猫の獄中手記

猫の獄中手記

渡り雨 · 完結 · 19.7k 文字

791
トレンド
791
閲覧数
0
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

わたしは働く小猫です。
職場は刑務所。
看守さん曰く、ここの罪人たちは、とても強くて凶暴で、悪いやつらばかりだとか。
なのに……
なぜ彼らは、わたしを頭上に掲げて見せびらかすの?
なぜわたしが怒ってひっかき傷を作ると、みんな「偉いぞ」と褒めるの?

チャプター 1

「この子は可愛い。合格だ」

 巨大な手が伸びてきて、私の体を優しく数回撫でた。

 「合格」が何を意味するのかは分からなかったが、ただ本能的に小さな口を開けて何か言おうとした。

「にゃあ——」

 その声は自分でも驚くほど大きかった! 私、こんなに大きな声が出せるの?

「でも、この子はまだ目も開いてないのに……」

 私のことだろうか? 私は必死に目を開けた。途端に光が目に飛び込んできて、思わずびくっとする。

 世界はなんて明るいんだろう! あちこちでぼんやりとした光と影が揺らめいている。

 私は瞬きを繰り返し、周りのすべてをはっきりと見ようと努めた。しばらくして、ようやくこの世界を捉えることができた。

 私たちの周りには、大勢の人がいた。

「目が開いたな。連れて行け。刑務所へ送れ」

 刑務所? なんだか温かそうな場所には聞こえない。

 小さな籠に揺られて長いこと、私は全く別の世界へとやって来た。

 ここの壁は灰色で、とても高い。それに、びっしりと鉄格子がはまっている。空気中には鼻を突くような匂いが漂っていて、開いたばかりの私の小さな目を不快にさせた。一番奇妙なのは、ここにはたくさんの人がいるのに、誰もあまり楽しそうに見えないことだ。

 制服を着た一人の若者が真ん中に立っていた。彼はとても格好良く、優しい目をしている。私は少し彼を気に入った。

「受刑者の諸君! 私は鹿島刑務官だ。本日から、当刑務所では新たなポイント制度を施行する」

 受刑者? この人たちには特別な呼び名があるんだ。

「模範的な行動を取ればポイントが付与され、10ポイントに達した受刑者は、子猫一匹の里親になることを申請できる」

 おお! なるほど、私たちは引き取られる運命なんだ!

 しかし、この人たちは私たちをあまり欲しそうには見えない。

「誰がそんなもん飼うかよ」

「猫が何の役に立つ? 飯の足しにもならねえ」

「この新入りの刑務官、頭おかしいんじゃねえか?」

 彼らの声はどんどん大きくなり、どんどん不親切になっていく。

 あの格好いい鹿島の顔が険しくなっていくのを見て、私は急に腹が立ってきた!

 どうして良い人をこんなふうに扱うの? 私が彼のために一肌脱いであげなきゃ!

 私は小さな胸を張り、ありったけの力を込めて大声で叫んだ。

「にゃあ!」

 瞬間、世界中が静まり返った。

 すべての人々が口をあんぐりと開けて私を見つめ、目を大きく見開いている。

 何人かは瞬きをしていて、まるで自分の耳を疑っているかのようだ。

 私って本当にそんなにすごいの? 私の声が、こんなに凶暴そうな人たちを黙らせることができるなんて!

