忌まわしき娘と呼ばれた私

忌まわしき娘と呼ばれた私

渡り雨 · 完結 · 19.4k 文字

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紹介

ヴァイオリンコンクールの前夜、私は男たちに地下室へ引きずり込まれ、三時間にもわたって獣のように蹂躏された。

彼らは代わるがわる私を犯し、玩具のように弄び、私が性的絶頂に達する様を撮影し、無理やりレンズを直視させた。痛みと屈辱に、意識がほとんど遠のいていく。私は叫び、懇願し、そしてついに、声も出なくなった。

次に意識が戻った時、私は病室のベッドにいた。そこで、偶然にも聞いてはならない話の断片を耳にしてしまった。私が誘拐されたことの、本当の理由について。

チャプター 1

 ヴァイオリン・コンクールの前夜、私は数人の男たちによって地下室へと引きずり込まれ、三時間にも及ぶ凄惨な蹂躙を受けた。

 彼らは私を代わる代わる犯し、玩具のように扱い、絶頂に達する無様な姿をカメラに収めながら、レンズを直視しろと強要した。苦痛と屈辱で、意識が飛びそうになる。私は叫び、哀願し、やがて喉が潰れて声も出なくなった。

 誰かが、赤錆の浮いた鉄パイプを引きずって近づいてくる。

 何をしようとしているのかを悟り、私は必死で身を縮めた。

「手だけは駄目! お願い——」

 男は冷ややかに嘲笑う。

「大金を積まれてな。この手が二度とヴァイオリンを弾けねえようにしてくれってよ」

 必死に抵抗したが、男たちに地面へと縫い付けられた。鉄塊が何度も振り下ろされる。執拗に、正確に、私の右手を破壊していく。指の関節、掌の骨、手首——そのすべてが、粉々に砕かれた。

          ◇

 婚約者のボディーガードに発見された時、私は血まみれで、全身傷だらけだった。父は疾風のように駆けつけ、私を一目見るなり号泣し、犯人を見つけ出して必ず報いを受けさせると誓った。婚約者の颯斗も目を真っ赤にして駆けつけ、最高の医療チームを呼んで手術させると約束し、「頑張れ」と私を励ました。

 だが、病室のベッドに横たわっていた時、私は本来聞くべきではない会話を耳にしてしまった。

「宏樹さん、あんたの手の者、やりすぎですよ」

 颯斗の声だった。トーンは低いが、不満が滲んでいる。

「僕はただ、真弓を出場させるために、真澄を欠場させたかっただけだ。足までやるとは聞いてない」

 お父さんは少しの間沈黙し、苛立ったように答えた。

「俺だって、あそこまで凶暴な連中だとは思わなかった」

 一拍置いて、父は続けた。

「だが、これでよかったのかもしれない。今のあいつの状態なら、何もかもショックで忘れちまうだろう」

「よく言いますよ」

 颯斗が冷笑する。

「まあいい。これで真弓の首席は安泰だ」

「だが、真澄も俺の娘だ」

 父の声に、僅かな躊躇いが混じる。

「あんな姿を見ると、やはり俺も……」

「真弓のほうが大事なんでしょう?」

 颯斗が遮った。

「何年か前、あの住職が言ったのを忘れたんですか。『真弓は豊田家の守り神だ』と。それに比べて真澄は……」

 十五年前の夏、父は高名な住職を招いて私たちを占わせた。住職は真弓を指して「この娘には天命があり、家に幸運をもたらす」と言い、私を一瞥して「この娘は凶相だ。家に災いを招く」と吐き捨てた。

