呪われた花嫁

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大宮西幸 · 完結 · 17.9k 文字

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紹介

ダミアン・ソーンと結婚するために、私は十三回も死にかけた。

三年間で十二回の結婚式を準備し、そのすべてが私の流血で幕を閉じた。

一回目、ブライダルショップで暴走したトラックに跳ね飛ばされ、右足を粉砕骨折した。

二回目、教会でのリハーサル中に天井が突然崩落し、頭から血を流した。

三回目、披露宴のシャンパンに毒が入っており、口から泡を吹いて死にかけた。

……

マンハッタンの上流社会では、私が呪われていると噂されている。

チャプター 1

 ダミアン・ソーンと結婚するために、私は十三回も死にかけた。

 三年で十二回の挙式。そのすべてが、私の鮮血で幕を閉じたのだ。

 一回目は、ウエディングドレスの店に暴走トラックが突っ込み、私は跳ね飛ばされて右脚を複雑骨折した。

 二回目は、教会のリハーサル中に天井が崩落し、頭から血を流して倒れた。

 三回目は、披露宴のシャンパンに毒が盛られ、泡を吹いて危うく命を落としかけた。

……

 マンハッタンの社交界では、私が呪われているとまことしやかに囁かれている。

 それでも、私は彼を愛することをやめなかった。

 十三回目を迎えるまでは。

 あの雨の夜、路地裏で三人の暴漢に囲まれ、七ヶ所も刺された。胸に二つ、腹に三つ、背中に二つ。 血まみれで倒れ、虫の息だったが、奇跡的に助かった。

 傷が癒えた頃、私は偶然にもダミアンとアシスタントの会話を耳にしてしまった。

「ソーン様、今回は本当に彼女が死ぬところでした……もう止めるべきでは? もしお祖父様に知られたら……」

「止めるわけにはいかない」ダミアンは疲れ切った声で言った。「彼女の父親は俺の命の恩人だ。祖父は死んでも俺に彼女を娶らせようとするだろう。だがクソッ、俺が愛しているのはセレナだ。彼女じゃない」

「彼女が諦めない限り、この『事故』は続く。彼女が自分から消え失せるその日までな」

 震える手で、包帯だらけの身体に触れる。涙が音もなく零れ落ちた。

 愛していた男が、長年にわたり私の死を緻密に計画していたのだ。

 だが彼は知らない。今回ばかりは、本当に私と結婚する必要がなくなったことを。

アイヴィーの視点

 私は涙を拭うと、彼を問い詰めることなく踵を返し、一本の電話をかけた。

「ハリソン医師、先日の検査結果ですが……正確な余命を知りたいのです」

 受話器の向こうで、数秒の沈黙が流れる。

「グリーンさん、残念だが……癌が脳にまで転移している。持ってあと一ヶ月だ」

 一ヶ月。

 冷たい壁に背を預け、私は呆然とした後、なぜか笑いがこみ上げてきた。

 ダミアンは私を殺そうとしていたが、癌細胞のほうが彼よりずっと優秀だったらしい。

「アイヴィー?」

 振り返ると、書斎の入り口にダミアンが立っていた。

「顔色が悪いぞ」彼は眉を寄せ、私をじろじろと見た。「傷はまだ痛むのか?」

 私は彼をじっと見つめた。以前なら、その気遣うような言葉だけで涙が出るほど感動していただろう。だが今は、皮肉にしか聞こえない。

 私の沈黙に、ダミアンは苛立ちを見せた。「どうした? また式のことで拗ねているのか?」

「何でもないわ」私は視線を逸らした。

「式のことだが……」ダミアンは一拍置き、宥めるように言った。「最近延期ばかりですまない。だが分かってくれ、俺も忙しいんだ。安心していい、責任は果たすつもりだ……」

「急がなくていいわ」私は冷たく遮った。「いつでもいいもの」

 ダミアンは虚を突かれたように、驚きの表情を浮かべた。

 この三年間、挙式が「事故」で中断されるたびに、私は必死になって次の日程を決めようとしてきた。これほど無関心な態度は初めてだろう。

 彼が何か言おうとしたその時、甘ったるい声が階段から降ってきた。

「ダミアン~? どこにいらっしゃるの? 頭がくらくらして……」

 セレナ・ブレイク――ダミアンの幼馴染だ。階段の手すりに掴まりながら、ゆっくりと降りてくる彼女の顔色は青白い。三ヶ月前、心臓病を再発させてソーン家で療養することになったが、今ではこの家の実質的な主人となっていた。

「セレナ?」ダミアンはすぐに駆け寄った。「どうした、また発作か?」

「少し低血糖みたいで……」セレナは弱々しく彼の胸に凭れかかり、私を見た。「アイヴィー、ずいぶんやつれたみたいね。傷は痛む?」

「私は平気よ」素っ気なく答える。

「ならよかった」セレナはダミアンに向き直り、甘えるように言った。「ねえダミアン、ラデュレの苺タルトが食べたいの。お医者様も甘いものは良いって……でも今日は限定販売の最終日だから、きっとすごい行列よ。アイヴィーにお願いしてもいい?」

