事部を出て、オフィスへ戻った瞬間、谷口美桜はようやく長く息を吐いた。

むしろ感謝すべきかもしれない。

山﨑蓮が偽の結婚証明書を寄越したおかげで、離婚手続きすら要らないのだから。

あと30日。

それだけで、ここから完全に消えられる。

すべてを捨てて。

彼も含めて。

スマホが震えた。山﨑蓮からのメッセージだった。

【鎮痛剤1箱とホットミルクを持ってこい。金悦ホテル010号室】

簡潔で、命令口調で、当然のような文面。

続いて、下山柚奈からLIMEが届く。

【美桜、私、帰ってきたよ。蓮が歓迎してくれるの。新しく生まれ変わったお祝いだって。樹が亡くなったばかりなのに、こんなに派手にするのはよくないって思ったんだけど、蓮が新しい人生を始めるべきだって言ってくれて。美桜も祝福してくれるよね?】

谷口美桜は画面を見つめたまま、ふっと冷たく笑った。

祝福?

夫の遺骨もまだ冷めきらないうちに義弟を誘い始めたことを?

人の努力の結晶を、当然のように奪っていくことを?

それとも、流産した女に向かって、こんな胸の悪くなる誘いを送ってくることを?

彼女は車のキーをつかみ、エレベーターへ乗り込んだ。

鏡張りの扉に映る顔は、血の気がまるでない。

ただ目だけが、ぞっとするほど冴えていた。

金悦ホテル。

部屋の扉を開けると、山﨑蓮がソファに座り、その隣には下山柚奈がぴたりと寄り添っていた。

ほかには取引先の横山社長、それに山﨑グループの役員が数名。

「谷口さん、来た来た!」

横山社長がぱっと顔を輝かせる。

「ちょうどいい。山﨑社長が、下山さんは君の後任だって言ってたんだ。今後の案件は彼女が見るんだろう? なら、ほら。この一杯、下山さんに敬って、引き継ぎの挨拶といこうじゃないか」