 鹿島はひどく驚いているようで、しばらくしてからようやく言葉を続けた。

「それでは……ポイント制度を正式に実施する。各自、猫の展示エリアに見学に行っていい」

 人々はゆっくりと動き始めたが、その表情はさっきとは全く違っていた。

 あの侮蔑の色は消え、代わりに困惑や好奇心、そして隠しきれない深い渇望のようなものが浮かんでいる。

 私たちはガラス張りの部屋に入れられ、鹿島が外からしゃがみ込んで優しく私を見ていた。

「ほら、チビちゃん。みんなに挨拶してごらん」

「さっきみたいな声は出すなよ。衝撃的すぎるから。もっと軽く、優しく。こうやって——にゃ〜〜〜」

 ああ、なるほど。さっきの声は大きすぎたんだ。

 鹿島はもっと優しくするようにと教えてくれる。彼のお手本はとても優しくて、春風のように軽やかだった。

 私は首を傾げて彼を見つめ、それから口を開いた。

「にゃ〜〜〜」

 今度の感覚は全く違った。声が喉から優しく流れ出て、甘くて、柔らかい。

 皆がその温かい雰囲気に浸っていたその時、刑務所の奥深くから突然、恐ろしい音が響いてきた。

「おえっ——おえええ——」

 それは空嘔吐きの声で、苦しそうな喘ぎが混じっていた。誰かが拷問でも受けているかのようだ。

 生えたばかりの私の小さな産毛が逆立ち、嫌な予感がした。

 鹿島の顔色は瞬く間に真っ白になり、その目には恐怖がよぎった。

「解散、解散だ! 全員仕事に戻れ!」

 彼は慌てて人だかりを追い払い、その声は震えていた。

 私は小さな爪で籠の縁を掴み、声がした方向を見つめた。

 暗い廊下の奥深くに、何か恐ろしいものが潜んでいるようだ。

 私はまだ目を開けたばかりの子猫にすぎないけれど、そこには危険があると感じ取れた。

 私の新しい生活は、こうして始まったのだ。

最新チャプター

おすすめ 😍

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

344k 閲覧数 · 連載中 · 蛙坂下道
鈴木七海は、中村健に好きな人がいることをずっと知っていた。それでも、彼との結婚を選んだ。
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

152.2k 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
山奥に置き去りにされたので、夫も息子も捨てて「天才科学者」に戻る

山奥に置き去りにされたので、夫も息子も捨てて「天才科学者」に戻る

107.8k 閲覧数 · 連載中 · 68拓海
家族でのキャンプ中、彼女は山奥に一人、置き去りにされた。
夫と息子が、怪我をした「あの女」を病院へ運ぶために、彼女を見捨てて車を出したからだ。

命からがら自力で帰宅した彼女を待っていたのは、同じく家で放置され、怯えていた幼い娘の姿だった。
その瞬間、彼女の中で何かが壊れ、そして決意が固まる。

「あなたたちには失望しました。離婚させていただきます」

夫と、彼に懐く息子に別れを告げ、彼女は家庭という檻を出た。
世間は彼女を「哀れなバツイチ」と笑うかもしれない。
だが、誰も知らなかった。彼女がかつて、科学界で名を馳せた稀代の天才研究者であることを。

あるベンチャー企業の社長にその才能を見出された彼女は、夢の技術「空飛ぶ車」の開発プロジェクトを主導することに。
かつての夫が復縁を迫り、愛人が卑劣な罠を仕掛けてきても、もう彼女は止まらない。

愛する娘を守るため、そして自分自身の輝きを取り戻すため。
捨てられた妻の、華麗なる逆転劇が今、始まる!
社長、奥様が亡くなりました。ご愁傷様です

社長、奥様が亡くなりました。ご愁傷様です

155.2k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
お金と特権に囲まれて育った私。完璧な人生に疑問を持つことすらなかった。

そんな私の前に彼が現れた―
聡明で、私を守ってくれる、献身的な男性として。

しかし、私は知らなかった。
私たちの出会いは決して偶然ではなかったことを。
彼の笑顔も、仕草も、共に過ごした一瞬一瞬が、
全て父への復讐のために緻密に計画されていたことを。

「こんな結末になるはずじゃなかった。お前が諦めたんだ。
離婚は法的な別れに過ぎない。この先、他の男と生きることは許さない」

あの夜のことを思い出す。
冷水を浴びせられた後、彼は私に去りたいかと尋ねた。
「覚えているか?お前は言ったんだ―『死以外に、私たちを引き離せるものはない』とね」

薄暗い光の中、影を落とした彼の顔を見つめながら、
私は現実感を失いかけていた。
「もし...私が本当に死んでしまったら?」
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

202.6k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

245.6k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
出所したら、植物状態の大富豪と電撃結婚しました。

