ブラックカードでイケメンをはべらせる元妻、実は世界屈指の天才デザイナーだ

ブラックカードでイケメンをはべらせる元妻、実は世界屈指の天才デザイナーだ

つきしろ なぎさき · 連載中 · 394.2k 文字

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紹介

「私の誕生日は忘れても、あの女の記念日は忘れないのね」

結婚して3年。国内最高峰の美大を首席で卒業した輝かしいキャリアを捨て、冷淡な夫のために尽くしてきた主人公。

しかし自身の誕生日当日、夫が連れて帰ってきたのは、留学先から帰国したばかりの「血の繋がらない義妹」だった。

夫にとって自分は「ただの家政婦」に過ぎず、彼が向ける極上の優しさと溺愛はすべて、あざとい義妹のもの。

さらに、嫌がらせのように義妹から送られてくる、夫との生々しい密会写真と不倫の証拠の数々……

ついに夫に愛想を尽かした主人公は、1枚の離婚届を突きつけ、一切の未練なく実家の一流財閥へと舞い戻る!

元夫は勝ち誇っていた。「あいつは俺なしでは何もできない寄生虫だ、どうせすぐに泣きつくだろう」と。

だが翌日、主人公は元夫のブラックカードを使い、最高級のイケメンセラピストたちを自宅に呼び寄せ、極上の癒やしを堪能!

さらに、怒り狂って怒鳴り込んできた元夫を冷酷に追い返すと、深夜、二人の不倫写真とゲスな会話のスクリーンショットをネット上に大暴露!

会社と元夫の社会的信用は大炎上し、世界中のメディアが冷徹CEOの失態を嘲笑う。それこそが、主人公が仕掛けた容赦なき復讐の始まりだった。

「ゴミが欲しいなら、いつでもあげるわ」

封印していた世界最高峰の天才デザイナーとしての名声を引っ提げ、海外のトップブランドへと復帰した主人公。

自由でラグジュアリーな新生活を謳歌する彼女の前に、すべてを失い、激しい嫉妬と後悔に狂った元夫が縋り付いてきて……

どん底から世界の頂点へ駆け上がる、爽快感200%の現代逆転シンデレラストーリー、ここに開幕!