下山柚奈は慌てて手を振った。

「横山社長、そんな。谷口さんほど有能な方の後なんて、とても……。私はただ、蓮の負担を少しでも軽くしたいだけなんです」

「柚奈、謙遜するな。君なら十分やれる」

山﨑蓮が口を開く。

そして谷口美桜へ向けた視線だけ、すっと冷えた。

「薬と牛乳は」

谷口美桜は無言でテーブルに置いた。

下山柚奈が申し訳なさそうな顔を作る。

「ごめんなさい。私、そこまでしなくていいって言ったのに。蓮が心配だからって、わざわざ薬を届けさせて……」

口ぶりには、抑えきれない優越感がにじんでいた。

山﨑蓮は牛乳のふたを開け、自分で温度を確かめると、ちょうどいいと判断してから彼女に渡す。

谷口美桜はその光景をじっと見つめた。

そのとき、ようやく分かった。

愛されているかどうかなんて、ひと目で知れる。

「薬を届けるのが遅れたんだ。罰は受けてもらわないとな」

横山社長が笑いながら酒を3杯注ぎ、目の前へ滑らせてきた。

「自分で3杯、どうだ?」

「申し訳ありません。薬を飲んでいるので、お酒は飲めません」

谷口美桜は静かに断る。

「飲み会があるって分かってたのに、わざわざ薬を飲んだの?」

下山柚奈が目を丸くして首をかしげる。

「美桜、もしかして私が戻ってきて案件を引き継ぐの、あまり歓迎してない? そういうことなら、私から蓮に――」

「こいつにそんな度胸はない」

山﨑蓮が遮った。

だが谷口美桜を見る目には、すでに露骨な警告が宿っている。

「たかが数杯で死にはしない。柚奈は今日は体調が悪いんだ。代わりに横山社長へ飲め」

谷口美桜はグラスの透明な液体を見つめた。

胃がきりきりと縮む。

やがて顔を上げる。口元には、まだ笑みがあった。

「昨夜、あなたと寝たとき、私が出血したのも……見ていたでしょう?」

最新チャプター

おすすめ 😍

最強ベビーと難攻不落のママ

最強ベビーと難攻不落のママ

19.7k 閲覧数 · 連載中 · 彩月遥
母親が再婚したため、田中春奈はずっと自分が家の中で異質な存在だと感じており、義父や姉との関係も良くなかった。
しかし、思いもよらない策略による一夜の過ちで、田中春奈は家を追い出され、故郷を離れて海外で学業を続けることになった。
その間、彼女はあの正体不明の男性の子を妊娠していることに気づく。
迷った末、彼女は子どもを産むことを決意した。
5年後、故郷に戻った彼女は江口匠海と出会い、次第に彼に惹かれていく。
しかし、ある事故をきっかけに、あのときの男性が彼であったことを知るのだった。
氷の君と太陽の私

氷の君と太陽の私

36.3k 閲覧数 · 完結 · 鍋部奈
裏切られ、後悔に溺れながら死んだ私は、恐れられ冷酷な婚約者が私を救おうと身を投げる姿を見た。

運命が私を引き戻した——薬を盛られた結婚初夜、彼の腕の中で生まれ変わったのだ。これは私の二度目のチャンス。

かつて逃げ出した男こそが私の運命。彼の狂おしい愛こそが、私の最強の武器。世界が恐れる男を受け入れ、彼の姫となろう。共に、私たちを破滅させた裏切り者どもを灰燼に帰すのだ。

しかし私の突然の献身は、彼に疑念を抱かせる。心を砕いてしまった男に愛を証明するには、どうすればいいのだろう……彼の最も暗い欲望が、私を永遠に縛り付けることだと知りながら。
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

96.2k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
裏切られた後に億万長者に甘やかされて

裏切られた後に億万長者に甘やかされて

720k 閲覧数 · 連載中 · FancyZ
結婚四年目、エミリーには子供がいなかった。病院での診断が彼女の人生を地獄に突き落とした。妊娠できないだって?でも、この四年間夫はほとんど家にいなかったのに、どうやって妊娠できるというの?

エミリーと億万長者の夫との結婚は契約結婚だった。彼女は努力して夫の愛を勝ち取りたいと願っていた。しかし、夫が妊婦を連れて現れた時、彼女は絶望した。家を追い出された後、路頭に迷うエミリーを謎の億万長者が拾い上げた。彼は一体誰なのか?なぜエミリーのことを知っていたのか?そしてさらに重要なことに、エミリーは妊娠していた。
届かない彼女

届かない彼女

96.1k 閲覧数 · 連載中 · 鯨井
愛のない結婚に身を投じてしまいました。
夫は、他の女性たちが私を理不尽に攻撃した時、守るどころか、彼女たちに加担して私を傷つけ続けたのです...
完全に心が離れ、私は離婚を決意しました。
実家に戻ると、父は莫大な財産を私に託し、母と祖母は限りない愛情で私を包み込んでくれました。まるで人生をやり直したかのような幸福に包まれています。
そんな矢先、あの男が後悔の念を抱いて現れ、土下座までして復縁を懇願してきたのです。
さあ、このような薄情な男に、どのような仕打ちで報いるべきでしょうか?
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

573.1k 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
令嬢の私、婚約破棄からやり直します

令嬢の私、婚約破棄からやり直します

90.6k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
皆が知っていた。北野紗良は長谷川冬馬の犬のように卑しい存在で、誰もが蔑むことができる下賤な女だと。

婚約まで二年、そして結婚まで更に二年を費やした。

だが長谷川冬馬の心の中で、彼女は幼馴染の市川美咲には永遠に及ばない存在だった。

結婚式の当日、誘拐された彼女は犯される中、長谷川冬馬と市川美咲が愛を誓い合い結婚したという知らせを受け取った。

三日三晩の拷問の末、彼女の遺体は海水で腐敗していた。

そして婚約式の日に転生した彼女は、幼馴染の自傷行為に駆けつけた長谷川冬馬に一人で式に向かわされ——今度は違った。北野紗良は自分を貶めることはしない。衆人の前で婚約破棄を宣言し、爆弾発言を放った。「長谷川冬馬は性的不能です」と。

