再婚後、夫を愛するのをやめました

再婚後、夫を愛するのをやめました

大宮西幸 · 完結 · 17.2k 文字

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紹介

元夫がフリーマーケットでヘアクリップを売っている私を見つけた。娘の百合はベビーカーで眠っていた。
「家に帰ろう。彼女にはまだ早すぎる」
私は「はい」と答えた。

それ以降、私は彼の携帯をチェックするのをやめた。
娘は、あの女の子におもちゃを取られても泣かなくなった。
彼は篠原志保の家に泊まった——私たちは電話しなかった。
ショッピングモールで彼らに出くわした——私たちは別の道を歩いた。
私たちはついに彼がずっと望んでいたものになった。楽で、静かで、面倒のない存在に。

それなのに、なぜ今眠れないのは彼の方なのだろう?
「どうして君はもう怒らないんだ?」
「百合、どうして俺に残ってくれと言わないんだ?」

チャプター 1

 書類上の手続きは終わった。私は再び「黒木」に戻った。

 数週間前、黒木隼人はフリーマーケットで私を見つけた。百合がベビーカーで昼寝をしている横で、手作りのヘアクリップを売っていた私を。彼は私たちを一目見て、ため息をついた。「戻ってこい。あの子にこんな生活をさせるには早すぎる」

 百合のために、私は頷いた。

 彼は車を駐車場に入れた。二年前に去った家。玄関へと歩きながら、私は百合の手を握りしめた。

 スマートロックに指を当てる。反応がない。

 もう一度試す。やはり開かない。

 何か言おうとする前に、ドアが内側から開いた。

 篠原志保だ。隼人が大学時代に着ていたTシャツ――私が寝間着代わりにしていた、あの色あせた青いシャツを着ている。

「あら! 礼奈さん、ごめんなさい」彼女は微笑んで道を空けた。「料理してたらソースが跳ねちゃって。着替えを持ってきてなかったの」

 彼女に帰る素振りはない。その申し訳なさそうな笑顔の裏に、隠しきれない優越感がちらついているのを私は見逃さなかった。

 志保は、隼人の亡き姉の親友だった。義姉が亡くなる際、隼人に自分の面倒を見てほしいと遺言を残したと彼女は言った。だから彼はそうしたのだ。

 志保の娘の愛梨がソファで丸くなり、タブレットでアニメを見ていた。

 百合が私の袖を引く。「ママ、あれ、あたしのタブレット」

 確かにそうだ。ピンクのケース、去年落とした時にできた角のひび割れ。

 私はかんしゃくを待った。涙を。「パパ、あれはあたしのよ!」という叫び声を。

 だが、百合はただ床を見つめただけだった。

「いいの」と彼女は囁いた。「ママの携帯、貸してくれる?」

 胸の奥がきりきりと痛んだ。

 携帯を渡した。彼女は画面をタップし、顔を上げた。「Wi-Fi、繋がらないよ」

 私は躊躇した。

 安アパートと劣悪な通信環境での二年間。図書館のWi-Fiと人から借りたテザリングでなんとか凌いだ二年間。パスワードが必要だったが、それを聞くのだけは避けたかった。

 隼人が私を見ている。私は必死に明るい声を出した。「新しいパスワード、何?」

 彼が口を開くより先に、志保が答えた。「ああ、先週変えたのよ! 前のは愛梨には難しくて覚えられなかったから」彼女は微笑む。「この子の誕生日なの。ゼロ、サン、イチ、ナナ」

 3月17日。愛梨の誕生日。私の夫が支払っている家のネットワークで。

 百合は反応しなかった。ただ私の携帯を持って部屋の隅に行き、膝を抱えて座り込んだ。音量はほとんど聞こえないほど小さい。

 以前なら、こういう時は叫んでいたはずだ。パパは「あたしの」パパで、ここは「あたしの」家で、愛梨にあたしの物を触らせないでと泣き叫んでいただろう。

 今、彼女はただ自分を小さくして気配を消している。

 わずか四歳にして、彼女はすでに学んでしまったのだ――この家には、戦ってまで手に入れる価値のあるものなどないのだと。

 隼人が眉をひそめた。「志保、距離感にはもっと気をつけるべきだ。人が噂するぞ」

 柔らかい。まるで優しさすら感じる響き。

 志保は目を丸くし、身をすくめて自分を抱きしめた。「そうね、ごめんなさい。すぐ帰るわ、お願いだから怒らないで――」

 愛梨が駆け寄り、隼人の足にしがみついた。「パパ、足が痛いの。ママ、車持ってきてないんだって。お家まで送ってくれる? お願い」

 パパ。

 身を寄せ合い、震える二人。まるで私の方が脅威であるかのように。

 隼人が私を見て、言葉を待っている。

 昔の私なら爆発していただろう。叫び、泣きわめき、今ここでどちらかを選べと迫ったはずだ。

 だが、それがどんな結末を招くか、私はもう知っている。

 私は微笑んだ。「あの子にはあなたが必要なのよ。行ってあげて」

 彼の表情が揺らいだ。驚きだろうか。彼は口を開きかけたが――

 私は背を向け、キッチンへと歩き出した。

「すぐ戻る」背後から彼の声がした。「戻ったら話をしよう」

 私は答えなかった。

 ドアが閉まる音がした。エンジンの始動音が遠ざかっていく。

 その時初めて、百合が顔を上げた。「ママ? 行っちゃった?」

「ええ、そうよ」

 彼女は長く震える息を吐き出し、ようやく膝を崩した。

 家には私たちしかいない。「我が家」に帰ってきたような気分になるはずだった。

 けれど、そうはならなかった。

 その夜、携帯が震えた。

 志保からの写真だ。隼人の膝に乗った愛梨が、百合のタブレットを手に持ち、二人でアニメを見ている。

「出しゃばってごめんなさい。愛梨が番組を最後まで見たいって言って、隼人さんも少しだけいてくれるって言うから。すぐに帰すからね!」

 私は長い間、その画面を見つめていた。

 そして返信を打った。「了解」

 隼人が帰ってきたのは翌日の午後だった。私は百合に寝る前の読み聞かせをしていた。

 どこにいたのかは聞かなかった。問い詰めれば事態が悪化するだけだ。板挟みになるのはいつも百合なのだから。

 娘が眠った後、廊下で箱を抱えた彼と鉢合わせた。

「君にプレゼントだ」

 中身はハンドバッグだった。限定品で、数年前に私が欲しがっていたものだった。私たちが幸せだった頃。何かを望むことが安全だと感じられていた頃の話だ。

 昔の私なら、彼に抱きついて喜んだだろう。

 今の私は一歩後ずさった。「ありがとう。でも、いらないわ」

「礼奈――」

「一度、地下鉄でひったくりに遭ったの。百合も一緒だった」記憶が平坦に、遠くから蘇る。「追いかけることもできなかった――あの子を一人にできなかったから。それ以来、失くして困るものは持ち歩かないことにしてるの」

 彼の手が凍りついた。箱は行き場をなくし、私たちの間で宙に浮いたままになった。

 私は彼の横を通り過ぎ、寝室へと向かった。

 翌日、私は百合を連れて新しい服を買いに出かけた。彼女の服はほとんどサイズが合わなくなっていた――成長期とリサイクルショップの相性は良くない。

 私たちは高級子供服店に入った。

 そして、足を止めた。

 そこには志保がいた。その横には愛梨。そして、隼人も。

 店員が水着を掲げながら近くに控えていた。「奥さん、こちら入荷したばかりなんです! お子さんの水遊びにぴったりですよ」

 店員は、志保に向かってそう言っていた。

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