 私は無表情でその茶番劇を眺めていた。この半年、何度も繰り返された光景だ。私は名目上ダミアンの婚約者だが、実態は高給で雇われた世話係に過ぎなかった。

「ああ、もちろんだ」ダミアンは即座に頷き、当然のように私を見た。「アイヴィー、ラデュレに行ってきてくれ」

「暇じゃないの」

 廊下が瞬時に静まり返る。

「何だと?」ダミアンが目を細めた。

「暇じゃないと言ったの」私は繰り返した。

「何か重要な用事でもあるのか?」ダミアンは不機嫌さを隠そうともせず、私に詰め寄った。「アイヴィー、俺に対する当てつけか? 式のことで?」

「当てつけなんかじゃないわ」

「なら行け」命令口調だ。「セレナは体が弱いんだ。それくらいの頼みも聞けないのか?」

 セレナが好機とばかりに彼の袖を引く。「ダミアン、いいわ……アイヴィーにも急用があるのかもしれないし。私、自分で行けるから」

「だめだ」ダミアンは冷ややかに私を睨みつけた。「こいつに行かせる」

「どうして?」私は彼の目を真っ直ぐに見据えた。「ここに住んでいるからといって、あなたの言いなりにならなきゃいけないの?」

「アイヴィー・グリーン!」ダミアンが警告するような声を出した。「自分の立場をよく考えろ。ここはソーン家だ。ここの恩恵を受けている以上、ルールには従ってもらう」

「もし従わなかったら?」私は冷笑した。「どうするの? 追い出す? それとも『身の程をわからせる』つもり?」

 ダミアンの瞳が一瞬、針のように細まった。

「何を言っている?」

 セレナが不穏な空気を察知する。「アイヴィー、今日はどうしたの? なんだか変よ……体の具合が悪いの?」

「私は元気よ」私は背を向けた。「でも苺タルトは買いに行かない」

「アイヴィー!」ダミアンが怒鳴った。「行かないなら、お前の口座を凍結するぞ」

 私の足が止まる。

 なんてこと。あれは私の治療費、命綱だ。

「脅迫するの?」ゆっくりと振り返る。

「脅迫じゃない、事実だ」ダミアンは冷酷に言い放った。「ここに住み続けたいなら、俺の言う通りにしろ。嫌なら荷物をまとめて出ていけ」

「忘れるな」彼の言葉が刃のように胸に突き刺さる。「ソーン家がなければ、お前は何者でもないんだ」

 私は静かに彼を見つめた。心の中に残っていた最後の幻想が、音を立てて崩れ去る。

「分かったわ。行く」

 針のような冷たい雨の中、私はラデュレの前で三時間も並んだ。

 脳腫瘍による激痛が波のように押し寄せ、何度も意識が飛びそうになる。通りすがりの人々が囁いているのが聞こえた。

「なんてこと、あの子死にそうよ」

「雨の中並んで……可哀想に」

 もし彼らが、私の「婚約者」が真実の愛のために私をパシリに使っていると知ったら、どう思うだろうか。

 ようやく苺タルトを手に入れた頃には、すっかり日が暮れていた。私は全身ずぶ濡れで、見るも無残な姿だった。

 帰路の途中、ある高級レストランの前を通りかかり、ふと視線を向けた。

 そして、足が完全に止まった。

 巨大なガラス窓の向こうで、ダミアンがセレナに優しく食事を運んでいるのが見えた。薄暗いキャンドルの光の下、彼の瞳は深い愛情に満ちており、セレナは優雅に微笑みながら、ナプキンで口元を拭った。

 二人はあまりにもお似合いで、あまりにも幸せそうだった。

 私は氷雨の中で立ち尽くし、手の中のケーキ箱が雨に濡れるのも気づかなかった。

 彼らはとっくに苺タルトのことなど忘れていたのだ。

 私のことさえも。

 レストランの中の温かな光景を見つめながら、私は笑った。

 十年だ。父が彼を庇って死んだあの日から、私はこの男を十年もの間愛し続けてきた。私の献身がいつか彼を感動させると信じていた。いつか彼が私を見てくれると信じていた。

 だが今、ようやく理解した。

 彼にとって、私は永遠にただの重荷であり、押し付けられた責任でしかない。彼は私に一欠片の真心を与えるくらいなら、何度でも私を殺そうとするだろう。

 私は携帯電話を取り出し、国際電話をかけた。

「ソーンおじい様ですか? 私です、アイヴィーです」

 電話の向こうから、威厳のある老人の声が響く。「アイヴィーか? どうしたんだ、こんな時間に。何かあったのか?」

 私は深く息を吸い込んだ。

「私とダミアンの婚約についてですが……」

 言葉を切り、レストランで寄り添う二人を見つめる。

「破棄させていただきます」

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次兄:「会社のファイアウォールは、なぜこうも問題ばかり起こす?」――彼女がメンテナンスに来なくなったからだ。
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四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
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