紹介
そんな私の前に現れたのは、音楽の天才と呼ばれる平世圭(ひらせ・けい)だった。
私が傷ついていると、彼は自作の歌を弾き語ってくれたが、その歌声を私はちゃんと聞き取ることができなかった。
数年後、彼は有名な歌手になり、私はその他大勢のファンの一人にすぎなかった。
母校の創立50周年記念式典で、私たちは再会した。
彼が再び私のために歌ってくれた時——今度こそ、その声ははっきりと私に届いたのだった。
チャプター 1
SNSは、ほとんど『STARDUST』のライブの話題で埋め尽くされていた。
私はスマホの画面をスワイプしながら、ファンクラブのLINEグループのメッセージを眺める。
みんな昨夜の盛大なライブについて、特にトリを飾った『君の世界を聴かせて』について語り合っていた。
あの、すでに数々の音楽賞を受賞した曲だ。
「凛ちゃん、昨日のライブ最高だったね! 平世君の生歌はスタジオ収録版よりずっと心に響くよ!」
「副会長、どうしてライブ会場で見かけなかったんですか?」
私は平世圭をデビュー当初から長年応援してきたので、彼女たちが私がライブに行かなかったことを不思議がるのも当然だった。
少し躊躇してから、私は文字を打ち込む。
「チケット、取れなかったの」
グループの話題は、突如としてさらにホットな方向へと転換した。
「ねえねえ、ツイッターのトレンド見た? #平世圭の初恋!」
「うそ! 特別席に座ってたあの子、誰!? ライブが終わった後、スタッフにバックステージに連れて行かれてたよ!」
私の心臓が、急に速く脈打ち始める。急いでツイッターに切り替えると、案の定、その話題はすでに炎上していた。
誰かがアップした動画には、最前列の特別席に座るマスク姿の女性がはっきりと映っていた。
カメラは、彼女とステージ上の平世圭が明らかに視線を交わしているのを捉えている。
「これって絶対、平世君の高校時代の初恋の人でしょ! 『君の世界を聴かせて』って、もしかして彼女のために書かれた曲なんじゃない!?」
「平世君の彼女を見る目つき、間違いないよ!」
「歌詞があんなに感動的なのも納得だわ、実体験だったんだね!」
「私だけかな、美女の隣の空席が気になるの。あんな神席なのに、どうして来なかったんだろう!」
私はスマホを閉じ、全身から力が抜けていくのを感じた。
七年。平世圭との距離は、七年前よりもさらに遠くなってしまったかのようだ。
パソコンを立ち上げ、千崎初華にメールを送る。ファンクラブの副会長の座を彼女に譲ることを決めたのだ。
彼女は『STARDUST』を心から愛しているし、私よりもその役にふさわしい。
夜が更け、私は日記帳を開き、同時に『君の世界を聴かせて』を再生した。
ボリュームを上げ、あの聞き慣れたメロディーで私の世界を満たす。
この曲はいつも、七年前のあの夏を思い出させる。
——
高校二年生の時、私は聴覚障害のせいでクラスメイトから孤立していた。
「耳つんぼ」「聞こえない子犬ちゃん」、そんなあだ名が私の学園生活には付きまとっていた。
そんなある日、新しく来た転校生、平世圭が私の隣の席になった。
「ここ、座ってもいいですか?」
彼は私の隣の空席を指して、先生に言った。
先生は笑って答える。
「もちろんいいとも。白川さんは一番人の邪魔をしないからな」
先生の言外の意味は分かっていた。私がほとんど話さないし、人の話もよく聞き取れないからだ。
けれど平世圭は気にする素振りも見せず、私に微笑みかけると、隣に腰を下ろした。
その日から、私はこの物静かだけど温かい男の子に、密かな憧れを抱き始めた。
彼はギターがとても上手で、いつも放課後遅くまで音楽室で練習していた。時々私はドアの外に隠れて、ガラス窓越しに彼の真剣な横顔を眺めていた。
高二のあの夏の夕暮れが、すべてを変えた。
放課後、私は水野貴司とその仲間たちに体育倉庫で取り囲まれた。
水野に突き飛ばされ、私は地面に倒れ込む。額を器具棚にぶつけ、たちまち血が流れ出した。
「おい、お前ら何してんだ?」
入口から声がした。平世圭だった。彼は駆け寄って私を支え起こすと、自分の制服の上着を脱ぎ、私の額の血をそっと拭ってくれた。
やがて、倉庫には私たち二人だけが残された。
平世圭は背負っていたギターをしっかりと持ち直し、私の前に座る。
「曲を書いたんだ。まだ名前はないけど。聴いてみないか?」
彼が弾き始めると、優しくて温かいメロディーが流れた。今の『君の世界を聴かせて』と全く同じ旋律。
私は彼の唇を見つめ、彼が歌う歌詞を読み取ろうとしたが、私の聴力ではぼんやりとした音しか捉えられない。
最後の一節を歌う時、彼は不意に私の補聴器を外し、耳元で囁いた。
「xxxxxx」
数年後、私はようやくこの歌の最後の一節は、そういうことだったのだ。
君が好きだ、と。
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そして、私はあっけなく捨てられた。
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彼から一銭たりとも、受け取らずに……。













