ラベンダーの嘘

ラベンダーの嘘

大宮西幸 · 完結 · 23.6k 文字

945
トレンド
1.1k
閲覧数
298
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

私は人々が心理操作から逃れるのを助ける専門のセラピストです。
実は、救いを必要としていたのは私自身でした。
ラベンダー畑での完璧な婚約は正確に4時間続きました——婚約者の元妻が7,500万円を要求して現れ、そして母の「自殺未遂」が緊急治療のためにさらに750万円を必要とするまでは。
私は28年間、自分が強い方だと信じてきました。家族の支柱、頼りになる娘だと。愛とは犠牲を意味すると思っていました。助けるとは全てを与えることだと思っていました。
私は間違っていました。
時に、あなたの人生で最も有毒な人々は、あなたを育てた人たちです。時に、最大の心理操作は罪悪感、義務、そして「家族」という言葉に包まれています。
あなた自身の家族があなたの最大の敵になったとき、愛と心理操作の違いをどうやって見分けますか?そして、自分自身を救うことが他の全ての人を破壊することを意味するとき、あなたは何をしますか?

チャプター 1

 黄金色の夕暮れの光の中、ラベンダーが揺れている。まるでおとぎ話の中にいるみたいだった。

 これだ。六ヶ月前に翔太が初めて私の手を取ってくれた時から、ずっと夢見ていた瞬間。

 彼は片膝をつき、小さなベルベットの箱が夕日の輝きを捉えた。中に収められた手作りのシルバーリングには、繊細なラベンダーの花の彫刻が施されている。その曲線一つ一つが、彼の献身的な愛を物語っていた。

「瑞希、君は私の根っこだ。君と一緒なら、どこでだって私は成長できる」

 彼の声は低く、その奥深くから響いてくるようだった。胸がいっぱいになり、涙で視界が滲んだ。

「翔太、あなたは私に教えてくれた。癒やしは、一番思いがけない土壌で育つものだって」

 指輪は寸分の狂いもなく私の指に滑り込んだ。暖かくて、確かで、本物だと感じた。

 優しい交響曲のように、周りから拍手が沸き起こった。ラベンダーの花々の中でキスを交わしながら、これが私たちの『癒やしの庭』という夢の始まりに過ぎないのだとわかった。

 私はセラピスト。彼は園芸家。二人で、傷ついた魂のための聖域を創り出すのだ。

「うそ、まるで映画のワンシーンみたい!」友人の紗代が、他の人たちと一緒に駆け寄りながら声を弾ませた。

「瑞希、結婚式はいつ?」

「翔太、その指輪、自分で作ったの? すっごく素敵!」

 笑い声と祝福の言葉が黄昏の空気に満ちた。クリスタルのグラスの中ではシャンパンの泡が踊り、最後の日差しを反射していた。

 すべてが完璧だった。

 ――そうではなくなる、その瞬間までは。

 庭の門が、私たちの祝宴をナイフのように切り裂くほどの激しさで、乱暴に開け放たれた。

 シャープな黒いビジネススーツに身を包んだ女性が、砂利の小道を大股で歩いてくる。その視線はレーザーのように翔太に突き刺さり、驚く招待客たちの群れを貫いていた。

 翔太の顔から、さっと血の気が引いていくのが見えた。

 彼の手の中のシャンパングラスが震えていた。

「涼子……?」その名前は、祈りのようにも、あるいは呪いのように、彼の唇から漏れた。

 すべての会話が止まった。聞こえるのは、彼女の近づいてくる足音と、私の雷鳴のように鳴り響く心臓の音だけだった。

 彼女は翔太の真正面で立ち止まり、自分に向けられる五十対もの驚愕の視線を完全に無視した。

「冬木翔太、あなたはまだ私に7,500万円を支払う義務がある。新しい女を見つけたからといって、離婚の慰謝料が消えてなくなるわけじゃないのよ」

 離婚? 7,500万円?