出所したら、植物状態の大富豪と電撃結婚しました。

167.2k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
5年前、私は誰かの身代わりとなり、無実の罪で投獄された。
出所すると、母親は私が獄中で産んだ二人の子供を盾に、植物状態にある億万長者との結婚を強いる。
時を同じくして、その悲劇の大富豪もまた、家族内での権力闘争の渦中にいた。

街では植物状態の男が若い花嫁とどう初夜を過ごすのかと噂される中、この元囚人が並外れた医療技術を秘めていることなど、誰も予想だにしなかった。
夜が更け、無数の銀鍼(ぎんしん)が打たれた男の腕が、静かに震え始める…

こうして、元囚人の彼女と植物状態の夫との、予期せぬ愛の物語が幕を開ける。
さようなら、愛してくれない家族たち。地味な専業主婦は研究界の女王へと覚醒する

さようなら、愛してくれない家族たち。地味な専業主婦は研究界の女王へと覚醒する

137.7k 閲覧数 · 連載中 · 86拓海
「君よりも、彼女のほうが母親にふさわしい」
愛する夫と子供たちにそう言われ、私は家庭内での居場所を失った。
六年間、身を粉にして尽くしてきた日々は、何の意味もなかったのだ。

絶望の中で目にしたのは、かつて母が手にした科学界の最高栄誉であるトロフィー。
その輝きが、私に本来の自分を思い出させた。

私はエプロンを脱ぎ捨て、白衣を纏う。
もう誰かの妻でも、母でもない。一人の科学者として、世界を驚かせるために。

数々の賞を総なめにし、頂点に立った私を見て、元夫は顔面蒼白で崩れ落ちた。
震える声で私の名前を呼び、足元に縋り付く彼。

「行かないでくれ……君がいないと、俺は……」

かつて私を見下していたその瞳が、今は絶望と後悔に染まっていた。
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

68.6k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

87.4k 閲覧数 · 連載中 · 七海
人生最良の日になるはずだった、結婚式当日。
新郎の車から出てきたのは、見知らぬ女の派手なレースの下着だった。

しかも、その布切れにはまだ。生々しい情事の痕跡が残されていた。

吐き気がするほどの裏切り。
幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた私。

けれど、泣き寝入りなんてしてやらない。
私はその場でウェディングドレスの裾を翻し、決意した。

「こんな汚らわしい男は捨ててやる」

私が選んだ次の相手は、彼など足元にも及ばない世界的な億万長者で?
逃げる秘書の資産は三千億!?急げ、社長!

逃げる秘書の資産は三千億!?急げ、社長!

71.1k 閲覧数 · 連載中 · 神楽坂奏
十年前、中林真由の母親が腎臓移植を必要としたが、家には手術費を工面する金がなく、挙句の果てに家まで叔父一家に乗っ取られた。
少しでも多くのお金を稼ぐため、彼女は高級クラブでウェイトレスとして働き始めた。
女があまりに美しく、誰も守ってくれる者がいない時、その美しさは原罪となる。
初出勤の日、彼女は危うく猥褻行為の被害に遭いかけた。
男たちが彼女を取り囲み、卑猥な視線をその身に注ぐ。
クラブの金持ちたちは、彼女のような世間知らずの子羊を見つけ出すのが実にうまかった。
彼女が最も惨めなその時、今野敦史が現れた。
この十年、彼女はずっと今野敦史の傍にいた。
友人たちも、家族も、皆が今野敦史を知っていて、二人が付き合っていると思い込んでいる。
でも、今まで彼の周りには女が絶えなかったじゃない。それが今、「ついに運命の相手を見つけた」なんて言ってるの。
今、ようやく彼から離れる機会を得たというのに、どうして手放せようか。
天使な双子の恋のキューピッド

天使な双子の恋のキューピッド

84.8k 閲覧数 · 連載中 · 鯨井
妊娠中の私を裏切った夫。不倫相手の策略に陥れられ、夫からの信頼も失い、耐え難い屈辱を味わった日々...。

しかし、私は決して諦めなかった。離婚を決意し、シングルマザーとして懸命に子育てをしながら、自分の道を切り開いていった。そして今や、誰もが認める成功者となった。

そんな時、かつての夫が後悔の涙とともに現れ、復縁を懇願してきた。

私の答えはただ一言。
「消えなさい」