紹介
ノアは学校きっての「イケてる男」だった。人を惹きつける魅力があり、誰からも好かれ、そして文句のつけようもなくハンサム。しかも厄介なことに、彼はジャクソンの親友であると同時に、ジェッサにとって最大のいじめっ子でもあった。
そんな高校最終学年、ジェッサは決める。そろそろ自信を手に入れよう。本当の美しさを見つけよう。もう「目立たない双子の片割れ」では終わらない、と。
変わり始めたジェッサは、やがて周囲の視線を集めるようになる。とりわけノアの目を。これまでノアはジェッサを「ジャクソンの妹」としか見ていなかった。だが、その思い込みに曇っていた視界が、少しずつ晴れていく。
いったい彼女はいつから、頭の中に入り込んでくるほど魅惑的な女になったのだろう。いつから彼女は、彼の空想を支配する存在になってしまったのだろう。
クラスの笑いものから、自信に満ちた、誰もが目を奪われる若い女性へ――。ジェッサが自分自身を取り戻していく旅に、あなたも立ち会ってほしい。彼女がずっと胸の奥に秘めてきた「本当の彼女」を解き放つとき、驚かされるのは、ノアでさえ例外ではないのだから。
チャプター 1
ジェッサ
七年前
双子として育つのって、楽しそうだと思うだろう? 生まれつきの親友がいて、いつだって味方で、言葉にしなくても分かり合える。少なくとも、十歳になるまでは――私にはそれがあった。
双子の兄、ジャクソンは私の世界の中心だった。二卵性の双子で、あらゆる面で正反対。ジャクソンは背が高くて細身で運動もできて、誰とでもすぐ友達になれる。私は背が低くて少しぽっちゃりで、痛いほど人見知りで、だいたいいつも自分の足に引っかかって転びそうになっていた。
でも、私には関係なかった。友達が何百人も必要なわけじゃない。私にはジャクソンがいた。親友で、もう半分の自分で、私の「大事な人」だった。
いつだって私たちは二人きりだった。ママは食卓に食べ物を並べるために働きづめで、ほとんどの時間は私とジャクソンだけ。だからこそ、私たちは互いにしがみつくようにしていたのかもしれない。
「ジャックス、帰りたいよ」私はぶうぶう言いながら、彼がフットボールを手から手へと放り投げるのに合わせて足を引きずった。
「ジェス、落ち着けって。新しく来た子に、ここでボール投げようって約束したんだ」茶色い瞳はフィールドに釘づけで、まるで自分がもうプロリーグにでもいるみたいだった。
「つまんない」私は芝生にどさっと座り込んだ。
彼はため息をつき、ポケットを探って、私にグラノーラバーを投げてよこした。「ほら。ピーナッツバター。お前の好きなやつ」
一瞬で機嫌が直る。「やった! ありがとう、ジャックス」
包みを破ろうとしていると、ジャクソンが背筋を伸ばし、フィールドの入口へ視線を向けた。「来た」
同い年くらいの男の子が、腕にフットボールを抱えて近づいてきた。暗めの茶色でくしゃっとした髪、そして私が今まで見たことがないくらい緑の瞳。ぱっと目に飛び込んでくるタイプの目だった。それに、まつげ? 長すぎて、正直ちょっと妬ける。
「よう」その子はジャクソンに言った。
「よう、ノア。こっちは双子の妹、ジェッサ」
私はあわてて立ち上がり、ジーンズについた草を払った。口が頭より先に動いてしまう。「わあ……まつげ、すごく長いね。男の子なのに」
ノアの頬がほんのり赤くなる。「えっと、ありがと?」
ジャクソンがうめいた。「悪い。こいつ、時々遠慮ってものがなくてさ」
「ただ……きれいだなって思っただけ」私はそう言い訳しながら、消えてしまいたくなった。
「ジェス、俺たちが投げてる間、座ってろよ」ジャクソンがぶつぶつ言った。
「彼女はやらないの?」ノアが聞く。
ジャクソンが答える前に、私は首を振った。「ううん、そういうの、あんまり」
「だよな。こいつが投げたら、自分で自分に当てて転ぶのがオチだ」ジャクソンが冗談めかして言う。
