猫の獄中手記

猫の獄中手記

渡り雨 · 完結 · 19.7k 文字

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紹介

わたしは働く小猫です。
職場は刑務所。
看守さん曰く、ここの罪人たちは、とても強くて凶暴で、悪いやつらばかりだとか。
なのに……
なぜ彼らは、わたしを頭上に掲げて見せびらかすの?
なぜわたしが怒ってひっかき傷を作ると、みんな「偉いぞ」と褒めるの?

チャプター 1

「この子は可愛い。合格だ」

 巨大な手が伸びてきて、私の体を優しく数回撫でた。

 「合格」が何を意味するのかは分からなかったが、ただ本能的に小さな口を開けて何か言おうとした。

「にゃあ——」

 その声は自分でも驚くほど大きかった! 私、こんなに大きな声が出せるの?

「でも、この子はまだ目も開いてないのに……」

 私のことだろうか? 私は必死に目を開けた。途端に光が目に飛び込んできて、思わずびくっとする。

 世界はなんて明るいんだろう! あちこちでぼんやりとした光と影が揺らめいている。

 私は瞬きを繰り返し、周りのすべてをはっきりと見ようと努めた。しばらくして、ようやくこの世界を捉えることができた。

 私たちの周りには、大勢の人がいた。

「目が開いたな。連れて行け。刑務所へ送れ」

 刑務所? なんだか温かそうな場所には聞こえない。

 小さな籠に揺られて長いこと、私は全く別の世界へとやって来た。

 ここの壁は灰色で、とても高い。それに、びっしりと鉄格子がはまっている。空気中には鼻を突くような匂いが漂っていて、開いたばかりの私の小さな目を不快にさせた。一番奇妙なのは、ここにはたくさんの人がいるのに、誰もあまり楽しそうに見えないことだ。

 制服を着た一人の若者が真ん中に立っていた。彼はとても格好良く、優しい目をしている。私は少し彼を気に入った。

「受刑者の諸君! 私は鹿島刑務官だ。本日から、当刑務所では新たなポイント制度を施行する」

 受刑者? この人たちには特別な呼び名があるんだ。

「模範的な行動を取ればポイントが付与され、10ポイントに達した受刑者は、子猫一匹の里親になることを申請できる」

 おお! なるほど、私たちは引き取られる運命なんだ!

 しかし、この人たちは私たちをあまり欲しそうには見えない。

「誰がそんなもん飼うかよ」

「猫が何の役に立つ? 飯の足しにもならねえ」

「この新入りの刑務官、頭おかしいんじゃねえか?」

 彼らの声はどんどん大きくなり、どんどん不親切になっていく。

 あの格好いい鹿島の顔が険しくなっていくのを見て、私は急に腹が立ってきた!

 どうして良い人をこんなふうに扱うの? 私が彼のために一肌脱いであげなきゃ!

 私は小さな胸を張り、ありったけの力を込めて大声で叫んだ。

「にゃあ!」

 瞬間、世界中が静まり返った。

 すべての人々が口をあんぐりと開けて私を見つめ、目を大きく見開いている。

 何人かは瞬きをしていて、まるで自分の耳を疑っているかのようだ。

 私って本当にそんなにすごいの? 私の声が、こんなに凶暴そうな人たちを黙らせることができるなんて!

 鹿島はひどく驚いているようで、しばらくしてからようやく言葉を続けた。

「それでは……ポイント制度を正式に実施する。各自、猫の展示エリアに見学に行っていい」

 人々はゆっくりと動き始めたが、その表情はさっきとは全く違っていた。

 あの侮蔑の色は消え、代わりに困惑や好奇心、そして隠しきれない深い渇望のようなものが浮かんでいる。

 私たちはガラス張りの部屋に入れられ、鹿島が外からしゃがみ込んで優しく私を見ていた。

「ほら、チビちゃん。みんなに挨拶してごらん」

「さっきみたいな声は出すなよ。衝撃的すぎるから。もっと軽く、優しく。こうやって——にゃ〜〜〜」

 ああ、なるほど。さっきの声は大きすぎたんだ。

 鹿島はもっと優しくするようにと教えてくれる。彼のお手本はとても優しくて、春風のように軽やかだった。

 私は首を傾げて彼を見つめ、それから口を開いた。

「にゃ〜〜〜」

 今度の感覚は全く違った。声が喉から優しく流れ出て、甘くて、柔らかい。

 皆がその温かい雰囲気に浸っていたその時、刑務所の奥深くから突然、恐ろしい音が響いてきた。

「おえっ——おえええ——」

 それは空嘔吐きの声で、苦しそうな喘ぎが混じっていた。誰かが拷問でも受けているかのようだ。

 生えたばかりの私の小さな産毛が逆立ち、嫌な予感がした。

 鹿島の顔色は瞬く間に真っ白になり、その目には恐怖がよぎった。

「解散、解散だ! 全員仕事に戻れ!」

 彼は慌てて人だかりを追い払い、その声は震えていた。

 私は小さな爪で籠の縁を掴み、声がした方向を見つめた。

 暗い廊下の奥深くに、何か恐ろしいものが潜んでいるようだ。

 私はまだ目を開けたばかりの子猫にすぎないけれど、そこには危険があると感じ取れた。

 私の新しい生活は、こうして始まったのだ。

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「だったら、そんなことしなければよかった」わたしは真正面から彼の目を捉え、こちらの瞳に張りついた氷を見せつけた。「息子のところへ戻って」

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竜王の花嫁

竜王の花嫁

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竜王の花嫁になるって、いったいどういう意味なのだろう?


偉大なるイグナス王国を形づくる七つの村では、毎年欠かさず「選定の儀」が執り行われていた。その儀で村の娘のひとりが選ばれ、恐るべき竜王の花嫁となるのだ。

なぜそんな儀を年ごとに続けるのか、誰にもわからない。これまで選ばれていった花嫁たちが、その後どうなったのかも――。

奴隷にされているのか?

竜の餌にされているのか?

それとも……竜王自身が、彼女たちを喰らっているのか?

それだって否定はできない。王は自分たちとは違う、人ではないのだという噂があるのだから。

それでも、その疑問は執念深く人々の胸を苛んだ。

いったい、花嫁を何に使っているのか――!?

だが、誰も王に問いただそうとはしなかった。逆らうなどという無謀が、どんな運命を呼び込むかが怖かったのだ。

もっとも、そんなことはベラドンナの知ったことではない。今年は彼女の村が花嫁を差し出す番だったが、自分が選ばれるはずがないと彼女は確信していた。

なぜかって?

もちろん、計画があるからだ。そして彼女は、その計画が自分を裏切るはずがないと信じ切っていた……いや、本当にそうだろうか。