冥界の女神

冥界の女神

sheridan.hartin · 完結 · 865.8k 文字

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紹介

名前と不屈の鼓動だけを抱え、群れの境界に置き去りにされたエンヴィー。彼女は誰よりも鋭敏なサバイバーへと成長した。前線を死守し、ひたすらに進み続ける術を知る、天涯孤独の戦士として。

愛など計画にはなかった……プレイボーイの悪名と、厄介なほどに優しい手を持つ四人のアルファ狼たちが現れるまでは。彼らは、決して誰にも媚びないその少女こそが、自分たちが生涯戴く唯一の女王だと決めたのだ。彼らの「番(つがい)」。待ち焦がれていた運命の相手として。

ゼイヴィア、ハイデン、レヴィ、そしてノア。彼らは美しく、致命的な魅力を持ち、完璧とは程遠い男たちだ。そしてエンヴィーもまた、同じだった。

彼女は変貌を遂げていく。まずはヘルハウンドへ。ラヤを従え、血管に炎をたぎらせて。次に、この領域が待ち望んでいた「冥界の女神」へ。番である彼らを道連れに、地獄へと降りていく。そして最後には、より強く、より速いライカンの王女へと覚醒する。月がついに彼女の声に応え、家族を守るために必要な力を授けたのだ。

神界、人間界、そして死者の国を隔てるベールに亀裂が入り始めた時、エンヴィーはその深淵へと突き落とされる。放棄することのできない使命と共に。それは、世界が溶け合い混ざり合うのを食い止め、迷える魂を導き、そして「日常」を戦うための鎧へと変えること。朝食を作り、安らかな眠りを守り、作戦を練る日々へと。

平穏は、子守唄一曲分しか続かない。

これは、家族を選び取ることで女神となった、ある境界の子犬の物語。愛する者のそばに「留まる」ことを学ぶ、四人の不完全なアルファたちの物語。そして、ケーキと鉄と、白昼の交渉の物語である。

濃厚で、激しく、そして心揺さぶる『冥界の女神(Goddess of the Underworld)』。愛こそがルールを定め、三つの世界の崩壊を食い止める、逆ハーレムにして絆で結ばれた家族のパラノーマル・ロマンス。

チャプター 1

エンヴィー

頬に血が飛び散り、また一匹、はぐれ狼の首が湿った草の上に落ちる。冷たい夜気の中で、その生温かさは奇妙な祝福のように肌に馴染んだ。私は剣を引き戻し、踵を返して鋭く回転する。次に飛びかかってくる狼の牙が、私の肩に食い込むその寸前で。

刃は顎の端から、薄汚れた濃い灰色の毛並みに沿って綺麗に切り裂いた。悲鳴を上げる間もなく、私は再び剣を振り抜き、その首も飛ばす。周囲には七つのはぐれ狼の死体が転がり、地面に血を吸わせていた。

微かな足音が聞こえ、私は構え直して攻撃の準備をする。だが、目の前の狼は歩調を緩め、人の姿へと戻った。

「落ち着けよ、チビの戦士さん。俺だ」

見回りの警備兵の一人、ジュールズが両手を上げて近づいてくる。「今回も派手にやったな」彼は惨状を見渡して低く口笛を吹いた。

「ああ、援護どうも」私はぶっきらぼうに言う。彼はただ笑って、私の髪をくしゃくしゃとかき回した。

「俺の助けなんて要らなかっただろ。それに、今年はきっとお前の年になるさ」

十八歳になり、ついに自分の狼を得る年。彼はそう言いたいのだ。赤ん坊の頃に群れの境界線に置き去りにされたため、誰も私の誕生日を知らない。だから、いつ狼が目覚めるかも誰にも分からない。孤児であることは、使い捨ての存在であることも意味する。

戦士たちが私を育てた。幼い頃、彼らは私に食事を与え、目を配るためにパトロールに連れ歩いたものだ。時折、彼らの番(つがい)の元へ連れ帰ってくれることもあったが、私の人生のほとんどは群れの境界線の最前線で費やされた。十二歳でおそらく初めて敵を殺した時、アルファ・マーカスは私に給金を出し、学校のスケジュールに合わせて独自のパトロールシフトを組んでくれた。

まだ家を持たない者たちが暮らすパックハウスに住んでいるため、金を使う機会はほとんどない。食事は無料だ。求められるのは自分の後片付けと、たまにキッチンのシフトに入ることだけ。私はほとんどの夕食当番を引き受けている。ルーティンに合うからだ。夜明けのパトロール、学校、再びパトロール、夕食当番、睡眠。その繰り返し。