気にしていないふりをして、私はサイドラインに座り直した。でも視線は何度もノアのほうへ流れてしまう。彼がジャクソンとボールを投げ合う姿を、つい追ってしまうのだ。かわいいだけじゃない――静かで、どこか控えめで、ほとんど恥ずかしがり屋みたいで。なぜか、彼に好かれたいと思ってしまった。
投げ終わると、ジャクソンが彼の背中を軽く叩いた。「いい腕してるな」
「兄貴が二人いると、いろいろ教えられるんだ」ノアは肩をすくめる。
「あっ! じゃあお兄ちゃんたちも親友なの? 私とジャクソンみたいに?」私は身を乗り出して聞いた。
「違うよ。ただの……兄弟。俺、親友っていないし」
胸がきゅっと縮んだ。「なら、作ればいいよ。私とジャクソンは何でも一緒にやるんだ。ジャクソンって、最高の親友になれるよ」
ノアはジャクソンを見た。ジャクソンはただ肩をすくめる。ノアは小さくうなずいた。まるで、言外の意味を受け取ったみたいに。
そのときの私は、自分がどれほど間違っていたのか、気づいていなかった。
一か月後
「映画なんて行きたくないよ、ジャックス!」私は腕を組んでぶうぶう言った。
「残念でした。ノアと俺は新しいマーベルの映画が見たいんだ。お前を家に一人で置いとけない」
「いつもジャックスとノアのやりたいことばっかり。私のは?」
彼はため息をついた。「ジェス、俺はお前のこと大好きだよ。でも、たまにはお前抜きでやりたいこともある。お前も自分の友達を見つけろよ」
それは、認めたくないくらい痛かった。
チャイムが鳴って、ノアがいつものニヤッとした顔で入ってきた。
「よう」
「ジェス、靴履け」ジャクソンが命令する。
「彼女も来るの?」ノアが聞いた。
「そう。母さん仕事だし。俺が子守りしてんだ」
「子守り?」私は噛みついた。「同い年じゃん! 子守りじゃないし」
「俺のほうが十二分年上」ジャクソンが言い返す。
ノアがくすくす笑う。「確かに、赤ちゃんみたいに振る舞ってる」
私は怒って靴を取りに行こうとした。でも階段を半分上ったところで、ノアの声が聞こえて足が止まった。
「お前の妹、まじでワガママだな。一緒に来なきゃいけないとか最悪」
ジャクソンの返事は、いちばん深く刺さる刃だった。「ほんとそれな」
劇場では、忘れようとした。「ジャックス、ポップコーン買っていい? バター多めで」
ノアが眉を上げる。「バター多め、ほんとに必要?」
私は拳を握りしめた。「うん。そういうのが好きなの」
ジャクソンは私に紙幣を数枚すべらせた。「小さいのは自分で買えよ」
私は売店の列へ向かった。――そのとき、またあの声が聞こえた。
「アイツ、いつも何か食ってなきゃ気が済まないんだよな」ノアがぼそりと言った。
「だな」ジャクソンが低く笑った。「一緒にいるところ見られるの、たまに恥ずい」
その言葉は、どんな拳よりも強く胸に突き刺さった。双子の片割れ――親友だと思っていた相手が、私のことを恥だと感じている。
「はい、次あなたの番よ」後ろにいた女の子が、やさしく声をかけた。
私は首を振った。「やっぱりやめる」
その子は眉をひそめる。「大丈夫?」
「大丈夫じゃない」私は囁いた。「親友を失った気がする」
彼女は私をじっと見てから言った。「私、マライア。同じクラスだよね? あなたジェッサ。ジャクソンの双子」
「……うん」
「本当は何の映画観るの?」
「ヒーローもの、かな」
マライアがにやりとする。「やめときなよ。代わりに私と行こう。新しいコメディがあるの。主演の俳優もずっとかわいいし」
決める間もなく、ジャクソンとノアが現れた。
「ジェス、何やってんの、遅い」ジャクソンが苛立った声で言う。「あ、やあ、マライア」
マライアは砂糖みたいに甘い笑みを浮かべた。「こんにちは。ジェッサと私、コメディを観ることにしたの」
ジャクソンは肩をすくめた。「いいよ。終わったらロビーで合流しろ」
ジャクソンとノアが人混みに消えると、マライアが私の腕を引いて自分の上映館へ向かわせた。
「ほら。笑ったほうがいいって」
私は最後に一度だけ、遠ざかっていく兄の背中を振り返った。