都は騒然となった。かつて彼女を見下していた長谷川冬馬は、彼女を壁に追い詰め、こう言い放った。

「北野紗良、駆け引きは止めろ」
億万長者の夫との甘い恋

億万長者の夫との甘い恋

78.6k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
長年の沈黙を破り、彼女が突然カムバックを発表し、ファンたちは感動の涙を流した。

あるインタビューで、彼女は独身だと主張し、大きな波紋を呼んだ。

彼女の離婚のニュースがトレンド検索で急上昇した。

誰もが、あの男が冷酷な戦略家だということを知っている。

みんなが彼が彼女をズタズタにするだろうと思っていた矢先、新規アカウントが彼女の個人アカウントにコメントを残した:「今夜は帰って叩かれるのを待っていなさい?」
跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

154.9k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
六年前、藤堂光瑠は身覚えのない一夜を過ごした。夫の薄井宴は「貞操観念が足りない」と激怒し、離婚届を突きつけて家から追い出した。
それから六年後——光瑠が子どもたちを連れて帰ってきた。その中に、幼い頃の自分にそっくりの少年の顔を見た瞬間、宴はすべてを悟る。あの夜の“よこしまな男”は、まさに自分自身だったのだ!
後悔と狂喜に押し流され、クールだった社長の仮面は剥がれ落ちた。今や彼は妻の元へ戻るため、ストーカーのようにまとわりつき、「今夜こそは……」とベッドの隙間をうかがう毎日。
しかし、彼女が他人と再婚すると知った時、宴の我慢は限界を超えた。式場に殴り込み、ガシャーン!と宴の席をめちゃくちゃに破壊し、宴の手を握りしめて歯ぎしりしながら咆哮する。「おい、俺という夫が、まだ生きているっていうのに……!」
周りの人々は仰天、「ええっ?!あの薄井さんが!?」
離婚を告げたら、見知らぬ夫が泣き出した

離婚を告げたら、見知らぬ夫が泣き出した

24.7k 閲覧数 · 連載中 · 神楽坂奏
彼女は十九年間、家に養われた偽の令嬢だった。真の令嬢の身代わりとして、顔も見たことのない瀕死の男に嫁がされることになった。

孤児となった自分の人生は悲惨なものになると思っていたが、姓を変えてからの彼女は、一人で見事に人生を切り開いていった。

彼は海城の権力者の代表格で、手段を選ばず冷酷無情だと噂されていた。彼の傍にいる小さな萌え萌えした子供の生母については、海城最大の謎とされていた。

ある日、彼が病に倒れて昏睡状態の時、なんと女が彼の部屋に忍び込み、彼を襲ったのだ!

彼は全市を挙げて犯人を捜索したが、まさか「元凶」がずっと自分の目の前で跳ね回っていたとは思わなかった。しかも、息子の先生だったのだ!

事が発覚すると、彼は彼女を壁に押し付け、顎を掴んで言った。

「先生、随分と派手に遊んでくれたじゃないか」

彼女は封印されていた結婚証明書を取り出した。

「私があなたを襲ったのは、合法よ」

それ以来、彼は彼女を骨の髄まで愛し、天にも昇るほど溺愛した。

「彼女はなかなかやり手ね。家の若旦那の継母になるために、わざわざ幼稚園の先生になったのよ」

「名門の継母なんてそう簡単になれるものじゃないわ。一ヶ月後には家から追い出されるに違いないわ!」

翌日、彼女はSNSで親子鑑定書の写真をアップし、こう添えた。

【申し訳ございません、実の子でした!】
初恋よ、引き下がれ!

初恋よ、引き下がれ!

34k 閲覧数 · 連載中 · 午前零時
結婚してから、夫が私に触れたことは一度もなかった。
私は、彼を無性愛者なのだと思い込んでいた。……あの日、彼の裏切りを知るまでは。

夫の浮気が発覚したのは、相手の女が病院に運ばれたからだった。二人の行為があまりに激しかったせいだという。

そして、何よりも私を打ちのめしたのは、その相手が――私の実の妹だったという事実だ。

その瞬間、心臓を煮えたぎる油に放り込まれたような、耐え難い激痛が全身を貫いた。
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

236.3k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」