 足の力が抜けていく。「離婚って……? 翔太、彼女、何の話をしてるの?」

 翔太は額に汗を浮かべ、言葉に詰まった。「涼子、これは……後で話そう……」

「話し合うことなんてないわ」涼子はブリーフケースから分厚い法的な書類の束を取り出した。「裁判所の命令は明確よ。三十日以内に支払うか、さもなければ法廷で会いましょう」

 彼女は、まるでゴミでも捨てるかのように、その書類を彼の足元に落とした。

 それから彼女は私の方を向いた。その冷たい瞳の中に、一瞬だけ、哀れみのようなものがよぎったのを私は見た。

「気をつけることね、お嬢さん。この男は真実を隠すのがとても上手だから」

 彼女のヒールがカツカツと遠ざかり、後には墓場のような沈黙が残された。

 招待客たちの間に、さざ波のように囁き声が広がり始めた。

「翔太、結婚してたの?」

「7,500万円? マジかよ……」

「瑞希ちゃんは知ってたのかな?」

 私は自分の婚約指輪を見下ろした。ほんの数分前まであんなに暖かく感じられたシルバーが、今は肌の上で冷たく重く感じられた。

 私のおとぎ話は、粉々に砕け散った。

 深夜。北海にある、私たちのアパート。

 床から天井まである窓から街の灯りが流れ込み、私が一人で座っているベッドに影を落としていた。翔太はリビングで、ひそひそ声で電話をしている。

 私のスマートフォンが、通知で爆発しそうだった。

 画面にお母さんの顔が現れ、それに続いてテキストメッセージと写真が洪水のように押し寄せてきた。

 最初の画像を開いて、息を呑んだ。

『診断書

  患者氏名 星野玲奈

  診断名 重度うつ病、自殺念慮あり 治

 療方針 入院加療が必要と判断します

 備考 早急な対応が望ましいと考えます

 川崎総合病院 精神科』

 ボイスメッセージが再生されると、私の手は震えた。

「瑞希、あなたの大切な日に負担をかけたくはないんだけど……もう、この暗闇と戦えないの。お医者様が、すぐに治療が必要だって」

 スピーカーから、お母さんのすすり泣きが聞こえてくる。「もう睡眠薬も買ってあるの。もし750万円の治療費が用意できなかったら、私……いつまで持ちこたえられるか……」

 銀行のアプリを開くと、心臓が肋骨を激しく打ちつけた。

 750万円。翔太と私が、『癒やしの庭』のために貯めてきた、まさにその金額だった。

 二年間の慎重な計画。二年間の夢。

 でも、お母さんの命は、夢よりも大切だ。

「どうして気づかなかったんだろう。婚約披露宴では元気そうだったのに……」

 ほんの数時間前、彼女が招待客と笑い合っていたのを思い出す。この衝撃的な診断書に書かれているような、うつ病の兆候は微塵もなかった。

 でも、医療書類は嘘をつかない、でしょう?

 送金を確定しようとした、その時だった。翔太が電話を終えて寝室に入ってきた。

 彼は私のスマートフォンの画面を見て、優しく私の手からそれを取り上げた。

 診断書に目を通すうちに、彼の眉間の皺が深くなった。

「瑞希、怖いのはわかる。でも、この日付を見て。昨日診断された人が、どうして今日の婚約披露宴で平気でいられるんだ?」

 彼は診断書の日付を指さした。その声は優しかったが、断固としていた。

 怒りが胸の内で燃え上がった。私はスマートフォンをひったくるように取り返した。「本気で言ってるの? 私の母が自殺の診断を偽造するって? あなたの謎の元妻が現れて7,500万円を要求した、まさにこの直後に?」

「母は命がけで戦ってるのよ。それをあなたは、ここに立って病気を疑うわけ?」

 翔太が私を慰めようと手を伸ばしてきたが、私は身を引いた。彼は続けた。「これがどう見えるかはわかってる。でも、何かがおかしいんだ……」

「触らないで!」私は鋭く言った。「あなたに『おかしい』なんて言う資格はないわ。結婚してたことさえ、私に話してくれなかったくせに!」

「涼子のことは説明できる……」

「説明?」私は苦々しく笑った。「7,500万円の借金を、一体どう説明するつもり? それとも、あの深夜の弁護士からの電話は?」

 翔太が凍りついた。「私の通話履歴を見たのか?」

「他にどうやって、私の婚約者が完全な詐欺師だってわかるっていうの?」

 私たちは、壊れた信頼という海の向こう側で、互いを見つめ合った。

 あのラベンダー畑での魔法のような夜が、まるで遠い昔のことのように感じられた。

 翔太は重いため息をついた。「……ソファで寝るよ」

 寝室に一人きりになり、銀行のアプリを見つめながら、涙が頬を伝った。

 私はお母さんにテキストを送った。「お金、送ったわ。病院に行って」

 婚約指輪を指で回す。その重さが、突然耐え難いものに感じられた。

 突然、スマートフォンが震えた。

 発信者表示は、川崎総合病院 救急外来。

 わずか十二時間のうちに、私の完璧な人生は、音を立てて崩れ落ちる砂上の楼閣と化していた。

 この電話は、どんな知らせを運んでくるのだろう?

