19回の結婚式、19回の死刑宣告

19回の結婚式、19回の死刑宣告

渡り雨 · 完結 · 27.8k 文字

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紹介

原藤勇吾の隣へと続くレッドカーペットは、決して花で飾られた平坦な道ではなく、周到に仕組まれた殺意の罠だった。

彼と婚約して二年、私たちは十九回も結婚式を試みた。そのすべてが、血塗れの惨事に終わった。

五回目。ウェディングカーのブレーキが利かなくなり、私は左腕を粉砕骨折し、救急治療室で三ヶ月を過ごした。

十二回目。試食会で食中毒が起き、私は緊急の胃洗浄を受け、手術台の上で窒息死しかけた。

十八回目……それは、私の永遠の悪夢。光を映すほどに磨かれた大理石の階段から転げ落ち、私は、この世の光を見ることなく逝った我が子を失った。

誰もが私を、原藤家に呪われた花嫁だと噂した。私自身でさえ、これはただの不運の連鎖なのだと思い込もうとしていた。

私が何度も血の海から這い上がってきたのは、ただ、遠い昔に交わした恩返しの約束のため。ただ、十年も深く愛し続けた、あの人のためだった。

そして十九回目。誓いの言葉を交わすその時、数百ポンドはあろうかというフラワーアーチが轟音と共に崩れ落ち、私はその場で集中治療室へと運び込まれた。

肋骨は折れ、内臓は損傷し、三日間の生死の境をさまよって、ようやく一命を取り留めた。

しかし、意識を取り戻したその瞬間、半開きになったドアの向こうから、私を震撼させる会話が聞こえてきたのだ。

チャプター 1

 原藤勇吾の隣へと続くバージンロードは、決して花で飾られた平坦な道などではなく、周到に仕組まれた殺人ゲームだった。

 彼と婚約してからの二年間、私たちは十九回もの結婚式を試みた。そのどれもが、血生臭い惨事をもって幕を閉じた。

 五回目。ウェディングカーのブレーキが利かなくなり、私は左腕を粉砕骨折して、救急病棟のベッドで三ヶ月を過ごした。

 十二回目。試食会での食中毒。緊急胃洗浄を受け、あわや窒息して手術台の上で命を落とすところだった。

 十八回目……それこそが私にとって永遠の悪夢。磨き上げられた大理石の階段から転げ落ち、まだ世界を一度も見ることもなかったお腹の子を失った。

 周囲の誰もが私を原藤家に呪われた花嫁だと噂し、私自身でさえ単なる不運の連鎖なのだと思い込もうとしていた。

 血の海から何度這い上がっても諦めなかったのは、ただ何年も前のあの恩返しの約束のため。そして私が十年間深く愛し続けた男のためだった。

 だが十九回目。誓いの言葉を交わす瞬間に数百ポンドもの巨大なフラワーアーチが轟音とともに崩れ落ち、私はその場から集中治療室へと直行することになった。

 肋骨は折れ、内臓も損傷し、三日間生死の境を彷徨ってようやく一命を取り留めた。

 しかし目を覚ましたその瞬間、少しだけ開いていたドア越しに、勇吾と部下の会話が聞こえてきたのだ。

「原藤様、今回はあまりにも危険すぎました。もしさよ様が本当に亡くなってしまったら……」

「俺には選択肢がなかった」勇吾のその声は、別人のように冷酷だった。

「あいつの父親が俺を庇って死んだ、その忌々しい恩義が鎖のように俺を縛り付けている。だが俺が愛しているのは星菜だ。星菜以外の女を妻にする気など毛頭ない」

「星菜のためにあの席を空けるためなら、十九回の事故を仕組むことくらい造作もない。さよをもっと徹底的に壊したとしても、俺は一切構わない」

 その瞬間。自分の体に無数に刻まれた痛々しい傷跡を見つめながら、私はついに崩れ落ちた。

 私が舐め尽くしてきた苦難は、決して運命のいたずらなどではなく、彼が別の女に向けて綴った血文字のラブレターだったのだ。

 彼が『恩義』のせいで私を追い出せないというのなら、私が代わりにその悪役を引き受けてやろう。

 屋敷の書斎。原藤五太郎の手にある万年筆がピタリと止まり、書類に鋭い裂け目を作った。

 彼は驚愕に目を見開き、私を見つめたまましばらく我に返ることができなかった。

 無理もない。この十年間、命すら惜しまない私の勇吾に対する異常なほどの執着を、誰よりもよく知っているのは彼なのだから。

 短い狼狽のあと、彼はすぐに冷静さを取り戻し、私がただ拗ねているだけだと確信しているような眼差しを向けた。真相を知らない彼は、そのまま宥めるように口を開く。

「さよ、気が立っているのは分かっておる。だがな、二十回目の結婚式はすでに準備が進んでいるんじゃ。今度の警備体制は最高レベルにする。もう二度と辛い思いはさせんと、このお義祖父さんが保証しよう。最高に盛大な儀式になる……」