 あの日以来、父が私を見る目は変わってしまった。

 ベッドの上で、涙が無音でこぼれ落ちる。

 事故じゃなかった。すべては彼らが周到に計画したことだったのだ。真弓のために、あの馬鹿げた予言のために、私の手は、私の人生は壊された。

「あれは迷信だ」

 父は口籠もったが、自身の偏愛を否定しようとはしなかった。

 無理やり話題を変えるように、父が尋ねる。

「手術はどうなってる?」

「焦らないでください」

 颯斗が言った。

「明日は真弓の期末試験だ。万が一、真澄が回復して騒ぎ立てたらどうするんです?」

「まさか……」

「延期しましょう」

 颯斗の声は、鳥肌が立つほど冷静だった。

「真弓のコンクールが終わるまで待つんです」

 そばにいた医師が、思わず口を挟んだ。

「そ、そのような……通常、手術は一刻も早いほうがいいのです。これ以上遅れると……」

「あんたには関係ないだろう」

 颯斗がドスを利かせた声で威圧する。

「金は受け取ったはずだ。どうせ彼女は二度とヴァイオリンには触れない。手術がいつになろうと同じことだ。障害者は障害者なんだからな」

 医師はすぐに口を閉ざした。

「言葉を慎め」

 父が低く唸ったが、反論はしなかった。

「あれでも二十年以上育てた娘なんだぞ」

「なら、一生金を恵んでやればいいでしょう」

 颯斗は吐き捨てるように言った。

「最高級のリハビリセンターを探して、一番高い介護人を雇って、すべてをお膳立てしてやればいい——『不運な事故で引退を余儀なくされた天才と、それを献身的に支える家族と婚約者』。美しい話じゃないですか」

 彼は笑った。

「あなたは慈悲深い父親を演じ続ければいい。真澄は一生障害者として生き、真弓は輝かしい未来を手に入れる。皆が幸せになれる」

 彼らの会話を聞きながら、私の世界は音を立てて崩れ落ちていった。

 病室のドアが開く気配がして、私は慌てて目を閉じた。だが、体の震えまでは止められない。父はすぐに異変に気づいたようだ。

「真澄、目が覚めたか? 気分はどうだ?」

 その声は、気遣いに満ちていた。

 私はこみ上げる嘔吐感を必死に呑み込み、ゆっくりと目を開けた。

「淳一兄さんは……どこ……?」

 喉が張り付き、しわがれた声が出る。

「お兄ちゃんは……知ってるの?」

「あいつは電話に出ないんだ」

 父が即座に答えた。

「私の、手……」

 私は弱々しく訴えた。

「いつ手術できるの?」

 父と颯斗が、一瞬だけ視線を交わすのが見えた。

「医者が言うには、傷が深すぎるそうだ。まずは少し様子を見よう、と」

 父は痛ましそうな表情を作ってみせた。

 私は颯斗をじっと見つめ、問いかけた。

「私たち……本当に、待つの?」

 颯斗は優しく私の髪を撫でた。

「そんなことさせるわけないだろう」

 彼は聖人のように微笑み、身を屈めて、私の額に優しく口づけを落とした。

「君は僕の婚約者だぞ? 僕が君を傷つけるような真似、するわけないじゃないか」

 二人が病室を出て行った後、枕元の携帯電話が短く震えた。

 兄の淳一からのメッセージだった。

『真澄、世界最高の神経外科医、森本博士を見つけた! 今モルディブにいるらしいが、プライベートジェットで迎えに行かせた。待ってろ! 俺が帰るまで待つんだ!』

 だが、たとえ淳一兄さんが名医を連れてきたとしても、颯斗や父が手術を許可するだろうか?

 時間は無慈悲に過ぎていく。一分一秒が、右手の永久的な喪失を意味していた。

 その時だった。病室の外から、慌ただしい足音が響いてきたのは。

「真澄の部屋はどこだッ!!」

 それは、兄の声だった。

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私が時価総額数十億ドルのファッション帝国を裏で支配していることも、ウォール街の株価をたった一回の取引で大暴落させられることも、誰も知らない。私はその正体を、この平凡で冴えない素顔の裏にすべて隠し持っていた。

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「俺のこの鼓動、今なら感じられるか?」

私は至って真面目な顔で彼の胸に手を当て、大真面目にこう返した。

「心拍数は確かに少し高めですが、非常に健康的です。心配ありませんよ」

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