 私は画面を見つめ、指を通話ボタンの上でさまよわせた。

最新チャプター

おすすめ 😍

追放された偽物の娘、その正体は最強でした

追放された偽物の娘、その正体は最強でした

815.3k 閲覧数 · 連載中 · ゲゲゲ
「本物の娘が見つかった。お前はもう用済みだ」
あの子が現れたその日、私は『偽物の娘』として家を追い出された。
渡されたのは、わずかな小銭と地方行きの片道切符だけ。
さらに婚約者は私をゴミのように捨て、その日のうちに『本物』であるあの子にプロポーズした。

……上等じゃない。せいぜい勝った気でいればいいわ。
だって彼らは、私の【本当の顔】を何一つ知らないのだから。

名門病院が見放した命を救う『天才外科医』。
オークションで数億円の値を叩き出す『伝説の画家』。
裏社会の闘技場で無敗を誇る『影の女王』。
そして――彼らの全財産すら小銭に思えるほどの『真の巨大財閥の後継者』であることを。

今さら元婚約者が土下座で許しを請おうと、本物の娘が嫉妬で狂いそうになろうと、もう遅い。
かつて私に婚約破棄の書類を叩きつけた冷酷で傲慢なCEOでさえ、今や何かに取り憑かれたように私を追い回し、「もう一度だけチャンスをくれ」とすがりついてくる始末。

私を捨てて、自分たちの人生を『アップグレード』したつもり?
笑わせないで。最初から、圧倒的に上の存在だったのは私のほうよ。
転生して絶縁したら、元家族は破滅に

転生して絶縁したら、元家族は破滅に

33.2k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
名門古川家の生まれの娘・古川朱那は、前世、父・古川邦夫と三人の兄(礼和、礼希、礼人)が養妹・周防天華を無条件に贔屓し、天華の陰険な陥れに遭い、理不尽に死んだ。
22 歳、天華に陥れられた日に生まれ変わった朱那は、過去の卑屈さを捨て、天華の悪事を暴き、偏心な家族に毅然と立ち向かう。芸能界で演技の才能を開花させ、自らの人生を切り開くため、全力で逆襲する。
妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

530.9k 閲覧数 · 連載中 · 蛙坂下道
鈴木七海は、中村健に好きな人がいることをずっと知っていた。それでも、彼との結婚を選んだ。
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。
地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

6.7k 閲覧数 · 連載中 · 三日月プリン
「救うのは妹の方だ。お前は強いから、生き残れるだろう」
十八年間、空気のように扱われ、誘拐事件の際にも迷わず切り捨てられた私。
「強さ」という名の言い訳で死の淵に追いやられた私は、地獄の果てで生き延びた。
そして今、全国民が見守る超人気リアリティショーの舞台に、私は「かつての復讐者」として舞い戻る。
家族が偽りの善人面を振りまく中、彼らの仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていく最高のショウタイム。
そんな私を面白がり、盤面をひっくり返す男がいた。冷徹なるF1チャンピオン。彼だけは、私の冷酷な正義を肯定し、その権力で私を囲い込む。
さあ、復讐劇の始まりよ。私を「可哀想な犠牲者」だと思っていた報い、その身に刻ませてあげる。
跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