 私は一切の弁解をせず、手にしていたボイスレコーダーの再生ボタンを静かに押し込んだ。

 勇吾の冷酷な声が響き渡った瞬間、書斎は死に絶えたような静寂に包まれた。

『俺には選択肢がなかった……星菜のためにあの席を空けるためなら、さよをもっと徹底的に壊したとしても……』

 五太郎が次に紡ごうとしていた言葉はすべて、気まずそうに喉の奥へとつかえてしまった。

「二年間、十九回の事故。そのどれもが、彼による私の命を狙った企みでした」

 私は極めて平然と、埃を被った流産の手術記録と十八回目の事故鑑定書を彼の目の前に差し出した。

「三ヶ月前、お義祖父様が『事故』だと仰ったあの出来事。あれは彼が人に命じて階段に油を塗らせた結果です。彼はあの女のために、あなたのひ孫を殺したのですよ」

 真実は鋭い刃のようだった。数々の報告書に目を落とす五太郎の手は激しく震え、やがて杖がガタンと音を立てて床に転がり落ちた。

 袖口から這い出るように伸びる私の腕の醜い傷跡に視線を移し、さらにその目を覆いたくなるような傷害鑑定書を見た瞬間。老人の瞳の奥にあった私を引き留めようとする最後の光が完全に消え失せ、底知れぬ徒労感だけが残った。

 結局、彼はもう引き留めることはせず、震える手で婚約破棄の合意書にサインをした。

「お前の父親が……お前の父親が命と引き換えに勇吾の命を救ってくれたというのに、原藤家がとんでもない業を作ってしまった」

 五太郎の声はひどく老いぼれて震えており、慰謝料として巨額の数字が書き込まれた小切手をなんとか私の手に握らせようとした。

 そのゼロの羅列を見つめながら、私はただ皮肉なものだと感じていた。

 どれだけお金を積まれたところで、あの子は戻ってこない。この三年間、地獄の苦しみを味わってきた私の命だって買い戻せはしないのだ。

 私はその小切手を静かに押し返し、婚約破棄の合意書だけを手に取った。

「これで貸し借りはなしです、お義祖父様」

 それが、私がこの家に残した最後の言葉だった。

 屋敷の門を一歩出たその時。耳障りなブレーキ音とともに勇吾の銀色のマイバッハが猛スピードで路肩に停まり、私の行く手を塞いだ。

 窓が下りる。彼は私の手に握られた荷物に見向きもせず、相変わらず冷淡な表情のまま、事務的な口調で言い放った。

「乗れ。裁判官がすでにオフィスで待っている。さっさと手続きを済ませるぞ」

 私は助手席へと視線を滑らせた。

 星菜がそこに縮こまっていた。目を真っ赤に腫らし、まるで怯えた仔兎のよう。『手続き』という言葉を聞いた瞬間、彼女はビクッと身体を震わせたものの、その瞳の奥には微かな優越感がきらりと光った。

 勇吾が先にドアを開けて車から降り、私が星菜を見る視線を遮るように意図的に立ち塞がった。

 彼はわずかに眉をひそめ、冷硬な声で告げる。

「認めるよ、俺は星菜に感情を抱いている。だが安心しろ、果たすべき婚約は果たす。原藤夫人の肩書きはお前だけのものだ」

 責任。

 その二文字が私の胸に重くのしかかり、息の詰まるような苦しさを覚えた。

 私は俯き、風のように軽い声で呟いた。

「また後日にして、勇吾」

 彼の後ろにいるあの偽善的な女を一瞥すると、ただただ深い疲労感だけが押し寄せてきた。

「もう何年も引きずってきたんだから、今さら少しばかり遅れたって同じでしょう」

 勇吾の瞳に、一瞬だけ戸惑いの色がよぎる。

 この三年、誰よりも彼との結婚を急かしていたのは私だった。救命室で死にさえしなければ、真っ先に彼に婚姻届のサインをせがんでいたのだから。

 私は彼の反応を無視して距離を取り、路肩のタクシーに向かって歩き出そうとした。

 その時、星菜が突然車から飛び出してきた。

「さよ!」彼女はなりふり構わず痛む私の腕を掴みかかった。

「勇吾はいい人なの、私のせいで二人の関係を壊したくない……お願いだから彼を責めないで……」

 彼女がようやく塞がったばかりの傷口に強く指を食い込ませてきたため、私は激痛のあまり本能的にその手を振り払った。

 しかし星菜はまるで強烈な一撃を食らったかのように大げさにのけぞり、そのまま勇吾の胸の中に勢いよく倒れ込んだ。そして、瞬く間に大粒の涙をこぼし始めたのだ。

 勇吾の角度から見れば、私が彼女を力任せに突き飛ばしたようにしか見えない。

「狂ったのか!」

 勇吾は激昂し、乱暴に私を突き飛ばした。

 凄まじい力だった。私はバランスを崩してざらついた砂利道に倒れ込み、折れていた肋骨に突き刺さるような激痛が走った。

 彼は星菜の存在すらしない傷を焦った様子で確かめ、再び顔を上げて私を見たその瞳には、紛れもない嫌悪感が満ちていた。

「結婚できないからって他人に八つ当たりか?さよ、今のその浅ましい姿、虫唾が走るよ」

 彼は星菜を庇うように車に乗せ、ドアを閉める直前、最後となる冷酷な宣告を投げつけた。

「お前の父親は生涯『分を弁える』ことを知っていた。だが残念なことに、下等な血が流れているお前には永遠に品格など身につかないらしい。死んだ両親の顔に泥を塗ったな」

 マイバッハはエンジンを轟かせて走り去り、私の前にはむせ返るような排気ガスだけが残された。

 喉の奥まで出かかっていた弁解の言葉を、私は静かに呑み込んだ。

 ポケットの中のスマートフォンが震えるまで、私はその場にへたり込んだまま呆然としていた。

 画面を一瞥する。着信の履歴はなく、届いていたのは一通の最新メールだけだった。

『さよ様。生検の結果が確定いたしました。末期の膵臓癌、および多発性骨転移を伴っております。推定生存期間は3ヶ月から6ヶ月となります』

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