あの人は私から親友を奪った。そう思った。そして二度と返してくれないんだ。
三年後
十三歳は、容赦なく私に襲いかかった。頼んでもいないのに身体は変わっていった。もう、ぽっちゃりした小さな女の子じゃない――曲線ができた。年齢に見合わないほど大きい胸。学校の他の女の子たちとは合わない腰のライン。
母はいつも言った。私たちみたいな体つきの子は、隠さなきゃ。重ね着すれば細く見えるのよ。
だから私は、だぶだぶのシャツを着た。大きめのパーカーも。身体がすっぽり埋もれてしまう服。だけど意味はなかった。からかいは止まらない。
ある朝、ジャクソンが私のゆるいシャツを値踏みするように見て言った。「ジェス、それ着てくの?」
「楽だから」
「テントじゃん」彼は目をぐるりと回して出ていった。
母が私の頬にキスをする。「気にしないで。あの子には、私たちみたいな女の子の気持ちは分からないのよ」
学校では、校舎の扉に辿り着く前から声が飛んできた。
「サーカスが町に来たぞ!」
「おい、クジラの展示も連れてきたってさ!」
胸の奥がすとんと沈んだ。声の主が見えたからだ。ジャクソンとノア。二人の周りをアメフト仲間が固めて、全員で笑っている。
「いいシャツじゃん、ジェス」ノアが鼻で笑った。「テントサイズしか残ってなかったのか?」
「黙れよ、ノア」
ジャクソンがにやつく。「ほらな、デカすぎるって言っただろ」
「そのデカいケツの肉隠すにはちょうどいいよな」ノアが追い打ちをかけ、集団がひっくり返るように爆笑した。
私は顔を背け、聞こえないふりをした。けれど笑い声は、背中に張りついて離れなかった。
ロッカーに着くころには、手が震えていた。取っ手を引く。でも開かない。引っかかっている。そこへマライアが隣に現れた。
「手伝おうか?」
二人で引っぱった。やっとのことで、勢いよく扉が開く――同時に、ゴミ袋がどさどさと転がり出て、廊下じゅうにぶちまけられた。
そのうちの一つに、テープでメモが貼られていた。新しいワードローブを用意してあげたよ。
周囲の笑い声が、耳をつんざくほど大きくなる。
「これ、あなたたちがやったの?」マライアが、野次馬をかき分けて見物しに来たジャクソンとノアに怒鳴りつけた。
ノアはにやにや笑う。「ホームレスみたいに着たいんだろ? だったら選択肢増やしてやっただけ」
ジャクソンはくつくつ笑った。「落ち着けよ。ただの冗談だろ」
マライアが睨みつける。「彼女、あなたの妹だよ」
でもジャクソンは、ノアと一緒にそのまま歩き去った。
私は手にしたゴミ袋を見つめた。ほんの一秒でいいから、入れ替われたらと思った。笑う側に。辱められる側じゃなくて。
現在
ピッ。ピッ。ピッ。
私はうめき声を上げ、目覚まし時計を叩きつけるように止めた。高校最終学年。こんな地獄みたいな場所での、最後の一年。
私はジェッサ。特別な何者でもない。ただ、うちの高校のスターであるジャクソン――先発クォーターバックで、誰からも愛される黄金の男――の、太った双子の姉妹。彼の親友ノア・カーターが、生きがいみたいにして私をいたぶる、その標的。
十歳のころ、一度だけ、ノアをかわいいと思ったことがある。そんな淡い気持ちは、その年のうちに死んだ。今の彼は十八歳。背が高くて、肩幅が広くて、髪も完璧、笑顔も完璧。どの女の子も彼を欲しがる。
そして私は、彼が大嫌いだ。
でも彼はいつも近くにいる――ジャクソンの親友だから。私から兄を奪った、あの子。
私はベッドから転げ出るように起きて、鎧を身にまとう。ジーンズ、タンクトップ、大きめのボタンシャツ。重ね着で、恥じるべきだと言い聞かされてきた身体を隠す。
ジャクソンに見つかる前に、こっそり出なきゃ。ノアの声に見つけられる前に。
今日も一日。今日も戦い。
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その瞬間、心臓を煮えたぎる油に放り込まれたような、耐え難い激痛が全身を貫いた。