455.8k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
六年前、藤堂光瑠は身覚えのない一夜を過ごした。夫の薄井宴は「貞操観念が足りない」と激怒し、離婚届を突きつけて家から追い出した。
それから六年後——光瑠が子どもたちを連れて帰ってきた。その中に、幼い頃の自分にそっくりの少年の顔を見た瞬間、宴はすべてを悟る。あの夜の“よこしまな男”は、まさに自分自身だったのだ!
後悔と狂喜に押し流され、クールだった社長の仮面は剥がれ落ちた。今や彼は妻の元へ戻るため、ストーカーのようにまとわりつき、「今夜こそは……」とベッドの隙間をうかがう毎日。
しかし、彼女が他人と再婚すると知った時、宴の我慢は限界を超えた。式場に殴り込み、ガシャーン!と宴の席をめちゃくちゃに破壊し、宴の手を握りしめて歯ぎしりしながら咆哮する。「おい、俺という夫が、まだ生きているっていうのに……!」
周りの人々は仰天、「ええっ?!あの薄井さんが!?」
社長の逃げた妊娠妻

社長の逃げた妊娠妻

24.9k 閲覧数 · 連載中 · ユイ
川崎佑哉は上半身裸のまま、江原安美の上に覆いかぶさり、大きな手で彼女の柔らかな胸を撫で上げた。

江原安美は甘い吐息を漏らしながら喘いだ。「もう我慢できない…ちょうだい…」

川崎佑哉は彼女の体をうつ伏せにひっくり返し、ペニスを彼女の柔らかな臀部の間で前後に擦りつけた後、背後から一気に挿入した。

「江原安美、たとえ離婚しても、お前は一生、俺の下で喘ぐしかないんだ。」


江原安美はまさか自分がいつか、夫・川崎佑哉と彼の愛人のために結婚指輪をデザインすることになるとは思わなかった。そしてさらに届いたのは、一通の離婚届だった。

彼女は迷わずサインし、彼への想いを断ち切り、妊娠検査の結果を隠して、海外へと旅立った。

その後、彼女は海外で大成功を収め、言い寄る男は数知れず。しかし彼は変わった。彼女に執着し、離れようとせず、目を赤くして「もう一度チャンスをくれ」と懇願した。

彼女の小さな宝物が飛び出して彼の前に立ちはだかり、腰に手を当ててこう言った。「ママに追いつきたいなら、まず列に並んでね!」
監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

130.5k 閲覧数 · 連載中 · 鈴木楓花
監禁から1年。ようやく帰宅した今井心晴を待っていたのは、変わり果てた日常だった。
家族は心晴を探そうともせず、あろうことか姉の今井優奈のために盛大な誕生日パーティーを開いていた。
しかも、その横には心晴の元婚約者の姿が……二人は婚約していたのだ。
しかし、心晴はただの被害者ではなかった。
彼女は人知れず巨額の資産と強大なコネクションを築き上げていたのだ。
真実を知った心晴は、復讐の狼煙を上げる。
彼女が選んだ新たなパートナーは、なんと元婚約者の叔父だった。
「これからは私のことを『おばさん』と呼ぶのよ、優奈!」
今さら跪いても遅い

今さら跪いても遅い

18.6k 閲覧数 · 連載中 · ショコラ風味
5年間の結婚生活を壊したのが、1通の親子鑑定書だとは夢にも思わなかった。

自分が手塩にかけて育てた息子は、夫が元カノとの間に作った子供だった。さらにあり得ないことに、父子は最初からその事実を知っており、結託して彼女に隠していたのだ。

それだけではない。彼女はドアの隙間から、夫の計画を親の耳で聞いてしまう。元カノが戻ってきたら、彼女を「体面よく」会社から退職させ、財産を一切渡さずに追い出し、5000万の「補償金」で済ませようというのだ。

5000万?彼女が一人で支えてきた会社で、彼女の金と人脉を使って夫の尻拭いをしてきた結果が、たったのそれだけ?

絶望した彼女は、自分のすべてを取り戻すと誓う。

恩知らずの息子? もう愛さない。初恋に狂う夫? 彼も消え失せろ。

だが、彼女が本当に離婚して完全に去ったとき、あの父子は再び彼女に家に帰ってきてくれと泣きついてきた!
「もう一度だけチャンスをくれ」

今度の彼女は、一瞥さえくれなかった。
死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

23.7k 閲覧数 · 連載中 ·
前世の橘結衣は、兄たちに尽くし続けた。どんな理不尽にも耐え、健気に笑顔を向け続けた結衣を待っていたのは――お披露目パーティーでの無残な死だった。