チャプター 1

誕生日のその日、私は匿名のショートメッセージを受け取った。

【あなたの夫は浮気しています】

添付されていたのは一枚の写真。

そこには、夫の膝の上に乗る若い女の子が写っていた。金色の巻き髪が肩にふわりとかかり、整った顔立ちにまだ幼さの残る表情。

そして夫――藤原和也(ふじはら かずや)は、その腰を抱き寄せ、顎を少し上げて口元を笑わせている。向ける視線は甘く、慈しむように優しかった。

胸がぎゅっと締め付けられ、両手が震えだす。

そのとき、寝室から和也が出てきた。

私は慌ててスマホを伏せ、キッチンへ向かう。グラスを洗うふりをしながら、蛇口をひねった。

「用事がある。出かけてくる」

背後から聞こえる声は、いつも通り冷ややか。

私は水を止め、振り返らずに尋ねた。

「夜は帰ってきて、夕飯食べる?」

「……ああ」

一拍置いて、彼は続ける。

「寧々が今日帰国した。ちょうど卒業の日だし、みんなで祝う」

藤原寧々(ふじはら ねね)。藤原家の養女で、数年前から海外へ留学していた。私は一度も会ったことがない。

夫は義妹の卒業日は覚えているのに、私の誕生日は――きれいさっぱり忘れている。

爪が掌に食い込む。平静を装って言った。

「わかった」

写真のことは聞けなかった。真実を知るのが怖かったから。

午後いっぱい、頭の中はあの写真で埋め尽くされた。

いったいどんな子なら、あの高嶺の花みたいに冷たい夫が、あんな柔らかな笑顔を見せるのか。

夜七時。チャイムが時間通りに鳴った。

和也は寧々を連れて玄関に立っていた。

金色の巻き髪を見た瞬間、私は息を呑む。

――浮気の相手は、養妹だった。

寧々は写真と同じ、シャンパン色の小さなドレス。甘い笑顔で、世間知らずの小姫様そのものだ。

彼女は親しげに和也の腕に絡みつき、私を挑むように見回した。

「これが、葵? 思ってたのとちょっと違う」

和也は愛おしげに彼女の手の甲を軽く叩く。

「入れ。用意したプレゼント、見てみろ」

最初から最後まで、彼の視線は私に一度も止まらなかった。

私はただの、ドアを開ける係のメイドみたいに。

黙って二人の後ろについていく。

和也はローテーブルの下から、丁寧に包まれたギフトボックスを取り出し、寧々に手渡した。

それは、数日前に私が街で見かけたネックレスだった。少し長く眺めていたら、彼は「お前には似合わない」と言ったもの。

違う。似合わないんじゃない。最初から“いい妹”に贈るつもりだっただけだ。

「ありがとう、お兄ちゃん! やっぱりお兄ちゃんがいちばん!」

寧々はぴょんと背伸びして、和也の頬にちゅっとキスをした。

和也は避けない。むしろ手を伸ばし、少し乱れた巻き髪を優しく整えてやる。

――私が一度も見たことのない、温度。

食卓でも話題は、寧々の海外での成績のことばかり。

「お兄ちゃん見て。国際デザイン賞、取ったの」

得意げに賞状を見せつけ、ちらりと私を見る。

「葵も昔デザインやってたって聞いたけど、作品とかある? 見せてほしいな」

「あるわけないだろ」

和也は彼女の皿にステーキを置き、淡々と言った。

「ただの専業主婦だ」

フォークを握る手に力が入り、関節が白くなる。

三年前、私は国内屈指の美術大学を首席で卒業し、“百年に一人の天才”なんて持て囃された。彼はもう忘れているのだろう。

それでも彼の事業を支えるため、海外のトップデザイン会社への道を捨て、主婦になったのに。

寧々は無垢な大きな目をぱちぱちさせ、甘ったるい声で言う。

「お兄ちゃん、そんな言い方しないで。葵、家のこと全部やってくれて大変だもん。私なんて不器用で、絵しか描けないし、ごはんも作れない」

そう言って皿を指し、ぷうっと唇を尖らせた。

「ねえお兄ちゃん、これ切りにくい」

和也は迷いなく彼女のステーキを自分の皿へ移し、ナイフで手際よく一口大に切ってから、また戻した。

流れるような動作。何度もやったことがあるみたいに。

結婚して三年。私のためにステーキを切ったことなど一度もない。そもそも一緒に食事をすること自体、ほとんどなかった。

当時、和也に結婚を迫ったのは私だ。

長年の片想い。彼が独身だと知るや、学校すら放り出して「結婚したい」と泣いて喚いた。

両親は私に甘く、藤原家へ縁談に出向いた。

藤原家は上流社会での我が家の立場を警戒し、あっさり了承した。

誰の目にも、私たちは政略結婚。彼は私を愛していない。

実際、結婚しても彼は私に触れなかった。同じベッドで眠る夜すら数えるほど。

性格の問題だと思い込んでいた。――あの写真を見るまでは。

思い出した瞬間、胃がぐらりと揺れ、耐えきれずに立ち上がった。

和也が真っ先に顔をしかめる。

「何を騒いでる。礼儀もないのか」

「気分が悪いの。先に休む」

いつものように俯いて従うことはせず、そのまま部屋へ戻った。

胸が詰まり、息が苦しい。

ドレッサーの前に立ち、鏡に映る青白い自分を見つめる。

寧々の明るく整った顔が脳裏によぎり、目の奥が熱くなった。

そのとき、スマホが鳴った。

「九条様でしょうか。モード・アトリエの人事です。以前ご連絡差し上げた者ですが」

電話越しの男の声は穏やかだった。

九条――私の旧姓。かつての私は九条葵(くじょう あおい)としてデザイン業界で意気揚々と活躍し、無限の可能性を秘めていた。

モード・アトリエは海外トップクラスのデザイン会社。三年前、私に声をかけてくれたのに、私は和也のために断った。彼を支えるため、専業主婦になったのだ。

その後も何度か誘われたが、ずっと辞退してきた。

「どうしました」

声が掠れる。だが、すでに決心はついていた。私は九条葵として、もう一度やり直すのだ。

「A市で非常に重要なプロジェクトがありまして。ディレクターがあなたのポートフォリオを拝見し、とても高く評価しております。ぜひチームに参加していただき、メインデザイナーとして……ご検討いただけないかと」

「検討は要りません」

私はスマホを握りしめ、静かに言った。

「行きます」

「ありがとうございます! 九条様、いつでも歓迎いたします。手続きはメールでお送りします」

通話を終えて間もなく、和也が部屋に入ってきた。

「途中で戻るな。寧々がどれだけ気まずいと思う?」

私への心配は一言もなく、義妹への気遣いだけ。

私の目光は彼を見据え、問う。

「今日が何の日か、知ってる?」

彼は眉を寄せ、不機嫌そうに言った。

「寧々の卒業日だろ」

――やっぱり、私の誕生日は覚えていない。

その瞬間、心の底がすとんと抜けた。最後の淡い期待すら消え失せる。

三年間の尽くしは、壮大な笑い話だった。

私は淡々と告げた。

「離婚しましょう」

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