はぐれ狼たちのせいで、今の夕食当番には遅刻だが、ジェニーが代わってくれているはずだ。

「今年こそはって、祈るしかないね、ジュールズ」

「心配するな、おチビ(Kiddo)。狼がいなくたって、お前はそこらの連中よりずっとうまくやれる」

私はため息をつき、死体の一つを焚き火場へと引きずっていく。境界線のこちら側では、死体はそこで焼く決まりだ。

「ああ、分かってる。でも……」私は肩をすくめる。「誰かと『繋がり』を感じられたら最高だろうなって思うだけ」

ジュールズは運んでいた死体を落とし、胸の前で腕を組んだ。

「お前は俺たちと繋がってる。全員とな。俺たちはいつだってお前の家族だ、おチビ」

彼の目がマインドリンク(念話)で白く曇る。私は彼が終わるのを待った。

「アルファがお前と話したいそうだ。夕食当番は気にするな、ジェニーがやってる」

「これ、頼める?」私は死体へ顎をしゃくる。

「任せろ。行け」彼は手を振って私を追い払った。

十分後、私はアルファの執務室の前にいた。顔の血を拭おうとしたが、かえって塗り広げただけだった。

「入れ、エンヴィ」

分厚い木の扉越しにアルファ・マーカスの声が響く。

「失礼します、アルファ・マーカス」私は一礼して入室した。

「ジュリアンから、またはぐれ狼の襲撃に遭ったと聞いたぞ」彼はデスクの向かいの椅子を指し示す。私は双剣を鞘から抜いてデスクに置き、ルナの大切な家具を汚さないよう、椅子の端に浅く腰掛けた。

「七匹でした」私は淡々と言う。

「よくやった」

「ありがとうございます、アルファ」

彼は背もたれに寄りかかった。「レッドムーン・パックのアルファ・チャールズがお前の腕前を聞きつけてな。オファーをしたいそうだ。かなりの好条件だぞ」

「ほう?」

「名誉なことだ。彼の娘、アリーシャはお前と同じくらいの歳だ。次期ベータと番になっているため、いずれはベータ・フィメールになる。そこで、彼女を適切に訓練したいそうだ」

「訓練は受けていないのですか?」

「受けてはいるが、彼の満足する基準ではないらしい。お前に彼女の相手をしてほしいということだ。午後のパトロールからは外す。放課後、レッドムーンへ向かい、毎日二時間訓練をつける。どうだ?」

「はい、アルファ。光栄です」

「完璧だ。明日から始めるとアルファ・チャールズに伝えておこう。さて、ガレージにいるベータ・フェリックスに会いに行け。お前にサプライズがあるそうだ」

私は胃のあたりが奇妙に高鳴るのを感じながら部屋を出た。自分の腕には自信がある。歩けるようになる前から訓練してきたのだから。だが、それを認められること? それはまた別の感覚だ。親に褒められるというのは、こういう気分なのかもしれない。

ガレージの外で、興奮を抑えきれない様子のベータ・フェリックスを見つけた。私にとって親に最も近い存在。境界線で私を見つけ、戦士たちが私を育てることをアルファ・マーカスに納得させてくれたのは彼だった。

「やあ、ちびっ子戦士!」

「ベータ・フェリックス。何のご用で?」

「ずっといじってたあのバイク、覚えてるか?」彼は満面の笑みでガレージを開ける。「完成したぞ」

照明の下、そこには輝く車体があった。一年以上かけて二人で組み上げた秘蔵のプロジェクト。部品一つ、ボルト一本に至るまで。私たちだけのカスタムCBR1000。夜のような漆黒。罪深いほどに滑らかな流線形。顔の皮が吹き飛ぶほど速いマシンだ。

「うわぁ……綺麗……」滑らかなボディワークに手を這わせる。一緒に組んだのはこれで三台目だ。フェリックスは私が小さい頃から機械いじりを教えてくれた。一台目は乗り方を教わるためのCBR600。二台目は最高にセクシーなライムグリーンの1000で、それはすぐに彼が自分のものにしてしまったけれど。

「こいつはお前が稼ぎ出したものだ」彼は私にキーを放り投げた。

「嘘でしょ? マジで?」

「マジもマジだ。顔を洗って装備を持ってこい。こいつの初乗りに行くぞ」

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