破滅を経て死に戻った結衣は、人が変わったように冷徹になる。もう二度と、あの愚かな兄たちのために心を痛めたりはしない。

しかし、冷遇し始めた途端、兄たちの態度が一変する。

「いい加減、そんな冷たい態度を取るな」と迫る社長の長男。

「俺の誤解だったんだ……」と苦悩する医師の次男。

「頼む、やり直させてくれ!」とプライドを捨てて乞うトップスターの三男。

「俺の妹はお前だけだ!」と泣きじゃくる不良の四男。

だが、結衣の答えはひとつだけ。

「みんな、失せて」

復讐と無関心を胸に、彼女は一人の男性の手を取った。

「宮本景太。今日からあなただけが、私のたった一人の『お兄ちゃん』よ」

――しかし、彼女の本当の身分が明かされた時、今度は血縁関係のある「実の兄たち」が押しかけてきて――!?

「『唯一の兄』だと……? じゃあ、俺たちはお前の何なんだ!?」
全能令嬢の帰還、家族が倒産?

全能令嬢の帰還、家族が倒産?

38.9k 閲覧数 · 連載中 · きりゅう りんか
万能の女神・夏川紅蓮が実家に戻ると、一家は何者かの手で破滅に追いやられた後だった。
父は冤罪で獄中にあり、母は病に伏せっている。
六人の兄たちも、ある者は身体に障がいを負い、ある者は無気力に沈んでいた。
そんな折、家に潜り込んでいた偽令嬢は状況を見るや否や一家を見捨てて姿を消し、さらに屋敷までも奪い取ろうとしていた。
世間は夏川家を「落ち目の負け犬」と嘲笑い、皆がこぞって踏みにじる。

紅蓮が静かに一声を発すれば、暗部より無数の異能の士たちが姿を現し、形勢は一瞬にして逆転する。
父は無実のまま出所し、母は健康を取り戻し、廃人同然だった長兄は再び己の足で歩き出し、残る五人の兄たちもまた紅蓮の導きによって各々の才覚を花開かせ、やがて各界を牽引する大物へと成り上がっていく。

しかし、そんな彼女を指さして嘲る者がいる。
「夏川紅蓮は地味で野暮ったい田舎者だ」と。

何を隠そう、彼女は無数の隠された顔を持つ存在。
神医の令嬢も彼女なら、国画の大家も彼女。
伝説のハッカーも彼女なら、正体不明の謎の女優も彼女。
そして、暗部を統べる首領さえも——彼女なのだ。

そんな折、頂点に君臨する名門の若様が、彼女をそっと腕のなかに抱き寄せた。

「誰が彼女を田舎くさい地味女だと言った? 彼女こそ、俺・諏訪淳行の婚約者だ」

紅蓮が流し目をひとつ送る。

「婚約、破棄しなくていいの?」

「しない」

彼が長いあいだ追い求めてきた決して手の届かない高嶺の花こそが、いま腕のなかにいる婚約者なのだ。
解消などありえない——この婚約は、死んでも解消しない。
本物の令嬢は、もう誰にも媚びない ~裏切られた私の、二度目の人生

本物の令嬢は、もう誰にも媚びない ~裏切られた私の、二度目の人生

9.5k 閲覧数 · 連載中 · 神楽
前世の私は、有岡家で最も虐げられた「落ちこぼれお嬢様」だった。
執事の娘・西川安菜を哀れんで手を差し伸べた結果は、地獄。
兄たちの愛を奪われ、文字通り血を吸い尽くされ、体重は40キロを切った。
追い詰められた私は、絶望のまま窓から身を投げた。
死に際の一言は……「で? これから安菜の輸血はどうするの?」という皮肉。
……のはずだったのに。
目を覚ますと、私は三年前——安菜が泣きつかれてきた「あの日」に戻っていた。
可哀想なフリをする彼女を見つめ、私は笑った。
もう二度と、優しさなんて見せない。媚びもしない。
“親切”に立ち振る舞い、彼女を使用人部屋へ追いやって自立させてあげることにした。
彼女ばかり庇うお兄様たちの機嫌取りも、もう終わりだ。
かつて尽くしまくった元婚約者・石野星紀なんて、視界に入れる価値すらない。
勘違いしないで。
今の私は、ただの「有岡家のお嬢様」じゃないんだから——。