紹介
チャプター 1
あの麻薬の売人が私をなぶり者にしていたとき、父さんのサイラス――麻薬捜査官と、母さんのヴァイオレット――市首席監察医は、妹のバレーボール準決勝の勝利を祝っていた。三年前に父さんが奴の麻薬組織を潰した報復として、男は私の喉を掻き切ったのだ。死の間際、私は父さんに電話をかけた。けれど切れる寸前、父さんはこう言った。「いい加減にしろ、今はセリーナの試合が一番大事なんだ!」
――
私の遺体は、城北にある廃棄された製薬工場で見つかった。
通報者は近隣の住民で、あまりの悪臭に耐えられなかったそうだ。
父さんと母さんは、妹のセリーナの準決勝勝利祝賀会から駆けつけたところだった。
父のサイラス・ブラックウッドのシャツの襟には、まだ宴会のゲストパスが留められたままで、母のヴァイオレット・ブラックウッドの真紅のドレスは、薄暗い工場の中で酷く場違いに見えた。
父の相棒であるコール・ラッシュが警戒線の外で待ち構え、二人にマスクを手渡す。
「ここを覚えてるか?」コールが声を潜める。「三年前に押さえたあの件、現場はここだった」
父さんは数秒間工場を見つめ、無言で頷いた。
母さんはすでに車のトランクを開け、慣れた手つきで使い捨ての防護服を着て、道具箱を取り出していた。
幾多の凶悪な現場に慣れっこなはずの二人でも、工場に足を踏み入れた瞬間、鼻をつく腐臭に思わず吐き気を催したようだった。
コンクリートの床に転がる私は、ガスで膨れ上がり、原形を留めていなかった。皮膚は汚濁した緑色に変色し、顔は潰され、首はほとんど断裂している。
たとえ彼らが私のことを真剣に「一瞥」したとしても、それが私だとは気づかないだろう。
蠅が飛び交い、空気には甘ったるい腐敗臭が漂っていた。
母さんはマスクの位置を直して深呼吸し、紫色のゴム手袋をはめた。
ふと、以前セリーナが膝を擦りむいた時のことを思い出す。母さんは同じような手袋をして傷口を洗い、痛くないかと気遣いながら優しく慰めていた。
生きている間、私がそんなふうに扱われたことなんて一度もなかった。あの優しさは、いつだってセリーナだけのものだ。
今、その手が私の膨れ上がった手首に触れる。
動きが止まった。
金属製のブレスレットが肉に食い込み、黒ずんだ血糊にまみれ、鎖の隙間には乾いた組織片がこびりついている。それは去年、私が三ヶ月分の小遣いを貯めてオーダーした特注品で、内側には家族全員のイニシャルが刻まれていた。
あの時、私は緊張と期待で胸がいっぱいだった。不器用な訪問販売員みたいに、誰かがこの気持ちを受け取ってくれることを願って。
けれどセリーナは試着するなり、金属アレルギーだと言った。父さんはその場で顔を曇らせた。「お前は、一つのことすらまともにできないのか?」
「エヴァ。セリーナは養子だけど、実の妹として接しなさい」
あの瞬間、私は必死に弁明しようとした。実の妹だと思っているからこそ、お揃いのものを作ろうとしたのに。
ただ、金属アレルギーだなんて知らなかっただけなのに。
今となっては、そんな言い訳など何の意味もないけれど。
母さんは眉をひそめ、ブレスレットをつまみ上げると、惨白な照明にかざした。
これが私からのプレゼントだったと思い出すはずだ!
それが私のブレスレットだと気づき、泣き崩れる母さんの姿さえ想像した。
だが、母さんの表情はピクリとも動かなかった。
「証拠品袋を」彼女は助手のペイトン・ウェルズに振り返った。「留め具に注意して。微細証拠が残っているかもしれない」
ブレスレットは透明な袋に入れられ、道具箱の横に無造作に置かれた。
最初から期待なんてするべきじゃなかったんだ。彼らにとって、あらゆるものは分類され、番号を振られ、ファイルされるだけの存在なのだから。
母さんは手袋を外すと、こめかみを揉んだ。「女性、二十歳前後。致命傷は頸動脈の切断だけど、死ぬ前に長時間拷問を受けている」一呼吸置いて、付け加えた。「手口に……ショーのような演出を感じるわ」
父さんは煙草に火をつけた。煙が澱んだ空気にまとわりつく。「恨みによる犯行か。あるいは見せしめだな」
父さんはコールを見た。「メディアは?」
「嗅ぎ回ってる。局は、麻薬絡みならDEA主導にするそうだ」
コールが忠告する。「ホトケはまだ挙がってない。あんたのところの二人の嬢ちゃん、最近は気をつけさせたほうがいい」
母さんは間髪入れずに答えた。「セリーナの強化合宿には二十四時間の警備がついてるわ。エヴァに関しては……あの子は好き勝手に出歩くから、私には管理しきれない」
父さんの煙草を持つ手が、ふいに震えた。
「古傷が痛むのか?」
父さんはやるせなさそうに呟く。「エヴァが買ってくる鎮痛パッチが切れて……」
言いかけて、口をつぐんだ。
それは仕事中に撃たれた手の後遺症だった。それ以来、毎週私が用意していたのだけれど、今はもう私が死んでしまったから。
コールが父さんの背中を強く叩いた。「エヴァはあんたらの実の娘だ。もう少し気長に付き合ってやれ、悪いことは言わん」
父さんは深く煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
「セリーナは準決勝の前夜、試合を見に来てくれって泣いてエヴァに頼んだんだ。エヴァのやつ、調子よく約束したくせに、結果はどうだ? 携帯は電源切れ、本人は蒸発。セリーナは姉を心配して第一セットでミスを連発、危うく敗退するところだった」
「エヴァは今になっても帰ってこない。電話にも出ず、アパートにもいない」父さんは吸い殻を地面に投げ捨て、靴底で踏み躙った。「手元で育ててない子供は、結局心がここにないんだな」
私はそこに横たわり、その言葉を聞きながら、胸が張り裂けそうだった。
父さん、母さん。
行きたくなかったわけじゃない。行けなかったの。
セリーナが試合をしていたあの日、私はもう死んでいたんだよ。
家に帰らないとあなたたちが文句を言っていた間、私はずっとこの薄暗い工場で、あなたたちを待っていた。
今、あなたたちは来てくれた。私の死体を見て、私のブレスレットに触れた。
なのに、それでも気づいてくれなかった。
これが、あなたたちの娘だということに。
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